3月27日のプロ野球開幕に向けて、球界のレジェンド・山本昌(元中日)が2026年セ・リーグを大展望。前編では古巣・中日ドラゴンズの戦力を分析する。
【先発の軸は髙橋宏斗と金丸夢斗】
── 今年の中日をどう感じますか?
山本昌 キャンプも3回見に行きましたが、明るく元気なムードで練習していました。ハードな内容なのに、さほど無理している感じもない。ケガ人が出てしまったのは残念ですが、どのポジションにも複数のレギュラー候補がいるのは頼もしいです。井上一樹監督も「今年のチームは競争がある」と手応えを感じているようでした。
── 今年はドラフト1位の中西聖輝(青山学院大)、2位の櫻井頼之介(東北福祉大)と、ふたりの即戦力右腕が入団しました。
山本昌 ドラフト前から評判のいい投手でしたから、すばらしい補強になりました。とくに櫻井は状態がよく、現場では「谷元圭介(元中日ほか)の球筋に似ていて、ストレートが手元で伸びる」と好評価でした。中西はまだ本来の自分の持ち味を出しきれていない印象ですが、それでも結果を残しているのですからたいしたものです。これから調子が上がってくれば、先発ローテーションを回れるだけの存在になるはずです。
── 山本さんは以前から、「ルーキーは期待するけど、計算には入れない」という持論がありました。
山本昌 それは彼らに対しても変わりません。計算はしないですが、彼らが競争に食い込んできてもおかしくない。
── 投手陣全体の戦力はどうでしょうか。
山本昌 先発陣はWBC組の髙橋宏斗、金丸夢斗のふたりが軸になるでしょう。ベテランの大野雄大は今年もいいし、昨年に奮闘した松葉貴大、涌井秀章、柳裕也も元気です。カイル・マラーが昨年と比べると状態が今ひとつ上がっていないように見えるのが不安ですが、人数は揃っています。本来であれば、ここに草加勝、仲地礼亜、福田幸之介といった若手が競争に絡んでほしかったですが。
── 金丸投手は1年目の昨季は2勝止まりでしたが、QS率80%とゲームメイクしていました。今年は飛躍が期待できますね。
山本昌 昨年からすばらしいボールを投げていました。とくにインコースのストレートが一番いいボールです。WBCでもチェコ戦で結果を残し(2回5奪三振)、自信をつけたはずです。ただ、これからは『勝てる投手』になるために、もう一段レベルアップしてもらいたいですね。
── どんな課題があるのでしょうか。
山本昌 昨年は試合序盤に不用意な一球から長打を浴び、失点するケースが目立ちました。途中から持ち直して6~7回をまとめてくれるのですが、先取点が響いて勝ち星がつかない。インコースのストレートに自信があるのはわかりますが、カウント球からインコースを突く投球は疲労がたまります。アウトコースで簡単にストライクが取れるようになると、投球が楽になるはずです。せっかくタイトル争いができるだけの能力を持っているので、インコースを生かすための投球を追求してもらいたいですね。
【山本昌が期待するふたりの投手】
── 一方、リリーフ陣は少し手薄な状況ですね。
山本昌 クローザーの松山晋也が左腹斜筋肉離れで開幕絶望になり、セットアッパーの清水達也も腰痛で調整が遅れています。藤嶋健人や新加入のアルベルト・アブレウ、来日4年目のウンベルト・メヒアもいますが、なんとか開幕直後を乗りきりたいですね。
── 山本さんが期待する投手はいますか?
山本昌 根尾昂です。投手に転向して5年目に入りますが、今年は殻を破りそうな気配があります。右手を振る角度がよく、鋭さも出てきました。キャンプの練習後に「よくなったね」と本人に声をかけさせてもらったくらいで。
── 以前より、山本さんは期待を口にしていましたね。
山本昌 ストレートは155キロを超えてくるし、いい角度とフォークを持っています。他球団の人に聞くと、みんな「勝野が嫌」と言っていますよ。せっかくすばらしい能力を持っているのに、自分から崩れてしまうのはもったいない。今季こそ期待に応えてもらいたいですね。
【細川成也は本塁打王の可能性あり】
── 一方、野手陣はいかがですか?
