京都国際・西村一毅インタビュー(後編)
2025年7月6日、京都国際は夏の府大会初戦(2回戦)を迎えたが、先発マウンドに西村一毅の姿はなかった。14日の3回戦でも登板はなく、チームが慎重に状態を見極めながら調整を進めていた様子がうかがえた。
【初めて流した勝利の涙】
西村の初登板は4回戦、春の府大会優勝校・京都共栄との対戦だった。だがこの試合も、秋の京都外大西戦、春の龍谷大平安戦を思わせる厳しい展開となる。9回を終えても0対0のまま決着はつかず、延長タイブレークにもつれ込んだ。
それでも西村は10回を投げて13奪三振、5安打2失点と粘投し、チームは劇的なサヨナラ勝ちで4回戦を突破した。
以降も準々決勝の北嵯峨戦、準決勝の立命館宇治戦でマウンドに上がり、決勝の鳥羽戦でも苦しみながら2失点で完投勝利。劇的な戦いの末、2年連続となる夏の甲子園出場を決めた。
決勝後、西村は感極まった表情で目に涙を浮かべていた。じつは、野球の勝ち負けで涙を流したのは、これが初めてだったという。
「夏は登板するたびに細かい部分を修正しながら、少しずつ状態がよくなっていきました。秋も春も悔しい負け方が続き、京都ではなかなか勝ちきれない時期が続いていましたが......それでも『絶対に甲子園に戻る』という気持ちだけでやってきました。その願いがかなったことがうれしくて、思わず(涙が)出てしまったんだと思います」
ただ、夏の甲子園初戦では、優勝候補に挙げられていた健大高崎(群馬)を相手に、中盤には球数が100球に達するなど、苦しいピッチングを強いられた。
「緊張もあってストライクがなかなか入らず、球数が増えてしまいました。思ったところに投げられない場面が多く、課題ばかりが残る内容でした」
6四死球を与えながらも、4安打3失点で完投勝利。
つづく3回戦の尽誠学園(香川)戦ではリリーフとして登板し、4回無失点の好投を見せたが、準々決勝の山梨学院戦では2回にソロ本塁打を含む5安打5失点。6回までに9点を失い、途中降板。チームも敗れ、夏連覇の夢は潰えた。
「最初はそこまで疲れを感じていませんでした。でも、これだけ打たれてしまうと、もう......。球数もかなり多かったですし(6回で131球)、自分では気づかないところで疲れがあったのかもしれません。それ以上に、山梨学院の打線はレベルが違いました」
【焦りとプレッシャーの1年】
成功体験を積み重ねた2024年の春から夏にかけてのシーズン。だが、最上級生となった昨秋から今夏までの1年間は、西村にとって苦い経験のほうが多かったはずだ。これが勝負の厳しさである。西村の言葉の節々には、そんな苦悩がにじんでいた。
「去年の甲子園で優勝させてもらってから、自分としては『2連覇する』という目標が生まれ、やるべきことは明確になっていました。ただ、秋、春を通して、簡単には勝てないという現実や、勝つことの難しさも強く感じました。
実際の試合では、どうしても焦ってしまう場面が多く、気持ちの持っていき方の難しさを痛感しました。自分の実力以上のことをやろうとしても、うまくはいかない。今の自分にできる最大限のことを、全力でやれるようにしないといけないと思いました」
3年生に支えられ、思う存分プレーできていた2年生の頃との違いを痛感することになった。
「去年の夏が終わってから、『おまえが引っ張っていかなアカンぞ』と言われるようになり、自分がやらなければ、という思いをずっと抱えてきました。でも、その気持ちがプレッシャーにもなっていたのかなと思います。下級生の時は、何かあっても3年生が何とかしてくれる、という安心感がありました。でも自分が3年生の立場になり、どう振る舞えばいいのかわからなくなって......」
小牧憲継監督は西村について、つかみどころのなさを挙げつつも、その一方で確かな成長の跡を認めていた。
「もともと、自分から何かをしようとするタイプではなかったですし、少ししんどいと感じると、すぐにあきらめてしまうところもありました。でも、上級生になってからは、そういう部分がなくなりました。2年生の頃は『公務員になりたい』と言って、野球に対して欲を見せることもなかった。それが今では、大学で頑張ってドラフト1位でプロに行きたい、と言えるようになった。それが、あの子の一番の成長です」
2023年の小宅雅巳(慶應義塾高)、24年の西村、そして25年の末吉良丞(沖縄尚学)と、近年、夏の甲子園では2年生の優勝投手が続いている。
【下級生で一番上の景色を見た苦悩】
夏の甲子園後、西村はU−18日本代表に選出された。貴重な左腕の先発投手として、3試合に登板した。
「自分よりレベルの高い選手ばかりで、吸収すべきことが本当にたくさんありました。外国のバッターは身体が大きく、スイングも強かった。だからこそ、投げミスだけは許されないと思いながら投げていました」
その代表チームのなかには、唯一2年生で選出された末吉の姿もあった。
西村と同じ左腕。タイプはやや異なるものの、代表チームのなかでは、やはり末吉の動きを自然と追っていた。
「末吉は身体がすごく柔らかく、身体の使い方も本当にうまい。初めて間近で見て、分厚さも感じました。あの大きな身体を、ピッチングのなかでしっかり使いこなしていますし、ストレートも速くて球のキレがいい。ボールにも重みがありますよね」
その末吉から、西村はスライダーを教えてもらったという。
「これから、周囲の期待は相当大きくなるんだろうなと思いました。(沖縄を後にする前に)末吉には『あと1年間、頑張って』と言いました」
末吉は今秋の県大会で優勝したものの、九州大会では準々決勝で神村学園に1--4で敗れた。来春のセンバツ出場は微妙と見られていたが、九州国際大付が明治神宮大会で優勝したことで、神宮枠が九州にもたらされ、出場の可能性は高まりつつある。いずれにせよ注目度が増す末吉の今後にエールを送りながら、西村は2年生で優勝を経験したからこそ直面した難しさを口にした。
「2年生で一番上の景色を見てしまった分、どうしてもどこかで満足してしまう部分が出てしまったのかもしれません。そうしたモチベーションの持ち方が、一番難しかったです。でも、自分の代で行く甲子園の景色と、下級生の時に見る甲子園の景色は、まったく違う。末吉には、チームを引っ張って、春も夏も甲子園に行ってもらいたいですね」
年が明け、自身の新たな野球人生も始まる。
「自分は......プロで活躍できるピッチャーになれるように、大学4年間で、身体面でも精神面でも成長していけたらと思います」
無欲だった左腕は甲子園の優勝投手となり、目の前に広がる世界は大きく変わった。










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