蘇る名馬の真髄
連載第36回:ウイニングチケット

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。

ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第36回は、名手・柴田政人騎手に念願のダービータイトルをプレゼントしたウイニングチケットの足跡を振り返る。

『ウマ娘』でも描かれるダービー制覇への執念 ベテラン騎手の懸...の画像はこちら >>
『ウマ娘』のなかには、日本ダービー制覇に並々ならぬ執念を燃やすキャラクターがいる。ウイニングチケットだ。

 スポーツ全般が大好きで、なかでも夢が一番詰まっているのは日本ダービーと考えており、なんとしてもこの舞台に出て勝ちたいと願っている。

 このキャラクター設定は、モチーフとなった競走馬・ウイニングチケットに関係している。同馬は1993年のクラシックロードを歩み、同世代のビワハヤヒデ、ナリタタイシンとともに「3強」を形成。当時、3頭の頭文字から「BNW」と呼ばれた。

 ウイニングチケットは、ベテランジョッキーの柴田政人騎手とコンビを組み、この名手にとって"悲願"だったダービー制覇を成し遂げる。こうしたストーリーがベースとなり、ウマ娘のキャラクターが作られていると言えよう。

 ちなみに、ウマ娘の世界でもビワハヤヒデとナリタタイシンは強力なライバルであり、また強い友情で結ばれた関係となっている。

 1992年、3歳(現2歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。以下同)夏にデビューしたウイニングチケットは、2戦目から3連勝。4歳になってからの初戦、クラシック前哨戦のGⅡ弥生賞(中山・芝2000m)も快勝した。

 こうして、この世代の確固たる主役候補となると、クラシック初戦のGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)では、単勝1番人気に支持された。しかし、ライバルのナリタタイシン(1着)、ビワハヤヒデ(2着)の後塵を拝して、4着に敗れてしまう(※5位入線だったが、3位入線のガレオンの降着により繰り上がり)。

 このレースでは、柴田騎手が早めに仕掛ける積極策を敢行したが、最後に失速して敗戦。当時は「騎乗ミス」ではないかという声も相次いだ。

 そうしたなかで迎えた日本ダービー。ここでも、ファンはウイニングチケットを1番人気に支持した。単勝オッズは3.6倍。2番人気のビワハヤヒデは3.9倍、3番人気のナリタタイシンは4.0倍と、「3強」が僅差で並んだのである。

 44歳の柴田騎手にとって、騎手人生の山場となったこの一戦。レースがスタートすると、ウイニングチケットは中団につけてじっくりと様子を伺う。ビワハヤヒデはその少し前、ナリタタイシンは後方からレースを進めた。

 3~4コーナーにかけてレースは動き始めるが、ウイニングチケットと柴田騎手はジッとしていた。皐月賞とは異なり、4コーナーでも馬群の中で脚をタメることに専念したのである。

 そして直線入口、各馬がスパートしていくと、ウイニングチケットの目の前が一気にひらけた。すかさず柴田騎手はゴーサインを出し、瞬く間にこの人馬が先頭に躍り出る。

 だが、直線はまだ残り300mもあった。内からはビワハヤヒデが、外からはナリタタイシンがものすごい気迫で追い詰めてくる。内、中、外。同世代の「3強」による死闘となった。

 一度はナリタタイシンがかわそうかという勢いで迫るが、ウイニングチケットが譲らずにもう一度脚を伸ばす。

今度はビワハヤヒデが内から馬体を併せるが、またも粘り腰でライバルの前へ出る。そのつど、柴田騎手が渾身の力で手綱をしごき、鞭を揮った。

 そんな柴田騎手の懸命な思いに応えるように、そのままウイニングチケットが先頭でゴール。2着ビワハヤヒデに半馬身差、3着ナリタタイシンにはそこから1馬身4分の1差をつけて戴冠を遂げた。柴田騎手にとっては、19度目の挑戦でついに手にしたダービー制覇だった。

 ダービー以降も、重賞戦線で奮闘したウイニングチケット。しかし、2度目のGI勝利を飾ることなく引退。まるで柴田騎手にダービーを勝たせるために、生まれてきた馬のようだった。

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