国際招待競走のGIジャパンカップ(11月30日/東京・芝2400m)にフランス代表としてやって来るカランダガン(せん4歳)は、日本競馬に風穴を開けられるだろうか。

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 同馬は今年、GIを5戦3勝、2着2回。
目下、欧州最強の中距離馬として名を馳せ、IFHA(国際競馬統括機関連盟)の発表する世界ランキングでは堂々の第1位。さらに、先日発表されたカルティエ賞(※欧州における年度表彰)では年度代表馬にも選出され、紛れもなく世界的なチャンピオンホースだ。

 だが、近年でも外国馬が戴冠を遂げているスプリントGIやマイルGIと違って、ジャパンカップにおいては2005年のアルカセット以来、外国馬の勝利はない。その間も、昨年のゴリアット(6着)やオーギュストロダン(8着)のような、世界に名だたる一線級の実力馬が参戦してきたが、日本調教馬にとってのGI凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400m)のように、長きにわたってアウェーの洗礼を浴び続けている。

 2006年にカランダガンと同様、カルティエ賞の年度代表馬という"看板"を引っ提げて来日したウィジャボードも、ディープインパクトの前に3着と屈している。今ではこれが、外国馬がジャパンカップで馬券に絡んだ最後の例だ。

 欧州の強豪馬たちが苦杯をなめてきた主な要因としては、日本調教馬にとっての凱旋門賞とは裏返しの理由があると言えるだろう。欧州の主要競馬場とは異なる馬場と、競馬におけるペースの違いだ。

 欧州では、自然の形状を生かして細かい起伏を作り、ビルを上り下りするようなアップダウンのあるコースが主流。そういった舞台において、後半までじっくりと脚をタメにタメ、最後の爆発力勝負にかけるのが、欧州の中距離路線におけるオーソドックスな競馬のスタイルだ。

 一方で、日本の競馬場はよく整備された高速馬場。そのコースにおいては、中距離戦でも序盤からある程度ペースが流れる。

時に、最初から最後まで息の抜けない攻防となる。外国馬にとっては、これに適応できるかどうかがカギになる。

 また、日本のGIのような多頭数の競馬は、凱旋門賞や各国のダービーを除けば、欧州ではあまり見られない。

 つまり、日本競馬初参戦で、多頭数でのレース経験も乏しいカランダガンも、いくら世界ナンバーワンホースとはいえ、苦戦を強いられることが予想される。日本特有の流れに乗れないまま、最後に差し届かず......ということは十分に考えられる。

 しかしながら、カランダガンにはそういった懸念材料を補って余りあるプラス材料も持ち合わせている。

 第一に、ローテーションだ。

 欧州では10月で主要レースが終了し、11月はほぼオフシーズンに近い状況にある。それゆえ、昨年のオーギュストロダンのように、すでに"出がらし"状態にあることも珍しくない。また、褒賞金対象レースの勝ち馬であれば、ジャパンカップに出走するだけで欧州GⅡを勝って得られる賞金以上の手当が保障されている。その分、本気度が薄れていることも少なくない。

 だが、カランダガンの場合はせん馬であるため、地元フランスの凱旋門賞には出走できず、陣営はそれに代わるレースを早くから吟味してきた。

その際、アメリカのブリーダーズカップや香港国際競走も候補に上がっていたが、ローテーション的に最も適しているジャパンカップを選択した。

 実のところ、前走のGI英チャンピオンS(1着。10月18日/アスコット・芝1990m)出走よりも前から、ジャパンカップへの出走意思を見せていた。

 それだけに、ジャパンカップにかける意識は高い。今年6戦目と使い込まれていることもなく、GI3連勝中の今、むしろ"旬"な状態にあると言っても過言ではないだろう。

 次に、管理するのがフランシスアンリ・グラファール調教師というのが頼もしい限りだ。今年、フランス国内のGIを8勝。国外でもブリーダーズカップフィリー&メアターフ(ゲゾラ)など、GI5勝を挙げている。フランスの調教師リーディングにも堂々と輝いて、今や時の人だ。

 フランス国内だけでなく、国外でもそれほどの結果を出しているということは、管理馬の適性の見極めにも優れている証拠だ。今の勢いからして、ここも本気で勝ちにきていることは間違いない。

 今回、カランダガンとともに来日したのは、同馬が2歳の時から調教を担当しているジェレミー・ロベル氏。

レースを数日後に控えた週の頭には、ジャパンカップに挑むカランダガンについてこう語っていた。

「2歳の頃とは違って、馬っぷりも気性も変わった。何より、去勢の効果は絶大だった。それがなかったら、今のカランダガンはいなかっただろう。

 ふだんも坂路ではなく、ほぼ平坦のコースで調教をつけているため、府中での調教は再現性が高い。前走のレース前と同じ雰囲気できている。状態に関しては、何も心配していません」

 日本の馬場や競馬における適性や適応力は、どうしても問われることになる。しかしそれは、実際にレースで走ってみなければわからない。

 だとしても、適性が合致すれば、かつてジャパンカップを勝った外国馬たちがそうだったように、驚異的なパフォーマンスを発揮できるに違いない。もとより、それなりの能力の持ち主であれば、適性をも凌駕する。

 カランダガンは、それが期待できる1頭だ。

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