この記事をまとめると
■イギリスには大小さまざまな自動車メーカーが数え切れないほど存在する■スポーツカーやスーパーカーを生産しているメーカーが多い
■メーカーの規模は大きくなくとも日本にも導入されていたモデルも散見される
イギリスに存在する自動車メーカーは数え切れず
今回も「知っている人は相当なカーマニア」的存在の自動車メーカーを紹介する。 今回のスタートは、いわゆるバックヤードビルダーまで含めれば、その数は数えられないほどとも言われるイギリスのメーカーから。
イギリスというのは、北からスコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドから構成されているわけだけれど(ほかの海外領土に自動車メーカーはないと信じたい)、まずスコットランドには1社のみメーカーが存在する。
それは2019年に設立されたオフロードカーメーカーの「マンロー・ビークルス」。2モーターのBEVとして主流である磁束モーターではなく軸流モーターを、そして軽量なアルミニウムボディを採用するマンローには、すでに世界各国からオーダーが寄せられており、彼らは1981年にプジョー・タルボがスコットランドの地を去って以来、初の自動車メーカーとなる。
それではカルト自動車メーカーの宝庫とも言われるイングランドに話を進めよう。まずはその知名度がかなり高いのは「ボクスホール」。同社はかつて独自にスポーツカーなどを製作していたが、1925年にはアメリカのGM傘下に入り、さらに1970年以降はドイツのオペル傘下で大衆車のOEMブランド車を生産するメーカーとなった。

1973年設立の「ケータハム」は、ロータス・セブンの生産中止後に、その継続生産を引き継いだメーカー。こちらも日本には多くのファンがいるが、このケータハムと同様に、いわゆるセブン・レプリカを製作していた「ウエストフィールド」とは、当然のことながら両社の間で裁判が起きる。結局はセブン・レプリカの生産は和解という形で決着し、ウエストフィールドは現在でも独自のセブン・レプリカの生産を継続。ロータス・セブンの人気がいかに高いかを物語るひとつのエピソードだ。

イングランドのウエスト・ヨークシャー州リーズにある「ジネッタ・カーズ」も、スポーツカーのファンには良く知られるメーカーだ。1980年代の末には資金不足から一時その活動を停止してしまうが、2000年代に入り復活。再びスポーツカーの生産とモータースポーツへの積極的な活動を復活させた。

同様に経営破綻から新たな経営者を得て復活した伝統のブランドといえば、ウォリスウッド州サリーの「TVR」があるが、こちらは2017年に新型車の第3世代グリフィスを発表したあと、いまだに動きがない。

イギリス人でも知る人は少ないと言われるブランドが、ロンドンに1軒のみ販売ディーラーを持つ「ブリストル」。高級車の市場にありながら、それをあえて重視せずに実用性や機能性を重視しているのは、その前身がブリストル・エアロプレーン、つまりは航空機会社だったことが大きく影響している。

第二次世界大戦後にはブレーザー・ナッシュ車の生産を行うが、その関係は2011年になって資金不足から従業員の解雇を行わなければならなくなった時に、ブレーザー・ナッシュ・リサーチとの関係が、その親会社であるスイスのカムコルプ社を介して復活。現在ではこのカムコルプ社傘下でファイターTの生産が行われている。
クルマが文化として根づくイギリスはスポーツカーが豊富
ミッドシップのスーパーカーを生み出したメーカーとして忘れてはならないのは、「アスカリ・カーズ」と「ノーブル・オートモービル」だ。正確には前者はすでに2010年以降、新型車の生産は行っていないが、そのメンテナンスやカスタマーのサーキット走行のサポートなどはまだ継続している。

一方のノーブルはレスター州のバーウェルがその本拠地。それ以前にもさまざまなスポーツカーの設計に携わっていたエンジニアのリー・ノーブルが、自らの名を掲げたノーブル・オートモーティブを設立したのは1998年。ファーストモデルとなったのはM12 GTOで、その人気の高さから遠く離れた南アフリカに生産拠点を増設。

サマセット州クルーカーンの「アリエル・モーターカンパニー」は、まさに現代のロータス・セブンともいうべき、軽量で高性能なスポーツカー、アトムを少量生産しているメーカーだ。ちなみにアリエルといえばバイク・メーカーが有名だが、両社の間には一切の関係はない。

アトムの成り立ちは非常にシンプル。ホンダのシビック・タイプRなどのパワーユニットを搭載し、ボディの外皮を持たないため、車重は500kg以下に抑えられている。また、2022年にはガスタービンを搭載し、それによって発電した電力で1217馬力を得るハイパーカーも発売。自動車メーカーとしての規模は非常に小さいものの、その革新的な技術への取り組みは大いに評価しなければならないだろう。

かつて2004年に0-100マイル加速のワールドレコードを樹立したのは、2019年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに、ウルティマRSをエントリーし、その圧倒的なパフォーマンスで観客を驚かせてみせた、レチェスター州ヒンクレイの「ウルティマ・スポーツ」。そのRSをコアモデルに、エボリューションクーペや同コンバーチブルなど、生産車のバリエーションは幅広い。

ピーターボロー州ウエストウッドの「ラディカル・スポーツカーズ」も、カスタマーのサーキットユースにフォーカスをあてたスポーツモデルを数多く生産している。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのラップタイム記録への挑戦でも知られるメーカーだが、自らイギリスやアメリカ、オーストラリアなどでワンメークレースを主催するなどの活動も、多くのファンを生む原動力となっている。

「グリナル・スペシャリスト・カーズ」。この会社の名前も、おそらくは日本ではごく一部の人が知るところ。このメーカーが現在おもに生産しているのは、前に2輪、後に1輪というトライク(3輪車)のスコーピオンⅣ。1990年代初めにその開発がスタートしたこのモデルには、アウディ製やBMW製などのエンジンが組み合わされた。

さてここからは自由と正義の国、アメリカに話を進めたいところなのだが、さすがにこちらも話は長くなる。というわけで再びの小休止。ちなみにアメリカ車の有名なブランドでも、すでに廃止されたもの。例えばGM系ならば、「ポンティアック」や「オールズモービル」、「ジオ」、「ラサール」、「サターン」、「オークランド」、「エルモア」などというブランドには触れないのでご安心を。
それでもいくつあるのだろう。アメリカの自動車メーカー(ブランド)って。まあそのなかからマイナーなものを選択すればいいのだから、少しは気も楽になってきたけどね。続く。