この春の選抜高校野球大会(センバツ)から採用された指名打者(DH)制度。この制度自体は、プロ野球パ・リーグやメジャーリーグ、社会人、大学(今シーズンから東京六大学リーグでも導入)でも使われているため、野球ファンにとってはお馴染みだ。

 だが、高校野球では初めての採用となる。センバツで全チームが登場するまでの16試合を見たが、DHを使用するチームもあれば、従来どおり9人で戦うチームもあった。

 指導者にDH制について聞くと、「攻撃力がアップする」「投手の負担が軽減される」「多くの選手を起用できる」という声が上がり、概ね歓迎されているという印象が強い。

 ただ、プロ野球などでは「打力はあるが、守備に不安のある選手の定位置」というイメージがあるDHだが、高校野球では少し異なるようだ。

【高校野球】「打たないといけない」重圧、「準備ができない」戸...の画像はこちら >>

【DHならではのプレッシャー】

 3月22日に行なわれた神戸国際大付(兵庫)と九州国際大付(福岡)の1回戦。神戸国際大付の「3番・DH」で出場した石原悠資郎(ゆうじろう)は、試合後にこう語った。

「打たないといけないというか、打ちたい気持ちが(外野手として出ている時よりも)強くなります。先発の岩見輝晟(らいせ)投手から3三振(1安打)してしまいました」

 さらに、タイブレーク方式で延長に入った10回表。一死二、三塁で打席に立った石原は、岩見を救援した渡辺流(るう)に一塁フライに打ちとられた。

「ベンチの裏などでしっかり体を動かさないと、打席での準備ができない」

 一方の岩見は、昨年秋の神宮大会決勝でも神戸国際大付と対戦し、11対1で下したのだが、その試合でも投手として出場していた。背番号9を背負い、登板しない時はライトを守るなど、打力も兼ね備えるサウスポーだ。しかし、センバツ初戦では投手に専念した。

 8回まで142球を投げ、6安打を許したが、神戸国際大付打線を2点で抑え、期待に応えた。

岩見は言う。

「調子自体はよかったのですが、観客が多くて緊張してしまって......ストライクが入りませんでした。もともと緊張しやすいんですけど。途中からセットポジションで投げるなど、自分なりに修正して、感覚を取り戻そうとしました。(DH制を使って)ピッチャーに専念するんだったら、もっといいピッチングをしないと」

 そう語る岩見だが、マウンドを渡辺に譲ると、DHを解除して7番・ライトのポジションに入った。

 そして延長10回裏、一死二、三塁の場面でこの試合初めて打席に立った岩見だったが、空振りの三振に倒れてサヨナラのチャンスを逃した。

「初めての打席だったので緊張していました。ストライクの球を振れなかった」

 投手としてマウンドに上がっていても、打席での緊張感はまた異なるようだ。いずれにしても、岩見にとってもこれまでにないシチュエーションでのプレーだったことで、普段どおりとはいかなかったようだ。

【ピッチングに集中できる】

 採用されたばかりのDH制のメリットを生かしたのが、神戸国際大付でリリーフとしてマウンドに上がった豊岡速伍(そうご)だ。

 先発した秋田依吹のあと、8回途中からリリーフに立ち、2連続三振でピンチをしのいだ。11回裏にサヨナラ負けを喫したものの、力強いストレートを投げ込んでいった。

 九州国際大付の楠城祐介監督は、豊岡のピッチングをこう評価した。

「豊岡くんの球は『ここまでいいか』と思うぐらいすばらしかった。気持ちが本当に強く出ていたので、『この球を打ち返せるか』という感じで見ていました」 

 その豊岡はこう語った。

「タイブレークになってから、相手がバントで来ると思っていたので、ベンチ前でのキャッチボールの時には、キャッチャーをサードに見立ててバント処理をイメージしていました」

 神戸国際大付は最後までDH制を解除しなかったため、豊岡は打席に入ることなく自分のピッチングだけを考えることができたという。これまでのルールであれば、投手が打席に立つ必要もあるし、好投していても代打を送らざるをえないケースもある。そこが大きな違いだ。

 とはいえ、まだどのチームもDH制の最適解を探している状況だろう。いずれにしても、これまでとはひと味違った戦いが繰り広げられるのは間違いない。

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