広島東洋カープで3年間監督を務めた佐々岡真司さんと、各チームでコーチを担ってきた西山秀二さんに新井貴浩監督の采配について、また、今年の広島のドラフト会議を振り返ってもらった。(聞き手・TIMレッド吉田さん)

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レッド吉田(以下、吉田)佐々岡さんはご自身も監督の経験がありますが、新井貴浩監督の采配はいかがですか?

佐々岡真司(以下、佐々岡)新井監督の気持ちもわかります。

今は教え方も「上から言うな」と球団から言われますし、試合が終わったあとのコメントは、選手がすごく気にしています。昔の選手も気にしていましたけど、監督が「今日は誰々で負けた」とか平気で言っていたんですよ。該当の選手はそれを聞いて、「次は頑張ろう」と思えていたんですけど、今は監督がマイナスコメントを出すことはないですよね。

吉田 優秀な選手は今の優しいやり方でも上にいけると思うんですけど、そうではないギリギリの選手って、やっぱり鍛えられて、そこにたどり着く人もいると思うんですよね。

佐々岡 性格を見て「こいつは言っても大丈夫だろうな」という選手もいました。矢野雅哉選手なんかはガンガン言っても「やります!」というタイプでした。

吉田 性格を考えながらやるのは監督も大変ですよね。

佐々岡 そうですね。そうやってコミュニケーションを取りながらやっていたのに、僕の監督の時はコロナ禍で喋ることもできなくなって、コミュニケーションが取れなかったんですよ。

広島カープのドラフト会議を評価】

吉田 創価大・立石正広選手は抽選で外れてしまいましたが、今回の広島のドラフト会議はいかがでしたか?

佐々岡 「立石選手が獲れていたらどこを守るのかな?」と、思って見ていました。今の広島は、サードに佐々木泰選手を育てていて、ショートに小園海斗がいます。矢野が出られなくなって、セカンドの菊池涼介もフルは出られない。

そうなると立石はセカンドができる選手なのか? ファーストには外国人がいて、もしかしたら来年は坂倉将吾がファーストを守るかもしれない。そう考えると、立石が入ることでバリエーションが増えたと思うんですよね。いろんなことを考えると野手が欲しかったと思うんです。結果、仙台大の平川蓮選手を獲って新井監督はやっぱり野手出身なので、野手が欲しいというドラフトになったんじゃないかと思います。

吉田 5位で仏教大学の赤木晴哉投手が入りましたよね。

佐々岡 3位に近畿大の勝田成選手も入りましたよね。あの選手は新井監督の推しだと聞きました。

吉田 ただ、内野陣はもう固まっていますよね。

佐々岡 それでも監督としてはいろいろ欲しいんですよ。(選手は)いくらいてもいい。菊池が本当に143試合フルで出場するっていうのはないので、そこに誰かを入れたいのもありますし、今は打てる野手がいないので欲しいところですね。

吉田 西山さんは今回のドラフトをどう見ましたか?

西山秀二(以下、西山) 1位に立石選手を指名したっていうのは、4番を打てる選手がどうしても欲しいんやなって思いました。

それは正解だと思いましたけど、外れてしまいましたから。ただ、外した時点で僕はもうピッチャーに行くべきだと思ったんです。ドラフト1位、ドラフト2位あたりでは、やっぱりピッチャーを毎年獲ったほうがいいと思うんです。

 野手は正直、3位、4位指名でも育ってくるんですよ。僕らの時もそうでした。僕はドラフト4位。金本知憲もドラフト4位。緒方孝市もドラフト3位。江藤智はドラフト5位、新井貴浩もドラフト6位。だから野手は鍛えれば出てくるんです。

 今12球団のピッチャーのローテーションはドラフト1位、2位ばかりです。だからピッチャーは最初から素材のいいのを連れてこないとキツい。

プロに入って伸びるのは稀なんですよ。

佐々岡 外れ1位の候補では、亜細亜大の齊藤汰直投手もいたんです。でも、もしかしたら平川が取れるかもしれないというのでそっちにいったと思うんです。そうしたら、1位で消えると思っていた齊藤投手が残っていて、2位で獲れたという感じですね。

吉田 佐々木麟太郎っていう案は?

佐々岡 そういう路線に、たぶんカープはいかないです(笑)。 西山 確かに、カープは行かないですね(笑)。

【Profile】

佐々岡真司(ささおか・しんじ)/1967年8月26日、島根県出身。89年ドラフト1位で広島に指名され入団。プロ1年目から2ケタ勝利と2ケタセーブを挙げるなど活躍し、03年には史上6人目の通算100勝100セーブを記録。現役引退後は15年から広島のコーチ、20年から22年まで監督を務めた。現在は野球解説者、評論家として活動している。

西山秀二(にしやま・しゅうじ)/1967年7月7日、大阪府出身。

プロ2年目の87年シーズン途中、トレードで広島に移籍。広島では94年、96年にベストナイン、ゴールデングラブ賞をそれぞれ獲得。リーグを代表する捕手として活躍。引退後は巨人、中日のコーチを歴任。現在は評論家として活躍している。

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