MLBのサムライたち~大谷翔平につながる道
連載29:福留孝介
届かぬ世界と思われていたメジャーリーグに飛び込み、既成概念を打ち破ってきたサムライたち。果敢なチャレンジの軌跡は今もなお、脈々と受け継がれている。
MLBの歴史に確かな足跡を残した日本人メジャーリーガーを綴る今連載。第29回は稀代の左打者・福留孝介を紹介する。
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【歴史に残る衝撃の「デビュー戦」】
福留孝介のメジャーキャリアは、最大のハイライトがデビュー戦に訪れたという点で特徴的だ。1999年に日本プロ球界入りし、NPBを代表する外野手になった福留は、FA権を得た2007年12月に4年4800万ドル(当時のレートで約53億円)の好条件でシカゴ・カブスと契約。そして1年目の開幕戦となった3月31日のミルウォーキー・ブルワーズ戦に、5番・右翼手として出場する。その試合で"歴史的なデビュー"と称されるほどの大活躍を見せたのだ。
2回、メジャー初打席で右腕ベン・シーツの初球を中越え二塁打にすると、第2打席は四球、第3打席は中前打と出塁を継続。すると0―3とリードされて迎えた9回裏、無死1、2塁のチャンスでサイ・ヤング賞投手の守護神エリック・ガニエから中越えの同点3ランを放ち、超満員の地元ファンをいきなり熱狂させたのだった。
「厳しいファンの方が多いと聞いているなかで、声援を受けたというのは、今日という日は僕にとっていい日だったなと思います。非常にうれしかったですね」
初本塁打直後は大歓声を浴びてカーテンコールにも応えた福留だったが、結局チームは延長の末に敗れたとあって、試合後は淡々としていた。ただ、3打数3安打1本塁打1四球3打点という活躍は、衝撃的であったことに変わりはない。ニューヨーク・メッツの一員だった松井稼頭央のメジャーデビュー戦もすごかったが(2004年4月6日の開幕戦・対アトランタ・ブレーブス戦で初球を先頭打者本塁打にし、3打数3安打1本塁打1四球で勝利に貢献)、ホームゲームだったこと、本塁打が最終回に飛び出した起死回生の一発だったことを考慮すれば、やはり福留の初戦こそが"日本人メジャーリーガー史上最高のデビュー"だったのではないか。
【苦しみ続けたメジャーへの適応】
もっとも、福留のメジャーキャリア全般を振り返ると、苦しい時期が続いた印象が残る。
「守備、走塁、選球眼のよさなど、ビッグリーグ(MLB)でも通用するだけのツールを持ったアスリートだった。打撃面では(ストライク)ゾーンのコントロールができる選手だった。しかし、スイングのアジャストメントの能力が物足りなかった。左投手にも弱かったため、それによって評価は頭打ちになってしまった」
当時の福留のプレーを知るメジャーリーグスカウトは、そう分析する。それはおそらく的を射ていたのだろう。投手のエンジンがかかっていない4月は毎年のように好スタートを切り、一定の好調期間はあるものの、それをシーズン通じて維持できなかった。2年目以降はルーキーイヤーと同等の成績に止まり、なかなか上昇する機運を生み出すことができなかった。同じパターンを数年にわたって続けたわけだから、適応能力に疑問が呈されても仕方がない。
2011年途中にクリーブランド・インディアンスにトレードされ、2012年はシカゴ・ホワイトソックスに移籍後、最後はヤンキースともマイナー契約を結ぶが、メジャー昇格は叶わなかった。
このような終焉はやはり寂しいものではあった。日本では合計1952安打、285本塁打を打った福留が、メジャーでは時間をかけて壁を破れなかったという現実はMLBのレベルの高さを物語っているのだろう。そして、それほどに難しいステージであるからこそ、あらためてあのデビュー戦での爆発がひと際輝かしく、懐かしいものとして胸に迫ってくる。
1年目の開幕戦以外にも、アメリカでのゲームで福留が強烈な輝きを放った瞬間がもう一つあった。2006年に行なわれた第1回のワールドベースボールクラシック(WBC)、韓国と対戦した準決勝では0―0で迎えた7回1死二塁の好機に代打で登場。この大会ではこの瞬間まで不振にあえいでいた福留は、ここで右越えに先制2ランを叩き込み、まさに伝説的な1スイングで侍ジャパンの優勝に大きく貢献したのだった。
思えばアメリカでの福留はビッグゲーム・プレーヤーだった。いくつかの強烈なハイライトシーンとともに、その名は記憶されていく。メジャーリーグでのキャリアが"成功"と呼べるものではなくても、シカゴのファンと侍ジャパンの支持者を熱狂させたこれらの鮮やかな記憶が色褪せることは、これから先もないはずである。
【Profile】ふくどめ・こうすけ/1977年4月26日、鹿児島県出身。PL学園高(大阪)―日本生命―1998年NPBドラフト1位(中日)。
●NPB所属歴(19年):中日(1999~2007)―阪神(2013~20)―中日(2021~22)
●NPB通算成績:2023試合出場/打率.286/1952安打/285本塁打/1078打点/29盗塁/出塁率.379/長打率.486
●MLB所属歴(5年):シカゴ・カブス(2008~11途/ナ)―クリーブランド・インディアンス(2011/ア)―シカゴ・ホワイトソックス(2012/ア) *ア=アメリカン・リーグ、ナ=ナショナル・リーグ
●MLB通算成績:レギュラーシーズン=596試合出場/打率.258/498安打/42本塁打/195打点/29盗塁/出塁率.359/長打率.395 プレーオフ(1年)=11試合出場/46打数/14安打/打率.304/1本塁打/8打点/出塁率.359/長打率.395
●主な日本代表歴:1996年アトランタ五輪(2位)、2004年アテネ五輪(3位)、2006年WBC(優勝)、2009年WBC(優勝)










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