プロ野球ドラフト会議が目前に迫ってきた。連日ドラフト上位候補の動向が華々しく報じられる一方、隠れた実力者もドラフト戦線にひしめいている。
【ドラフト指名を待つ3人のバットマン】
ハイアベレージを残せる打者として名前を挙げたいのは、尾瀬雄大(早稲田大)だ。名門・早稲田大では2年時からリードオフマンを務め、昨春からのリーグ3連覇に貢献。身長172センチと小柄ながら、コンパクトなスイングでヒットゾーンに弾き返す。
10月19日現在、東京六大学リーグ通算98安打、打率.332をマーク。選球眼もよく、出塁率が高いのも魅力だ。右投左打の外野手はドラフト指名のハードルが高くなるものの、シュアな打撃で道を切り拓きたい。
同じく東京六大学リーグから、フルスイングが目を惹く常松広太郎(慶應義塾大)もピックアップしたい。左足を高々と上げてタイミングを取り、全身をねじ切れんばかりに振り切るダイナミックなアクション。
今春はリーグ3本塁打を放ち、ブレイクを果たした。一度見たら忘れない独特な打撃スタイルが、高い次元でどこまで通用するのか見てみたい。ドラフト指名がない場合は、一般企業に就職予定だという。
今年はパワー自慢の人材が豊富だが、こと飛距離にかけては大坪梓恩(石川ミリオンスターズ)が図抜けている。
日本海リーグでは今季40試合で8本塁打を放ち、最多本塁打のタイトルを獲得した。高校1年秋で強豪校を中退して以降は、1年以上のブランクを経て野球を再開。クラブチーム、スポーツ専門学校、独立リーグ練習生と日の当たらない野球人生を歩んできた。まだ21歳と若く、メジャー級のスケールを持つだけに、潜在能力が花開けばとんでもない打者に成長するだろう。

【プロ顔負けのポテンシャルを誇る4人】
独立リーグには足の一芸を売りにする選手が多いが、今年は遠藤桃次郎(登録名・桃次郎/栃木ゴールデンブレーブス)の存在感が際立っている。
身長170センチ、体重65キロの小兵ながら、BCリーグでは今季55試合で42盗塁と荒稼ぎした。一歩目から体のキレがあり、積極的にスタートを切れる度胸も光る。白鷗大では福島圭音(阪神育成)の1年後輩も、台頭したのは4年時と遅咲きだった。NPBの大舞台で、独立リーガーのしぶとさをアピールしたい。
守備面の一芸を誇る好素材も紹介しよう。まず強肩では、山本嘉隆(九州国際大付)の名前は外せない。シートノックで披露する中堅からのレーザービームには、たとえ野球に詳しくない人でも衝撃を受けるはずだ。
いずれは辰己涼介(楽天)を目指せるだけの器だろう。とはいえ、今夏は背番号10をつけ、リリーフ投手に専念した。最速146キロを計測するなど、福岡大会準優勝に貢献している。スカウトは速球派投手として評価するか、それとも潜在能力が眠る外野手として評価するか。山本は育成ドラフト指名でもプロに進む意向を示している。
守備の名手も内外野に分けて触れていこう。内野手では、新保茉良(東北福祉大)のフィールディングに一見の価値がある。遊撃のレギュラーに定着したのは4年春と遅かったが、玄人好みの実力派だ。吸い込まれるような捕球技術で、難しいバウンドも難しく見せない。
外野手では大島正樹(創価大)を推薦したい。前後左右、どんな打球でも追いつく広大な守備範囲は岡田幸文(元ロッテ)を彷彿とさせる。
【3人の個性派投手たち】
投手では個性派の3選手をピックアップしたい。まず、球威の一芸に長けているのはシャピロ・マシュー・一郎(富山GRNサンダーバーズ)だ。身長193センチ、体重105キロの巨体から投げつける剛速球は、捕手のミットを破壊しそうな迫力がある。

横角度の個性が際立つのは、変則左腕のヴァデルナ・フェルガス(青山学院大)。右足をクロスして踏み込み、左腕を横から振る投球は、左打者に恐怖心を植えつける。適度に荒れるコントロールも、かえってヴァデルナの強みになる。プロのブルペン陣にほしい個性と言えるだろう。
最後に下からの角度を持つ、渡辺向輝(東京大)を紹介したい。父・俊介(元ロッテほか)から二代続くアンダースロー。だが、父から手ほどきを受けたわけではなく、自力でアンダースローの技術を築き上げたことに価値がある。
理系の東大生らしく、アンダースローに関するメカニクスを徹底的に研究。論文を読み漁り、独自の理論を積み上げた。今や大学日本代表候補合宿に招集されるだけの実力者になった。巧みな緩急で打者のタイミングを外す投球は、プロでも通用するのか。渡辺は支配下での指名を希望し、指名漏れの場合はユニホームを脱ぐ予定だという。
プロで勝負するための牙を持つ、10人の個性派たち。彼らのドラフト指名はあるだろうか。10月23日のドラフト会議では、類まれな一芸選手の存在を頭の片隅に入れておいてほしい。