神戸国際大付・青木尚龍監督インタビュー(前編)

 選抜大会を目前に控えたある日、神戸国際大付の監督である青木尚龍(よしろう)を訪ねた。話題は大会の展望やチーム事情ではなく、意外にもプロレスから広がっていった。

 力道山の時代からプロレス好きの家庭で育った青木監督は、生粋の"プロレス小僧"であり、そのまま"野球小僧"として大人になったような人物だ。グラウンド脇で聞くプロレス談義には、時に高校野球にも通じる話が混じり、いつも楽しく聞かせてもらってきた。

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【プロレス観戦でエネルギー注入】

 今回は、こちらから話題を振ったところもあった。昨秋の戦いを終え、選抜出場が濃厚となったチームには、その後、新聞や雑誌、ネット媒体などの取材が続いている。少しは別の話もしたいのではないか──そんな思いから話題を向けてみると、会話はすんなりと広がっていった。

── 最近、プロレスのほうはどうですか?

「1月の終わりに、エディオンアリーナ大阪の第2競技場で行なわれたノアの試合に行きました。久しぶりに生の空気感を味わったら、やっぱりええなと。大きい会場じゃなかったけど、前から2列目で観られたので、迫力があってよかったわ。

 それと年明けといえば、棚橋弘至の引退試合の新日1・4東京ドームね。久しぶりの地上波中継もあり、観客は4万6000人。最近は小さな会場での開催が増え、満員にならないことも多い時代やから、余計にあのドームのパンパンは爽快やったわ」

 青木のプロレス談義には、ときおり主催者目線の見方が混じる。名古屋で過ごした大学時代、ひょんなことからプロレス関係者と知り合いになったのがきっかけだ。愛知県体育館などで大会が開催される際には、観戦に誘われるだけでなく、ポスター貼りを手伝ったり、宣伝カーに乗って長州力の入場曲『パワーホール』を流しながら街中を回ったりもしたという。

「だからお客さんが入るとうれしくて、今もいろんな団体のお客さんの数を知るために専門誌を買うことがあります」

 何事にも一途な青木のプロレス愛が伝わってくるエピソードだ。かつてはグラウンドのネット裏にプロレス関連の書籍が整理して並べられ、選手が自由に持ち帰って読めるようになっていた。男を鍛え、勝負の心を磨いてほしい──そんな思いもあったのだろう。私も取材の際、2、3冊を借りて帰ったことがある。

【魔物をつくり出すのは観客の熱】

 グラウンド脇で、野球取材の合間にプロレスの話を聞くようになってから20数年。この日も話題はリングとグラウンドを行き来しながら、やがて「1・4東京ドーム」の話へと戻っていった。

「レスラーやないからわからんけど、あれだけ多くのお客さんが入ったなかで試合をやるっていうのは、まさにレスラー冥利に尽きると思うんです。観客の歓声や思いが選手に伝わって、会場の空気ができあがっていってね。その点は野球も同じで、高校生にとっての甲子園は、まさにそういう場所でしょう」

 神戸国際大付の甲子園出場は、春夏連続出場となった2021年夏以来で、選抜としては6度目となる。前回(2020年)はコロナ禍の影響で選抜大会が中止となり、夏も無観客のなか「甲子園高校野球交流試合」での開催となった。その翌年に行なわれた選抜でもあり、青木の知る甲子園とは空気感が違っていた。

「まだいろんな制限のなか、多くの人が知恵を絞って選抜が開催され、夏も勝って出ることができた。ただ、いつもの甲子園ではなかったですよね。

よく『甲子園には魔物がいる』っていうけど、魔物をつくり出すのはお客さんの思いとか、銀傘にこだまする歓声とか......。

 プロレスでも、ワン、ツー、スッ......とカウントが入るなかギリギリで返すと、お客さんが『ウォーッ!』となって、『まだ返すのか、すごいな、いけ!』という空気がどんどん高まる。選手のアドレナリンも出て、試合がどんどんよくなっていくんです。やっぱり観衆の力はすごい。だから今回の甲子園は、いろいろな制限もなくなりましたし、思いきり応援してもらって、あの空気感を選手にも存分に味わってほしいんですよ」

【プロレスラーの入場曲をいち早く採用】

 甲子園の応援といえば、近年はブラスバンドの演奏にも注目が集まっているが、神戸国際大付の応援もオリジナリティに溢れている。人気プロレスラーの入場曲をいち早く取り入れ、スタンドを大いに盛り上げてきた。

「ハンセンのテーマ曲である『サンライズ』なんて、めちゃくちゃ早くから兵庫大会でやっていましたね。最近はどこもやるようになって、ウチはあまりやらんようになったけど」

 馬の嘶(いなな)きとともに、迫り来るようなメロディに乗って、テンガロンハットをかぶったスタン・ハンセンがロープを振り回しながら入場する。1980年代に圧倒的な人気を誇ったレスラーのテーマ曲は、兵庫県内のチームでも演奏される機会が多いが、その元祖は神戸国際大付である。

 卒業生の記憶をたどると、校名が八代学院から神戸国際大付へと変更された1992年頃には、すでに流れていたようだ。青木も「最初の頃は、全日本や新日本の選手のテーマ曲が収録されたCDを買ってきて、スタンドから流したりもしていましたね」と振り返る。

 そこからバリエーションも増え、2017年春に甲子園へ出場した際には、こんなパターンができあがっていたという。

当時のコーチが教えてくれた。

「試合前のシートノックの7分間は、武藤敬司から中邑真輔へいっての三沢光晴。これが基本の流れです」

 今回のラインナップにも、自然と興味が向く。青木に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「僕からリクエストすることはなくて、基本的に任せています。個人的には小橋建太さんの曲や、長州力さんの『パワーホール』、天龍源一郎さんの『サンダーストーム』なども大好きで、テンションが上がるんですが、リズムや曲調がスタンドのノリに合うかどうかというのもある。ジャイアント馬場さんの『王者の魂』もすごくいい曲で大好きやけど、野球の応援曲としては少し違いますね。

 最近では丸藤正道さんの曲も好きですが、テンポが難しい。やはり、ノリがよくて、スタンドの選手や生徒たちがかけ声を入れやすいことが重要です。だから、武藤さんの『HOLD OUT』なんかは、タ~~タ~~タッタ、タタタタタ~ン、タ~~~タ~~タッタ、タタタタタ~ン......と始まったあとに『ワッショイ!ワッショイ!』とうまく入るし、三沢光晴さんの『スパルタンX』のようなアップテンポでノリのいい曲も合うんです」

 秋の戦いでは、スタンドが生み出すノリの良い空気に乗ってチームは兵庫大会、近畿大会と勝ち上がり、最後は秋の日本一にあと一歩まで迫る準優勝を果たした。選抜でも、選手たちの力となるであろう応援演奏は、勝ち上がるほどに高校野球ファンの大きな関心を集めるだろう。

つづく>>

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