メジャースカウトが見た日本人選手の現在地(後編)
「小柄な日本人投手は通用しない」──かつてメジャーに根強くあったこの常識が、いま大きく揺らいでいる。その評価を覆した象徴的存在がドジャースの山本由伸だ。
【山本由伸が変えた評価】
── 日本人投手の評価について、近年大きな変化があったと伺いました。とくに「体格」に関する見方はどう変わったのでしょうか?
以前は「小柄な日本人投手は不利だ」という強い固定観念が、メジャー関係者の間にありました。僕がスカウトを始めた当初も、「アメリカ人は体が大きく、日本人は小さい。だからダメだ」と切り捨てられるようなこともありました。しかし、今は違います。同僚のスカウトからも、「固定観念は捨てるべきだ」という声が出始めています。
── きっかけはなんだったのですか。
山本由伸の成功です。ご存じのとおり、彼は身長180センチに満たず、NPBの選手のなかでも小柄な部類に入ります。かつては「身長が低いとボールに角度がつかない」という見方が支配的でした。しかし、彼はそれを打ち消すほどのストレートの伸びと鋭い変化球、そして抜群の制球力を備えています。これは身長190センチの投手にも勝るとも劣らないアドバンテージだと思います。
角度の話をするなら、たとえば山岡泰輔(オリックス)も山本由伸と同じくらい小柄ですが、すばらしい「球の角度」を生み出すことができる投手です。投げ方次第で身長が低くても、角度のあるボールは投げられるのです。
── メジャーが注目する選手は、やはり投手中心なのでしょうか。
圧倒的に投手ですね。割合で言えば「投手8割、野手2割」という感覚です。今回WBCに出ていない選手も含め、逸材はゴロゴロいます。
【メジャーが次に狙うWBC不出場選手】
── 今回のWBCには出場していないが、絶対にマークすべき投手は?
筆頭は、山下舜平大(オリックス)ですね。彼はもう"絶対"です。徹底的にマークしています。それから石井大智(阪神)も、あのスプリットと浮き上がってくるようなストレートは非常に魅力的です。今回は故障で、世界にその投球を披露できませんでしたが、もし出場していたら、評価は一気に跳ね上がっていたと思います。
あと高校から見ていた選手としては、山口廉王(仙台育英→オリックス)や東松快征(享栄→オリックス)といった若手の有望株は、長い目で追っていきたいですね。一方で、戸郷翔征(巨人)や宇田川優希(オリックス)のように、一度は高い評価を得たものの、故障や不振で急落する選手もいます。
── 野手については、どのようなタイプに期待していますか?
個人的には、糸井嘉男(元日本ハムなど)や柳田悠岐(ソフトバンク)のような、パワーとスピードを兼ね備えたタイプが好きですね。あとは周東佑京(ソフトバンク)のような、圧倒的な脚力がある選手。彼はイチローと同じで、バットに当たりさえすれば、何かが起こる可能性がある。ただ、今のMLBはパワー重視の野球になっていて、打球速度や打球角度が注目されています。だから、私の好みだけではスカウティングできないですし、球団の考える補強、育成ポイントからずれてはいけません。そういう意味では、クロスチェックが重要です。
── クロスチェックとは?
私たち駐在スカウトの評価(点数)が高く、ビデオを見た本国のスタッフも「良さそうだ」と判断すれば、ディレクター(部長クラス)などが来日して視察を行います。そこで、報告どおりなのか、あるいは報告ほどではないのかを見極め、判断材料とします。
無論、わざわざアメリカから来るわけですから、プロ選手を数名視察すると同時に、スケジュールが合えば高校や大学などのアマチュア選手も視察対象に含めます。時には春季キャンプの時期に来日し、入れ替わり立ち替わり複数のスカウトがひとりの選手をチェックすることもあります。
【スカウティングはタイミングが命】
── なぜひとりのスカウトの判断だけではいけないのでしょうか。
高い買い物をするわけですからね。
しかし、そうした厳しい目が入るからこそ、評価の精度は上がります。阪神の石井を見た時も、当初は微妙な反応でしたが、故障が完治した状態で見れば、また評価は変わってくるでしょう。才木浩人(阪神)も、最初は中継ぎ程度という評価だったのですが、翌年には評価が上がってきました。年々、考え方や見方が変わるのは当然のことなのです。
── つまりスカウティングにはタイミングが大事になる。
そのとおりです。私たちも旬の時に獲得したい。それがFAやポスティングのタイミングと合致してくれればいいですが、そうでないとすると獲得するタイミングを逸してしまう。
── アマチュア野球の現場、とくに高校生の練習なども直接視察されるのでしょうか?
行きますよ。ちゃんと「○○の誰々です」とあいさつして現場に入ります。NPBかMLBかは関係なく、スカウトとして選手を見るのは同じですから。
── 現場の監督やチームからは歓迎されるものですか?
歓迎されるというか、ふつうですね。ただ、正直なところ「名門校」と呼ばれるようなチームの視察は苦手ですね(笑)。その理由はふたつあって、ひとつは名門校にいるような選手は、すでに完成しているところがあって、伸びしろがあまり期待できない。もうひとつは、監督の姿勢です。なかには、「メジャーには行かせない」と公言している監督もいます。そうなると、わざわざ貴重な時間を使って見にいく必要性が薄くなります。
── 若年層、とくに期待の若手投手の現状について、懸念されていることはありますか。
これは賛否あると思いますが、日本の高校生は投げ過ぎだと感じます。










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