2026.1.4引退! 棚橋弘至引退カウントダウンSPECIAL! 第1弾
棚橋弘至×藤波辰爾「ドラゴン魂継承対談!」全4回#4

 棚橋弘至が憧れ続けた藤波辰爾との夢の対談。藤波は「現役でいるのは元気でいるため」と語り、70歳を過ぎてもなお"将来"を口にする。

プロレス人生55年を迎えるレジェンドと、新日本プロレスを率いる社長である棚橋が語るそれぞれの想いとは。

【プロレス】「将来は何をやろうかな」 72歳になる藤波辰爾が...の画像はこちら >>

【いまだ現役を続ける理由】

── 藤波さんは生涯現役を貫かれるおつもりですよね?

藤波 これはまた変なふうに捉えられたくないんだけど、「自分が元気でいるため」というのが第一条件。

── もしプロレスを引退したら、老け込んでしまうかもしれないと。

藤波 そうなるのが自分でもわかっているから。オレはプロレスを辞めたら、たぶん何もしなくなっちゃうね。身体をつくろうとすることもしないし、何かやらなきゃというのもないから。だから、やっぱり常に自分で目の前にニンジンをぶら下げておかなきゃいけない。

── 絶えず試合の予定を入れておきたい。

藤波 予定が入っているとうれしくてね。だって、オレはプロレスしか知らないんだもん。16歳でこの世界に入って、来年で55周年だけど、学校で習わなきゃいけないこともすべてプロレスの世界で習ってきているから。

棚橋 55年......ですか。僕が25年ですから、ここから30年もやらないと今の藤波さんにはたどり着けない。

藤波 だから来年1月、引退を撤回すればいいんだよ。また言っちゃった(笑)。

棚橋 それをやったら社会的な信用を失いそうです(笑)。

藤波 プロレスのキャリアが55年って、今まで誰もいないわけだよ。

棚橋 その記録をどんどん伸ばしていってください。藤波さんが現役にこだわり続けるのは「元気であるため」と、ほかにも何か理由があるんですか?

藤波 オレ以降の世代の選手たちに、少しでもリングにいさせてあげたいという気持ちかな。そのために自分が試しというか、見本みたいなものになっていってあげたいというのはあるね。

棚橋 モデルケースになる。

藤波 みんな下積みであれだけ長く苦労してきたのに、野球にしろ、現役でいられる時間、一番輝いている時間なんてどの業界も少ないでしょ。それ、もったいなくない?

棚橋 そうですね。

藤波 それだけ苦労をしたんだから、ある程度の期間は輝いていたいって絶対にみんな思っているはずだから。それは業界によってはそうはいかん業界もあるだろうけど。

【棚橋社長の新日本プロレスに希望を感じる】

── ある意味、新日本を辞めて身軽になられたことがよかったのかもしれないですね。

藤波 そうだね。

── 自分のことは全部自分で決められるっていう。

藤波 そうそう、まさに。今は自分で団体(DRADITION)をやってるから、自分自身で試合の日程や場所も決められる。それと時折、いろんな団体からもオファーが来るけど、それも自分で判断して出るかどうかを決める。オファーをもらったら、それはそれでまたうれしさはあるし。

棚橋 6月の『TANAHASHI JAM』にも出ていただきましたから。

藤波 オレをずっと元気でいさせるためにも、どんどん試合を組んでほしい(笑)。

棚橋 本当に藤波さんにはずっと元気でいてほしいです。かつて(アントニオ)猪木さんが新日本プロレスを旗揚げされて、藤波さんはその新日本プロレスでずっと闘われていて、その闘いに僕は心を動かされてプロレスラーになることを目指したんです。

藤波 ありがたいね。

棚橋 そして新日本プロレスに入門することができ、いろんな闘いをすることができて「もうやり残すことはない」と自分のなかで現役に区切りをつけることを決め、同時に社長を任された。

本当にいろんなところで......新日本プロレスに......そして藤波さんに導いてもらったなっていう気持ちです......(※泣いている)。これからは自分が藤波さんのように、いろんな人の目標、希望になれるような存在になっていきたいなと思います。藤波さん、本当にありがとうございました......。

【プロレス】「将来は何をやろうかな」 72歳になる藤波辰爾が語る未来と、棚橋弘至が流した涙のワケ
2026年1月4日の東京ドーム大会で引退する棚橋弘至 撮影/タイコウクニヨシ
藤波 こちらこそありがとう! オレは今日こうして話してみて、これからの棚橋社長時代の新日本プロレスにすごく希望を感じたね。これから集大成というか、新日本プロレスを繁栄させていくためのビジョンというものが棚橋くんなりにできているんだと思う。猪木さんが苦しい状況のなかで新日本プロレスを旗揚げして、そして坂口さんが盤石な組織をつくってくれて、オレの時にちょっと傾きかけたけど、今回は棚橋くんが、久々に選手が社長をやるという体制に返り咲いたことにすごく希望を感じてる。オレらも外から何か協力できることがあれば、アイデアとかいろんな部分で支えてあげたい。新日本プロレスはこれから「本来のプロレスの興行会社とはこうなんだ」というものが出来上がるような気がするし、当然それを目指してほしい。棚橋くんは今までいろんなものを見てきているしね。

