GI高松宮記念(3月29日/中京・芝1200m)が引退レースとなるナムラクレア(牝7歳)。関西の競馬専門紙記者が同馬についてこう語る。

「ナムラクレアは、見た目はずいぶんと"オバサン"になりました。若い頃に比べると、顔つきも体形もかなりくずれ加減。何より彼女自身から、"お母さんになりたがっている"という気配が伝わってくるんです。オンナ馬は母になる準備に入ると、体から養分が逃げないようにするために体毛が伸びると言われますが、去年あたりから少しずつそういう様子が見られるようになってきましたね」

 牝馬には競走馬としての現役生活を終えると、繁殖に上がる、というもうひとつの大事な仕事が待っている。見た目的には、その準備がだいぶ整っているようだ。

【競馬予想】高松宮記念がラストランとなるナムラクレア 「4度...の画像はこちら >>
 とはいえ、その牝馬としての本能的なものと、走るための競走能力は、ほとんど別物らしい。

 現に前走のGⅡ阪神C(12月27日/阪神・芝1400m)では、一昨年のGIスプリンターズS(中山・芝1200m)の覇者ルガルに屈したものの、わずかハナ差の2着。メンバー最速の上がり33秒2をマークし、自慢の末脚にはまったく衰えがないことを見せつけた。

 高松宮記念に向けた1週前追い切りでも、坂路でラスト1ハロン11秒7のキレ味を披露。「さすがに能力的な上がり目はないと思いますが、だからといって、年齢からくる衰えも感じられません。高松宮記念でもこれまでのどおりのパフォーマンスを発揮してくれると思います」と、先述の専門紙記者も太鼓判を押す。

 7歳牝馬にして、いまだその韋駄天ぶりに陰りは見えず、GIでの勝ち負けが期待されるレベルにあるナムラクレア。

これまで、あと一歩及ばずに何度となく涙をのんできたが、いよいよ悲願のGI制覇を成すのか、大いに注目される。

 しかしながら、冒頭でも触れたとおり、彼女にとっては今回がラストラン。もはや次がない土壇場の状況にあって、準備を含めてすべてがうまく運んだうえで、実力だけでなく運も必要とされる大一番を制することができるのだろうか。

 ナムラクレアのここまでの戦績は、24戦6勝。うち重賞は5勝。3歳時にはGI桜花賞(阪神・芝1600m)3着という、世代トップレベルの実力を示す結果も残している。

 ただその実績以上に、彼女らしさとして語られるのは、24戦のうち7回もある2着と、6回もある3着について。それも、計13回ある2、3着のうち、およそ半分の6回が短距離GIでの戦績であることだ。

 今回で4度目の挑戦となる高松宮記念では過去3年連続で2着。スプリンターズSでも過去3年連続で3着に終わっている。鞍上は主に浜中俊騎手が務めてきたが、昨年はトップジョッキーのクリストフ・ルメール騎手を配しても、その成績に変わりはなかった。

 春秋のスプリントGIで3年連続、計6回の馬券圏内というのは、すこぶる立派な成績だが、もしナムラクレアに人間と同じ感情があったとすれば、その悔しさはいかばかりだろうか。

着差もほとんどが1馬身以内で、一度くらいは何かしらの作用によって、着順がひっくり返っていてもよかったのに......と思うこともあったかもしれない。

 それにしてもなぜ、ナムラクレアはこれまでGIを勝てなかったのか。先の専門紙記者の見立てはこうだ。

「ひとつ言えるのは、追い込み馬だからです。追い込み馬はどうしても展開に左右されるし、レース中に不利を受けやすい。それを克服するには、展開に恵まれるか、力が他の馬より一枚抜けている必要があるのですが、ナムラクレアにはそのどちらもなかった。そういうことだと思います」

 はたして今回の高松宮記念も、力量的にはトップレベルにあるものの、彼女が抜けた存在というわけではない。となると、またしても他力頼みで、展開におけるラッキーを期待せざるを得ない。

 そこで思い出すのは、昨年のスプリンターズS。8歳馬の大ベテランで、11番人気の低評価だったウインカーネリアンが勝ったレースだ。

 状態がよく、すべてがハマったこともあるが、遅くも速くもない、いわば平均ペースの2番手を追走し、終始"気分よく"走れたことが、ウインカーネリアンが勝てた最大の要因だろう。スプリント戦未勝利で、8歳馬という高齢であっても、自分のペースでリズムよく走ることができれば、大仕事をやってのけることも可能なのだ。

 脚質は真逆だが、ナムラクレアも道中自らのペースで"気分よく"走れて、それがこれまで足りなかった"あと少しのラッキー"を生み出すことにつながれば、悲願達成があっても不思議ではない。

「今回は、スプリンターズSでは逃げなかったピューロマジック(牝5歳)が逃げると踏んでいます。となれば、前が予想以上に速くなって、ナムラクレアにとっては最適な流れが生み出されるはず。ラストランでのGI初勝利も夢ではないでしょう」(専門紙記者)

 3年連続2着の高松宮記念。ナムラクレアが"4度目の正直"を果たし、有終の美を飾る姿を見届けたい。

編集部おすすめ