キャンプで見つけた金の卵①~広島・竹下海斗
今年の「宮崎」はすごいことになっていた。ただでさえ、2月の宮崎はプロ野球キャンプで盛り上がり、宮崎便の飛行機は混むし、ホテルの宿泊代も高くなる。
宮崎に行くと決めた時点で、すでに飛行機は満席。周辺の熊本便、鹿児島便も似たり寄ったり......。ならばと、平穏な福岡空港からレンタカーで宮崎を攻めてやろう。途中、注目している高校球児のところにも寄れるので、一石二鳥じゃないか。気分一新、意気軒昂。長駆、宮崎に向かった。
【天福球場で見つけた"お宝"たち】
広島カープの日南キャンプ。天福球場は閑散としていた。数日前に、一軍メンバーが沖縄へキャンプ地を移動したからだ。
この日訪れた報道関係者は私ひとり......。3年前のドラフト1位の常廣羽也斗も、2年前のドラフト2位の佐藤柳之介もここにいるのに、誰も見に来ない。プロ野球とは、そうしたものなのかもしれない。
しかし、こういう場所に「お宝」が眠っているのもプロ野球で、これだからキャンプ巡りはやめられない。
室内のブルペンでは、若手投手が4人並んで投げていた。
身長198センチの長身2年目右腕・小船翼が右オーバーハンドから投げ下ろす。体重119キロとガイドにはあるが、とてもそんなふうには見えない。積み重ねてきた修練がシルエットに現れて、引き締まった精悍な体躯だ。
だからだろう。これだけのサイズなのに、投球フォームのボディバランスが美しい。投げ終わりの瞬間、大きな体が小さくまとめられている。教えようにも教えられない得難い「才能」だ。
並んで投げる塹江敦哉(ほりえ・あつや)は、去年までの11年間で232試合投げている左腕なのだから、実力は「沖縄組」だ。サイドハンドにして、今季3年目。2024年は自己最多の53試合に登板したが、昨年は28試合と登板機会が半減した。
【高校時代とはシルエットが一変】
そんななか、ブルペンの左端で投げているサウスポーから視線が外せなくなった。
背番号126、敦賀気比高(福井)からカープに進んで2年目の竹下海斗。2024年育成ドラフトで、小船に次ぐ2位で指名された19歳だ。
ひと目見て「ええっ!」と思った。高校時代の練習試合で見た薄っぺらなユニフォーム姿と、シルエットが一変している。すっかり厚みを増して、見るからに「投げられる体」になっていた。
時計の文字盤でいえば「1時」くらいの角度から投げ下ろす純粋オーバーハンド。180センチ80キロ。今のプロ野球ではふつうサイズでも、あの角度で、球持ちも高校時代よりだいぶよくなって、打者寄りでボールをリリースできているから、ホームベース上でエネルギーの落ちない「生きたストレート」が捕手のミットを叩く。
あれだけ腕の振りがしなるのだから、肩甲骨や胸郭の可動域がよほど広いのだろう。ボールを投げるために生まれてきたようなヤツだ。
高校時代からカーブがよかった。
柳裕也(中日)が明治大当時、東京六大学のリーグ戦で110キロ前後のタテのカーブで次々と空振りを奪うのを見て不思議だったが、実際にブルペンでボールを受けてみて驚いた。
「140キロ前半の速球より、ずっと速く見えるじゃないか!」
宮崎日大時代の武田翔太(前ソフトバンク、現韓国SSG)も、福岡大大濠時代の山下舜平大(オリックス)もそうだった。竹下のカーブも、空振りが奪える「生命力」を秘めている。
「そうなんです。カーブにはある程度自信があるんで、今はスピードとか回転数とか、基本的な出力を上げることを最優先にしてやっています」
ちょっと人を食ったような感じが、いかにもピッチャーらしい。それでも、聞かれたことに対して、しっかりと話してくれる。横顔、雰囲気......西武・西口文也監督の立正大時代に似ている。
「やっぱり、自分のこの角度からの左ピッチャーはなかなかいないと思うんで、そこは特徴だと思って大事にしていきたいです。でも逆に、高めに抜けがちな角度でもあるので、できるだけ長く持って、低めに集められるだけの体の強さをアップさせたいですね」
【ほかの投手とは違うマウンドでの支配感】
「気持ちが強いですね。竹下の場合は、そこが一番かな」
北信越地区を担当して、竹下を見出した高山健一スカウトのお見立ては冷静で具体的だ。
「高校の頃より、(球速が)アベレージで4、5キロ上がって、今が140前半ぐらい。それでも、だいぶ手元でグッと来る真っすぐが投げられるようになってきましたね。もともと、初球で使ってカウントがとれるだけのカーブがあるし、あとは、スライダーか、ツーシームか、もうひとつふたつ頼りになる変化球を覚えると面白い。頭(先発)からいって、試合を作れる資質は持っていますから」
昨年まで捕手として竹下のボールを受けていた磯村嘉孝ファーム管理部管理課長が、今季から2軍マネジャーとしてバックアップしているのも心強い。
「いいピッチャーですよ、竹下! 使えるカーブを持っていますし、勝負度胸がいい。メンタル、強いですよ」
そうだ、「度胸」だ。ブルペンのピッチングを見ていて、なぜ目を奪われたのか? ずっとモヤモヤしていた理由が磯村マネジャーのひと言でわかった。
雰囲気が違っていたんだ。ほかの若手投手たちが、ひたすら一生懸命に捕手のミットだけを見て全力投球しているなかで、竹下投手のピッチングには「間(ま)」があった。捕手のミットに引っ張られるように懸命に投げるほかの投手たちとは違って、竹下投手は自分の間で、投げたいように投げている。ちょっと大げさにいえば、マウンドでの「支配感」。ほかの投手とは、そこがはっきり違っていた。
「去年は、竹下と同じ左腕の辻(大雅)が一軍で台頭したように、ウチのファームには楽しみな若手が何人もいます」
【支配下登録のカギは左打者への内角攻め】
ファーム組織を束ねる比嘉寿光ファーム管理部次長の期待も大きい。
「竹下の場合は、やっぱりあのマウンドでの立ち姿と雰囲気ですね。全国的にも強豪の敦賀気比出身ですよね。大きな試合のマウンドでたくさん投げてきたんだろうなって思わせるような、堂々のマウンドさばきっていうんですか。そこが、彼の一番の持ち味でしょうね」
支配下登録、そして一軍の壁突破のカギとなるのは、どのあたりだろうか? 竹下本人にぶつけてみた。
「左ピッチャーが一軍で通用するかどうかは、左バッターのインコースを突けるかだと思っています。真っすぐの出力を上げるのは当然のこととして、ツーシームで左バッターのインコースを突く練習を、去年の秋からやっているんです」
カープのサウスポーは多士済々である。ローテーションの一角を支える床田寛樹、森翔平、玉村昇悟。リリーフ陣には森浦大輔、テイラー・ハーンに成長株の辻大雅。さらに3年目・髙太一に、2年目の佐藤柳之介と追走する若手左腕もいる。
相手チームと戦う前に、チームメイトにライバルがひしめくなかで、マウンドに上げてこそ輝きが増す竹下のようなサウスポーが、いつの間にか一軍投手陣の席を占めている......。そんな未来図が、私の頭の中で徐々に輪郭を帯び始めている。










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