その軽やかな身のこなしに魅了された高校野球ファンも多いのではないだろうか。2025年11月。

各地区の優勝チームが集う晩秋の神宮で、九州国際大付(福岡)の遊撃手・吉田秀成(よしだ・しゅうせい/新2年)が突出した才能を見せつけた。

【高校野球】野村克也が「天才」と認めた叔父から受け継いだ打撃...の画像はこちら >>

【1年夏から正遊撃手として活躍】

 広い守備範囲、柔らかなグラブさばき、そして安定した送球。一連の動きに無駄がない。3番を打つ打撃でも、状況に合わせて広角へと打ち分ける。まだあどけなさが残る顔立ちとは対照的に、試合を支配するかのような一挙手一投足に、プロのスカウトも思わず唸ったほどだ。ただ、神宮制覇に貢献しながらも、満足することはない。

「秋の大会では自分に足りないところがありました。そこをしっかりと伸ばせるように、冬の間、しっかりやってきました」

 吉田のルーツは宮崎にある。小学1年から野球を始めた頃から、自宅での壁当てを日課としていた。小学生にとっては地味で単調な練習をひたすら繰り返し、ゴロ捕球の基礎を固めてきた。

 それは、単なる練習という枠を超え、自身の身体操作を極限まで突き詰める「職人の作業」に近かった。「一番自信があるのは守備です」と話すように、玄人好みするプレーは、毎日の反復作業から生まれたものだ。

 中学では日豊ボーイズに所属。

3年夏の全国大会に出場した際、九州国際大付から誘いを受けた。九州国際大付は2011年センバツで準優勝。これまで甲子園に春3度、夏9度出場している福岡の強豪校だ。

「声をかけてくれたので、気になっていろいろと調べたら、自分のプレースタイルに合っているなと思い、入学することを決めました」

 鳴り物入りで九州国際大付の門を叩くと、1年夏には背番号6を奪取。正遊撃手として福岡大会決勝まで進出。聖地まであと1勝に迫ったが、西日本短大付の前に1対10と大敗した。吉田は「6番・ショート」で出場し、チーム唯一の打点をマークするなど2安打を放ち、存在感を見せたが、涙に暮れる先輩の背中を見て、自身の考えが甘かったことを悟った。

「3年生の方々が決勝まで連れて行ってくれて、そこで悔しい思いをしたから今があります。入学した頃は『1年生のうちはまだいいかな』という気持ちがありましたが、上でやるためにはもっと頑張らなければいけないと思うようになりました」

【叔父は野村克也も認めた天才】

 秋の新チームからは3番を任され、主軸の自覚が芽生えてきた。公式戦ではチーム2位の14打点をマーク。勝負強い打撃と堅実な守備で、チームの危機を何度も救ってきた。

 かつて小倉高から青山学院大、松下電器(現パナソニック)、そして楽天、ヤクルトと、アマチュア、プロの舞台で数々の逸材選手を目にしてきた楠城祐介監督も、その才能を高く評価する。

「吉田の動きは、ステップや捕球のセンスも含めて、練習すれば誰でもできるというものではありません。

教えられる領域を超えた、天性のものがあります」 

 指揮官の言葉は、単なる賞賛を超えて、ひとりの野球人としての敬意すら感じさせる。さらに、今春の選抜では、4番、捕手、そして主将の三役をこなす城野慶太の負担を少しでも減らすため、クリーンアップの中心に座る構想もあるという。神宮大会覇者としての重圧がかかる甲子園においても、吉田ならやってくれる──。その期待感が、チーム内に漂っている。

 幼少の頃からプロの存在を身近に感じて育ったのも大きい。楽天での7年間で526安打を放った草野大輔さんを叔父に持つ。野村克也監督(当時)をして「天才」と言わしめた打撃の神髄を、正月に宮崎へ帰省する度に伝授してもらっていた。

「教えることのレベルが違います。周りは細かい動作を指摘するのですが、叔父は例えば逆方向に強い打球を打てるようなスイングをしろとか、そのための体の使い方を教えてくれました。自分が不調になった時は電話をしたり、打撃動画を送るとアドバイスをくれます」

 昨秋神宮大会初戦の山梨学院戦。1点を追う5回、右中間を真っ二つに破る同点タイムリーを放った。「昨秋のなかで一番いいバッティング」と振り返ったほどの納得の一打だった。

さらに決勝の神戸国際大付(兵庫)戦では、初回に右前へ先制適時打。草野さんの教えを、全国の大舞台で見事に実践してみせた。

【目標は無失策、打率5割で全国制覇】

 神宮大会覇者として過ごしたこの冬、吉田は得意の右打ちにさらなる精度と飛距離を求めて研鑽を積んできた。

「常に右中間へ強い打球を打つというのを練習の時からやっています。今までは逆方向には打てるのですが、飛距離が出なかったので、この冬は逆方向へ本塁打を打つことを目標に取り組んできました。そのうえで、打率が高い打者を目指していきたいです」

 守備には絶対的な自信を持つが、昨秋はチーム最多の4失策とミスが目立ったのも事実。しっかりと基礎を見直し、甲子園へと乗り込む。

「個人的には守備で無失策、打率は5割を打って全国制覇をしたいです。150キロを超えるレベルの高い投手と対戦したいです」

 新2年生という肩書きはもはや不要なのかもしれない。神宮の杜に降臨した才能は、ひと冬を越え、甲子園という聖地でさらなる怪物へと進化を遂げる。プロの血脈、昨夏の悔しさ、そして楠城監督やチームの期待......。吉田秀成はそのすべてを血肉に変えて、スターダムへの階段を駆け上がる。

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