高木豊が語るDeNAがCSで勝ち抜くためのポイント 後編

(前編:DeNAの2年連続日本一の可能性 CSで「カギになる」ピッチャーは?>>)

 高木豊氏に聞く、DeNAがクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜くためのポイント。後編では、ファイナルステージとその先の日本シリーズの展望を語ってもらった。

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【阪神と戦うことになれば「ミスは許されない」】

――阪神と対戦するファイナルステージに進んだ場合、ファーストステージでピッチャーを使ってしまっている分、どうやりくりするかがカギになりそうですね。

高木 ファーストステージをスッと勝ち上がれれば、余力が残ってやりくりも多少ラクになりますし、(甲子園が)外の球場だけに雨も味方してくれるといいなと。それと、阪神は、先発もリリーフもセ・リーグではナンバーワンの投手陣を揃えていますし、甲子園では絶対に打撃戦にはなりません。足を使ったり、バントやエンドラン、そういった戦術がカギを握るはずです。

 守備も大事です。水も漏らさないくらいの守備体形を作って守るべきですし、大雑把な野球では絶対に勝てません。ましてや阪神は接戦に慣れていますし、接戦をものにし続けて優勝したので、ミスが許されない戦いになると思います。

――阪神で警戒すべき選手は?

高木 1番の近本光司、2番の中野拓夢に気をつけろと言ったところで、高い確率で塁に出るでしょうし......結局、阪神と戦う時に何をやってはいけないのかは、フォアボールを出しちゃいけないということ。当然、佐藤輝明のように勝負所で避けなければいけないバッターもいますが、フォアボールを多く与えてしまうと、クリーンナップの森下翔太、佐藤、大山悠輔の誰かが打ちますし、大量点を取られてしまうので。

――足を含めた戦術がカギを握るというお話しですが、どういった仕掛けをすべきでしょうか?

高木 阪神の先発ピッチャーのなかで、柱は村上頌樹と才木浩人ですよね。この2人は、比較的に才木の時は走りやすいかもしれませんが、なかなか隙を作らないので盗塁を仕掛けにくいんです。隙が生まれるのは、リリーフのピッチャーが出てきた時でしょう。「ランナーに気を取られたくない」というピッチャーが多いので。

 一応、ランナーを警戒する姿勢は見せても、それほどクイックが速いピッチャーは多くない。なので、リリーフが出てきた時、足の速い選手を差し込めば阪神はすごく嫌がるはずです。

――先発で足のある選手を起用するのではなく、代走で勝負をかけるべき?

高木 たとえば、三森(大貴)は足が速いですが、バッティングに難があるので出塁する確率が低いです。そうであればピンポイントで差し込んだほうがいい。三森のほかには林琢真など、走れる選手をベンチに2、3枚は置いておきたいところですね。梶原昂希あたりも入ってくるとポイントになる可能性がありますよね。

 やはり足ですよ。DeNAにはホームランを打てるバッターはいますけど、甲子園ではなかなか難しいですし、阪神の強力なピッチャー陣を考慮すると尚更難しい。接戦で終盤を迎えることを想定し、足を使える選手たちを準備させておくべきです。

パ・リーグのチームは、DeNAが日本シリーズに進出したほうが怖い?】

――甲子園での阪神戦は接戦が想定されるとのことですが、先ほど(前編で)DeNAはリリーフ陣が不安というお話しがありました。

高木 クローザーも不安な部分です。入江大生はボールの力はあるのですが、今季は精神的な面で、抑えを任せるのはちょっと難しいかもしれません。

今のメンバーであれば伊勢大夢、出られるのであればローワン・ウィックあたりが候補でしょうか。

 ただ、森原康平の状態がちょっと上がってきているので、経験値を考慮して森原にクローザーを任せる可能性はありますよね。そうなると、伊勢が8回となるのが一番自然な形だと思いますが、ウィックがいけるのであればクローザーでもいいですね。

――誰がどのイニングと決めず、コンディションによって臨機応変な起用が必要でしょうか?

高木 そうですね。宮城滝太はちょっと変な故障の仕方をしたので、出られない可能性がありますよね。先発ピッチャーが早く降板してしまうと、その後のやりくりが苦しくなるんじゃないかと。そういうことも踏まえ、リリーフ陣には臨機応変な起用を示唆しておいたほうがいいと思いますし、(前編で話したように)第二先発のピッチャーも用意しておいたほうがいいですね。リリーフのピッチャーは準備が大変だと思いますが、そのくらいやっていかないと勝ち抜けません。

――話が飛躍するのですが、仮にDeNAが日本シリーズに進出した場合、どんな展開を予想しますか?

高木 昨年の日本シリーズほどうまくはいかないはずです。なぜかといえば、昨年のパ・リーグはソフトバンクがひとり旅(2位に13.5ゲーム差をつける独走)だったじゃないですか。シーズン中に劣勢になることがなかったんです。なので、劣勢になった時の対処法がわからなかったというか、短期決戦ということもあってプレッシャーをかけられた時に跳ね返せなかったんじゃないかと思います。

 ただ、今年はソフトバンクと日本ハムがしのぎを削っていたように、劣勢を跳ね返す力はあります。オリックスの場合もそうだと思いますし、今年のパ・リーグのチームは相当手強いですよ。

――セ・リーグのチームは、どこが日本シリーズに出ても厳しい戦いになりそうですね。

高木 対応できるのは投手力がいい阪神だと思いますが、今年はリーグ独走で優勝しましたし、劣勢になったら昨年のソフトバンクのような状態に陥るんじゃないかと。だからDeNAが日本シリーズに行った場合は、相手は嫌だと思いますよ。DeNAには失うものがないですし、三浦大輔監督が今年で退任するということも、チームのモチベーションを上げるはず。大胆に思い切っていけるはずですし、その開き直りは相手にとってちょっと怖いでしょう。

【プロフィール】

高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。

2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

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