ヒロド歩美 インタビュー 後編(全3回)

 ミラノ・コルティナ五輪のキャスターとして、きたるべき冬の祭典への期待を語ってくれたヒロド歩美さん。しかし、五輪競技という枠を超えて、「2026年に注目してほしい」と強く願うアスリートがもうひとりいた。

女子野球の島野愛友利選手だ。

 中学生時代のある"予言"を自らの力で実現させ、甲子園のマウンドに立った少女は今、新たな挑戦の舞台をアメリカに求める。長年、野球の現場を取材してきたヒロドさんが、彼女の生きざまに「責任と使命感を持つ」とまで語る理由とは? 野球人として、そして伝え手として、女子野球の未来に馳せる熱い思いを明かす。

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【ひとりの少女の有言実行に鳥肌】

 ミラノ五輪の注目選手としてフィギュアスケート、スノーボードの選手たちを挙げさせていただきましたが、もうひとり、競技の枠を超えて、私がどうしてもお伝えしたい選手がいます。女子野球の島野愛友利選手です。

 先日、2026年夏からアメリカで始まる女子プロ野球リーグのドラフトで、島野選手が指名を受けました。私と彼女にはじつは少し縁があって、彼女がまだ男子に交じってプレーしていた中学生の頃から、その存在を知っていました。

 島野選手が中学生の時、「ジャイアンツカップ(第12回全日本中学野球選手権大会)」という全国大会で、名門チーム「大淀ボーイズ」のエースとして優勝を果たしました。当時からメディアの注目を集めていた彼女のインタビューで、忘れられない言葉があります。「私の場合は、この先頑張っても甲子園がないので、周りの人たちに頑張ってほしいけど......あったらいいな」。この切実な言葉は、当時大きな反響を呼びました。

 そして、その言葉が現実になるんです。彼女が高校3年生の時、全国高校女子硬式野球選手権の決勝が、史上初めて甲子園球場で開催されることになりました。

そのマウンドで優勝投手となったその姿を見た時、「有言実行とはこのことか。なんて言葉に力がある選手なんだろう」と、鳥肌が立ったのを覚えています。

 彼女の物語はそれだけではありません。大淀ボーイズ時代のチームメイトだった京本眞選手は、その後、読売ジャイアンツに入団しました。そして島野選手もまた、ジャイアンツの女子チームに進んだ。そして今回のアメリカ挑戦。

 私が今、彼女を強く紹介したいと思うのは、その輝かしい経歴以上に、彼女の行動の根底にある「女子が野球をする環境を、後輩たちのために切り開いていきたい」という、本当に強い思いに心を打たれたからです。その意志がなければ、中学生の時に「甲子園がない」というあの言葉も出てこなかったはず。自らの言葉で道を切り開いていくその強さに、私は惹きつけられました。

「野球で稼げる女子選手がいてもいい」女子野球・島野愛友利の挑戦と言葉にヒロド歩美が魅了される理由
アメリカ女子プロ野球リーグに挑戦する島野愛友利選手 photo by AFLO

【女子野球の未来に向けられた言葉の重み】

 ドラフト後に取材をさせていただいた時も、彼女の言葉の多くは、自分のアメリカ挑戦という個人的な思いよりも、女子野球界全体の未来に向けられたものでした。「野球で稼げる女子選手がいてもいい」。彼女が語ったこの言葉は、本当に重い。プロではないジャイアンツの女子チームや、その他のチームで野球を続ける選手たちは、働きながらプレーするのが一般的です。

「男性とはこんなにも環境が違う」という厳しい現実をあらためて突きつけられました。

 だからこそ、彼女の言葉を聞いた時、伝える側の私としても、これはしっかりと報じなければいけないという大きな責任と使命感を覚えました。まだ22歳なのに、自分のことだけでなく、つねに周りのこと、未来のことを見据えている。彼女のような選手がいることを、もっと多くの人に知ってほしいと心から思います。

 恵まれているとは言えない環境でも、女子野球の選手たちは、本当に純粋に「野球ができる幸せ」を全身で表現しています。100パーセントの気持ちで野球に向き合っているんです。だからこそ、島野選手の話を聞いて、彼女たちの力になりたい、この現状を発信することで応援したいと、強く思いました。

 逸材と呼ばれる選手でさえ、環境を理由に野球を諦めてしまうことがある。そんな話を聞くと、本当にもどかしい気持ちになります。島野選手のような特別な選手は、自ら道を切り開いていけるかもしれない。でも、誰もがそうできるわけではない。彼女は、自分が先頭に立って道を切り開きながら、あとから続く選手たちのために環境を整えたいという、本当に強い覚悟を持っているんです。

「野球で稼げる女子選手がいてもいい」女子野球・島野愛友利の挑戦と言葉にヒロド歩美が魅了される理由

【彼女の挑戦を伝えていきたい】

 長年、高校野球やアマチュア野球の現場を取材してきたからこそ、女子野球がこれからもっともっと盛り上がってほしいという思いは、人一倍強いです。島野選手と話していると、女子野球ならではの面白さの可能性もすごく感じます。

 たとえば、マウンドの距離や塁間を少し変えるだけで、もっと躍動感あふれるプレーが生まれるかもしれない。かつて甲子園にラッキーゾーンがあったように、ホームランが出やすい球場を作ることで、新たなスターが生まれるかもしれない。男子とは違う魅力を、ルールを工夫することで引き出せる可能性は、まだまだたくさんあると思うんです。

 私が女子高校野球の取材でいつも感じるのは、選手たちの「野球が楽しい!」という気持ちが、表情や声、プレーの一つひとつから溢れ出ていること。それは男子の野球とはまた違う、独特のパワーと空気感なんですよね。

 島野選手の挑戦は、まだ始まったばかり。アメリカのリーグがどんなレベルで、どんな環境なのかも不透明だと思います。きっと、タフな挑戦になるはず。だからこそ、彼女にスポットライトを当てて、その挑戦を伝えていきたい。彼女のチームには、他にも4人の日本人選手がいます。

彼女たちの活躍が、日本で野球を続ける少女たちの希望の光になってほしいですし、きっとなるはずです。そのためにも、私も発信を頑張りたいです。

終わり

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<プロフィール>
ヒロド歩美 ひろど・あゆみ/1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。その後は『サンデーLIVE!!』『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』『芸能人格付けチェック』などに出演。2023年からフリーとなり、現在まで『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めている。2026年2月6日に開幕するミラノ・コルティナ冬季オリンピックのテレビ朝日系中継番組では、松岡修造とともにキャスターを務める。

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