次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線 第2回
東海大熊本星翔・福島陽奈汰
春のプロ野球キャンプでは、おもなメニューは午後3時頃に終了し、あとはいわゆる「自主練習」という段取りのチームがほとんどである。2月といえどもまだ明るい時間、こんな時間から引っ込んでしまうのはもったいない。
なので、そこから近隣の高校のグラウンドに伺うことにしている。とりわけ、今年の九州の高校野球は人材豊富と聞いていた。そこで、今春の選抜出場が叶わなかった大器、逸材たちを訪ねて、その練習ぶりを目の前でじっくり拝見してレポートする。
【昨夏の甲子園では7打数4安打の活躍】
いくつかの事情が重なって、今年の宮崎キャンプ取材は福岡から宮崎までレンタカーでの移動となった。「ならば!」と、九州道で一路南下の途中に高校生を取材できないものか。そこで気になって仕方なかった東海大熊本星翔高(熊本)の有望遊撃手に会うことになった。
その逸材とは、福島陽奈汰(3年)。名前は「ひなた」と読む。
2023年のドラフトで阪神から4位指名された百﨑蒼生(ももさき・あおい)と入れ替わりで入学し、すぐに二塁手のレギュラーに抜擢。昨年夏の甲子園では「1番・遊撃」で出場し、エネルギッシュな走攻守を披露しただけに、ご存じの方も多いことだろう。
北海高(南北海道)、県岐阜商(岐阜)との2試合で7打数4安打。北海戦では右打席から左翼線へ弾丸ライナーで運ぶ二塁打に、無死一、二塁から三塁前へのバント安打、そしてカーブをうまく引きつけてセンター前と、3安打4得点でチームを甲子園初勝利に導いた。
175センチ73キロの体に内在しているスピードと瞬発力、そして野球勘に目を奪われたものだ。
昨夏の甲子園、通路のモニターで見ていた福島の打席。バットを構えた姿がピタッとハマっていて、その形がいい。なかでも目を引いたのはグリップだ。握りは強すぎず、かといって緩すぎもしない絶妙な力加減。そのため、インパクトの瞬間にしっかりとバットを絞り込むことができていた。
金属バットの影響か、強く握りすぎて、バットコントロールが窮屈になっている打者が増えたなか、見るからに心地よさそうな構えだ。
【指揮官も認める"プロ仕様"の素材】
マシンでのバッティングが始まる。スピードは135キロ前後。外野に向かって、広角に低い角度の打球が次々と飛んでいく。引っ張った打球でも、左サイドにカベができているから、打球が切れずに真っすぐ伸びて距離が出る。
こちらから逆方向へのバッティングをリクエストすると、次のスイングでセンターおよそ120メートルの右中間フェンスに直撃させてみせた。25本打って、引っかけた打球やポップフライなどの打ち損じは4本だけ。直球だけとはいえ、2月にこの精度はすでにプロレベル。
「自分、バッティングは球種を張らないんです。来るボールに対して、体が勝手に反応して打つ。そのほうが、自分としては自然で結果もいいんです。逆に、配球を読んで特定の球種を待つと、力んでダメなんです」
守備では、ゴロに対しての初動のスピードに目を奪われる。細かいフットワークが多い。
「小学6年までソフトボールでショートやっていたんです。ソフトボールは塁間が短いので、待って捕ったら間に合わない。打球に対して常に前へ攻めて、捕って即ジャンピングスローみたいなのがふつうでした」
それを聞き、昨夏の甲子園で思い出したシーンがある。投手のはじいたゴロに瞬時に突っ込み、捕るなり下から投げてアウトにしたプレー。あれが幼い頃からソフトボールで身につけたメカニズムなのか。
「逆に、イレギュラーにグラブがうまく反応できない時があって......」
前夜の雨で、グラウンドが荒れ気味だった取材当日、確かにそんな場面が何度かあった。
「肩は文句なしだと思いますね。ピッチャーをやっても、140キロ台後半はふつうに出ますから」
東海大熊本星翔の野仲義高監督も、福島のスローイングに太鼓判を押す。
強肩強打、それに福島は「俊足」という武器も兼ね備えているから、相手からすればたまったものではない。
「以前は後方へ蹴ることばかりを意識して走っていたんですけど、この冬にトレーナーさんに直してもらって、自転車をこぐ時のように、ヒザを上げて前へ大きく回転させる感じの足の使い方にしました。それまで50メートル走は6秒4~5でしたが、今は6秒1ぐらいでいけると思います」
低いトーンの控えめな語り口でも、うれしい話題の時は、パッと笑顔の花が咲く。
【台湾遠征で受けたカルチャーショック】
昨年末、福島は「九州選抜チーム」の一員として、台湾遠征を経験した。「一番びっくりしたことは何?」と聞くと、福島は「野球のプレーのことじゃなくてもいいですか?」と言って、こう答えた。
「神村学園(鹿児島)の梶山(侑孜/3年)と田中(翔大/3年)なんですけど、台湾での空き時間の時にほかのメンバーは寝たり、スマホをいじっているなかで、あのふたりだけは一生懸命野球ノート書いていたんです。
プロ志望の福島にとって、強烈なカルチャーショックだった。
「グラウンドだけじゃなくて、普段の心がけから変えていかないと......」
経験は人を変えていくという。野仲監督も、最高学年を迎える福島に期待を寄せる。
「フィジカルの数値は、すでに百﨑を超えました。あとは、百﨑のような外向きのエネルギーでチームを引っ張っていってくれる迫力みたいなものが出てくるとうれしいんですけどね」
百﨑は高校時代、球場中に響き渡るほどの大声を張り上げ、躍動感MAXでプレーしていた。はたして「百﨑2世」は、その大先輩にどこまで近づくことができるか。心がけひとつで、人は変わることができる。










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