山本昌 ジェイソン・ボスラーが左ふくらはぎ肉離れで開幕に間に合うか微妙ですが、三塁には福永裕基や石川昂弥がいて、一塁には新外国人のミゲル・サノーがいる。とくに石川は10キロ近く減量したことで、キャンプ中から攻守の動きがよくなっていました。故障歴のあるヒザへの負担も軽減されるでしょうし、今年こそ本格的に孵化してもらいたいですね。2019年のドラフト会議で、佐々木朗希(ドジャース)もいるなかで1位指名した逸材ですから。
── 今季バンテリンドームに新設される「ホームランウイング」も追い風になるかもしれませんね。
山本昌 そうですね。
── 強打者が育ちやすい環境になるかもしれないですね。
山本昌 ただ、投手陣には対策を求めたいです。今のところ、私が見る限りでは昨年までと同じように投げているように感じます。長打を浴びないための、チームとしての取り組みが見えてくると、今まで以上に勝てるはずです。
── どんな対策が必要でしょうか。
山本昌 今までは球場が広いこともあり、投手がどこにどう投げるべきか、「ロケーション」の考えが希薄になっていました。
── 投手としてより繊細さが求められますね。
山本昌 今まで球場の広さに助けられてきた分、ビジターでは弱さを露呈する「内弁慶」の投手も目立ちました。でも、ロケーションをしっかりと考えることで、どの球場でも同じように投げられるはずです。バンテリンドームの被本塁打数はどうしても増えるでしょうが、味方打線の放つ本塁打数よりも上げ幅を抑えたいです。
【戦力充実の外野陣】
── 打線では先ほど名前の挙がったサノーもMLB通算164本塁打の実績があり、長打力に期待がかかります。
山本昌 オープン戦を見る限りでは外角のボールへの対応に苦労していますが、新外国人選手は公式戦に入らないとわかりません。私も現役時代にジム・パチョレック(元大洋ほか)やロベルト・ペタジーニ(元ヤクルトほか)に痛い目に遭わされました。とくにペタジーニはスコアラーから『左投手ならどこに投げても打たれないよ』と報告を受けていたのに、初対決でアウトローのストレートを左中間に持っていかれて驚きました。昨年のボスラーも徐々に日本に慣れて、活躍しましたよね。
── 外野陣は戦力に厚みがあります。
山本昌 細川、岡林勇希、上林誠知とレギュラーが揃っているうえに、鵜飼航丞も力をつけてきています。ボスラーが復帰した時、石川が外野に回ったとしても、簡単にはポジションを奪えない状況です。福永も安定感のある打撃が魅力ですが、二塁には田中幹也がいる。田中は年間通して「ヒット性の打球を何本止めているんだ?」と思うくらい、守備の貢献度が高い選手ですから。
── 弱点を挙げるとすれば、遊撃手でしょうか。
山本昌 絶対的なレギュラーが出てきてほしいですね。山本泰寛、村松開人、土田龍空、辻本倫太郎あたりの競争になりそうですが、厳しい競争を勝ち抜いて新たなスターが誕生してもらいたいです。
つづく>>
山本昌(やまもと・まさ)/1965年生まれ。神奈川県出身。日大藤沢高から83年ドラフト5位で中日に入団。5年目のシーズン終盤に5勝を挙げブレイク。90年には自身初の2ケタ勝利となる10勝をマーク。その後も中日のエースとして活躍し、最多勝3回(93年、94年、97年)、沢村賞1回(94年)など数々のタイトルを獲得。2006年には41歳1カ月でのノーヒット・ノーランを達成し、14年には49歳0カ月の勝利など、次々と最年長記録を打ち立てた。50歳の15年に現役を引退。現在は野球解説者として活躍中。










![Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 “GIFT” at Tokyo Dome [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41Bs8QS7x7L._SL500_.jpg)
![熱闘甲子園2024 ~第106回大会 48試合完全収録~ [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/31qkTQrSuML._SL500_.jpg)