31歳の大谷翔平──その現在地を、彼自身の2025年の言葉から紐解いてみる。

大谷翔平が語る二刀流の現在地と2026年への期待「今が技術的...の画像はこちら >>

【打者・大谷翔平を意識して投げている】

 2025年、ピッチャー大谷。

 レギュラーシーズンで14試合に先発、47イニングを投げて1勝1敗、防御率2.87、62奪三振。

大谷が1を切ることを目指すWHIP(※)は1.04。
野球における投手の成績評価項目のひとつで、1投球回あたり何人の走者を出したかを表す数値

 今シーズンの大谷は6月以降、ピッチャーとして実戦でのリハビリ登板をしながらポストシーズンに照準を合わせてきた。二刀流だからこその、前代未聞のリハビリだった。

「僕は"細く長く"みたいな発想にはなりません。短くてもいいとは思いませんが、できるだけ太くすることが一番です。だからといって壊さないように抑え気味に投げることが先に立ってしまうようでは、いやいや、そんなことのために2度目の手術を受けたわけじゃない、という感覚があります。僕はどこまでいってもパワーピッチャーとして投げていきたいなという理想があるんです。そこは今も崩したくないかなという感覚でいます。

 パワーピッチャーの条件は、もちろん100マイルがキリのいい数字としてカッコいいなと思いますけど、一番に来るのは、真っすぐをセットしている、真っすぐに狙いを定めているバッターに真っすぐを投げてファウルを取れるということです。空振りを取るのもいいんですけど、必ずしもそれが必要なわけではなくて、真っすぐ狙いで振ったらファウルになる、そういう真っすぐを投げるのが僕のなかでのパワーピッチャーです。自分がバッターの時もそうなんですけど、セットしているボールを打てない状況が何よりも嫌だし、バッターとして力負けしている状況だと思うんです」

 大谷がもっとも打ち取りたいのはバッターの大谷だと、彼が以前、話していたことがある。今もなお、大谷は"バッター大谷"を意識しながら投げているのだろうか。

「投げているんじゃないですか。そこは無意識のうちに......いや、やっぱり意識しています(笑)。ピッチングのなかで自分の真っすぐや変化球の動きをデザインしていく時には、自分が打ちにくいことは意識しますからね。僕は左バッターなので、ピッチャーとして左バッターと対戦するときにはどういう球種、変化が打ちにくいだろうなというのを自分に置き換えて想定しながら考えますし、右バッターなら、逆に僕が左対左の場面でどういう配球、どういうボールの動きをされるとイヤなのかを考えてきました。単純にピッチャーの僕は、バッターの僕が打てないボールを投げたいというだけなので、そこを目指すだけです」

【ボールを100の力で潰しにいく】

 2025年、バッターの大谷翔平。

 レギュラーシーズンでは自己最多の55本のホームランを打って、打率.282、本塁打55本、打点102、得点146、盗塁20。大谷が1を超えることを目指すOPS(※)は1.014。
※打者を評価する指標のひとつで、出塁率と長打率を足し合わせた値。打席あたりの総合的な打撃貢献度を表し、数値が高いほど、チームの得点増に貢献する打者だと評価される

 大谷がずっと目指してきたのは、"コンパクトにブオーン"という、まるで野球盤のバットのようにテイクバックせず、フォロースルーで煽ることもない、シンプルかつパワフルなスイングだった。

「毎年、技術的に伸びてきているとは思っています。でも、今が技術的にも体力的にもゴールだという感覚はありません。もっと先があると思っています。ただ、当初思っていたよりはちょっと早い段階でこういうステップまで来ているかなという感覚はあります。

時代が進むにつれて新しい技術であったり、アプローチであったりというものが必ず出てきているので、そこに対する対応はできているな、という感覚ですね。練習方法もそうですし、スイングの仕方もそうです。

 そもそも昔の日本では、今の僕のような振り方は推奨されていませんでした。昔はボールにスピンをかけて飛ばしなさいと言われて、僕もその意識でバットを振っていました。でも今はそういう(スイング)軌道で振って飛ばそうとすると、効率が悪いし、もったいないんです。バックスピンをかけようとすると、ボールの少し下を叩こうとしますよね。そうすると自分の持っている100の力をボールに伝え切れない現象が起きるんです。だから今は、ボールを100の力で潰しにいく。そのためにボールの下半分ではなく、芯を真後ろから貫く。そういう軌道でバットを振ろうと思っています」

【二刀流の難しさは常にある】

 DHだけでなくピッチャーとしてもオーダーに入った今シーズン、大谷は二刀流として久しぶりに試合に出た。そこであらためて感じたことはあったのだろうか。

「基本的にはピッチャーとバッターは分けて考えているので、2つやることを気にはしていません。

ただ、難しさは常にあります。ピッチャーをやりながらいろいろ考えて打席に入らないといけないし、打たなきゃいけないというのはもちろん難しい。DHはDHで、毎回毎回、打って走って、調子のいい日はいいんですけど、3球三振してベンチに戻ってきて、次の打席まで30分も40分もあるなんてこともありますからね。

 そうなると身体も冷えるし、もう1回つくり直さないといけなくなる。でも1週間に1回は投げるとなれば、そんなに何度もスイングをして、ということもできないし、スイング数の上限も決めなければならない。そうやって投げながら打席へ向かっていく難しさは常にありますよ」

 2026年の大谷が目指すところは、WBCで連覇を果たし、開幕してからは1年間ローテーションを守って、ドジャース打線の核を担うことだ。ピッチャーとして16勝を挙げ、バッターとして56本のホームランを打てば、それが投打の自己ベストの数字となる。

 初のサイ・ヤング賞と4度目のハンク・アーロン賞を獲得すれば、4年連続満票での5度目のMVPは確実だろう。さらにワールドシリーズ3連覇も......なんてことをつらつらと並べるのは、欲張りすぎにも程がある。しかしながら野球好きのこんな勝手な期待に対して、大谷はこう言っていたっけ。

「そうやって楽しんでくれるのは選手としてはありがたいことです。『イチローさんと松井(秀喜)さんはどっちがすごいんだ』みたいな話と一緒で、『大谷、ピッチャーやめたほうがいいんじゃないか』的な肴で一杯呑めるなら、そういう楽しみ方があってもいいんじゃないかなって(笑)」

 ならばお言葉に甘えて、球春到来まで異次元の大谷翔平を肴に一杯呑むこととしよう。

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