棚橋 はい。ありがとうございます。期待してください(※まだ泣いている)。

【将来は何をやろうかな】

── 最近、涙もろいですよね。

棚橋 そうなんですよ。もう、試合のたびに泣いてしまって。

藤波 それはまだ現役に未練があるんだよ。

棚橋 話が一周しましたね(笑)。

藤波 本当にこれから希望しかないよ。オレなんか今年の12月で72歳になるけど、いまだに「将来は何をやろうかな」って思うもん(笑)。

棚橋 うわぁ、かっけえ。

藤波 それを言うと、みんなから「えっ? 将来って、藤波さんはもう70過ぎてますよね」と言われるんだけど、常に将来というものを自分のなかに植えつけているね。

棚橋 ゴールじゃなくて将来を見ているんですね。でも僕も「将来、どうするのかな?」って思うことは多々あります。いや、その藤波さんの「これから将来は何をやろうかな」という気持ちこそが、今の世の中に一番必要な感じがします。

藤波 じゃあ、棚橋くんに今の言葉あげる(笑)。

棚橋 ありがとうございます(笑)。いやあ、72歳になられるのに「これから何をしようかな」っていうのはかっけえっすよね。どんどん高齢化社会へと進んでいく日本にもっとも必要な感覚ですよ。

── しかも藤波さんは、ご家族ともずっと仲が良いですもんね。

藤波 なんでだろうね? 我が家はみんな絶えずいろんなものに興味を持って生きてるんだよね。

── 現代のジェンダー平等みたいな意識を、藤波さんはずっと昔からお持ちだった気がするんですよ。

棚橋 奥様ファーストだし。

藤波 いやぁ、オレなんかはあるがままだね。自分でできること、自分でやらなきゃいけないこととかは全部やっちゃうし。オレの両親はもう亡くなっていて、家内のほうは、お義母さんがまだ健在なんだけど、時折、家内が留守の時はオレがお義母さんの介護をやってるしね。オレ、介護やらせたらうまいんですよ。

介護士さんにも褒められたもん。「藤波さん、介護の勉強をされていたんですか?」って。

── それは付き人時代の経験がいきているんじゃないですか?

棚橋 たしかに。

藤波 ふつうなら力任せでやっちゃうけど、介護にはコツがあって、あれも要するにテコの原理でやるんだよね。オレ、介護はうまいよ。

棚橋 すべての経験がそんなところでもいきている。

藤波 本当にこれからの棚橋くんには期待しているし、応援しています。オレは坂口さんのように細かい経営のアドバイスなんかはできないけど、違うカタチでどこかで協力できることがあれば。

棚橋 はい! お力添え、よろしくお願いします。

藤波 でも現役を辞めても、社長業に専念しても、"棚橋弘至"は絶対になくさないようにね。本来の自分であり続けるように。

棚橋 自分の芯がブレないようにがんばります。

藤波 棚橋くん自身が輝いていないとダメだと思うから。

棚橋 はい! 社長なのに選手よりも輝きたいと思います(笑)。

おわり


棚橋弘至(たなはし・ひろし)/1976年11月13日生まれ。岐阜県出身。大学時代からレスリングを始め、98年2月に新日本プロレスの入門テストに合格。99年に立命館大学を卒業し、新日本へ入門。同年10月10日、後楽園ホールにおける真壁伸也(現・刀義)戦でデビュー。2006年7月17日、IWGPヘビー級王座決定トーナメントを制して第45代王座に輝く。09年、プロレス大賞を受賞。11年1月4日、小島聡を破り、第56代IWGPヘビー級王者となり、そこから新記録となる11度の防衛に成功した。23年12月23日に新日本プロレスの代表取締役社長に就任。26年1月4日の東京ドーム大会で引退する

藤波辰爾(ふじなみ・たつみ)/1953年12月28日生まれ。大分県出身。70年6月、16歳で日本プロレスに入門し、翌71年5月9日デビュー。72年3月、新日本プロレス旗揚げ戦の第1試合に出場。同年12月に開催された第1回カール・ゴッチ杯で優勝し、75年6月に海外遠征へ出発。カール・ゴッチのもとで修行を積み、 78年1月にWWWFジュニアヘビー級王座を獲得した。81年末にヘビー級転向を宣言。長州力との戦いは「名勝負数え唄」と呼ばれファンを魅了。99年6月からは5年間に渡り新日本プロレスの代表取締役社長を務めた。06年6月に新日本を退団し、同年8月に『無我ワールド・プロレスリング』を旗揚げ。 08年より団体名を『ドラディション』へと変更した

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