この記事をまとめると
■ブガッティはイタリア人エンジニアのエットーレ・ブガッティによりドイツ・アルザスで創業された



■第2期ブガッティはイタリア人実業家ロマーノ・アルティオーリがイタリアのモデナに設立



■VWグループ傘下となった第3期ブガッティは創業の地であるフランスのモルサイムに本社を置く



イタリア人がドイツの地で創業したブガッティ

驚くべきプライスタグを掲げるハイパーカーを生産する現在のブガッティは、ドイツのVWグループに属するメーカーだ。ブガッティの歴史は長く、創始者であるイタリア人エンジニアのエットーレ・ブガッティが、同社を設立したのは1909年の話だから、すでに1世紀以上の時間が流れている計算になる。



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ただし、この間ブガッティには活動を停止していた時期もあり、またそこからの復活にさまざまな人物が関連したことから、話はやや複雑になる。

ちなみにブガッティって、どこの国の自動車メーカーなのか。親会社がVWならば、当然のことながらドイツのメーカーに違いない。そう考えるのも自然な思考ではある。



そもそもエットーレ・ブガッティが1909年にブガッティ社を設立したアルザスの地は、当時はドイツ領だった。ここであえて「当時は」と書いたのは、このフランスとスイスに国境を接するアルザスは、戦時下では常に標的とされる不安定な地域。そのモルスハイムに本拠を構えたエットーレは、そこで高性能なエンジンを搭載する自動車を数多く設計し、ロードカーのみならずグランプリレースの世界でもブガッティの名を広く世界に知らしめたのだった。



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ブガッティのグランプリカーの走行シーン



だが、第二次世界大戦でドイツが敗北すると、アルザスは一転フランスの領土となり、モルスハイムという本社のある地名の発音も、正確にはモルサイムへと変わってしまった。エットーレは、一度は完全に破壊された工場を復活させ、そこで細々と航空機用エンジンの製作などに携わるが、1947年に他界。ブガッティの第1期、すなわち好まなくともドイツとフランスに本社を置くことになった時代は、ここで一度終わりを迎えたのである。



現在のブガティはVW傘下のフランス車

そのブガッティというブランドが突如復活したのは1987年のことだった。イタリア人実業家のロマーノ・アルティオーリが、イタリアのモデナにブガッティ・アウトモビリを設立。1991年にはエットーレ・ブガッティの生誕110周年を記念したスーパースポーツのEB110GTを発表し、翌1992年には高級4ドアサルーンのスタディモデル、EB112を披露するなど、その創立直後の活動は話題性に富んでいたが、結果的にアルティオーリの過剰な投資のために経営は破たん。

154台のEB110シリーズを生産したのみで(諸説あり)、1995年に倒産した。ちなみにこの時代、すなわち第2期ブガッティはイタリアのメーカーだ。



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ブガッティEB110のフロントスタイリング



そして1998年になると、ブガッティはVWの傘下に収められることになる。本社が置かれたのは第1期ブガッティが幕を閉じた場所でもあるフランスのモルサイム。コンセプトカーではW型18気筒エンジンの搭載を提案し、実際のプロダクションモデルではW型16気筒+4ターボエンジンでオーバー400km/hの最高速を達成してみせた第3期ブガッティ。



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ブガッティ。ヴェイロンのフロントスタイリング



参考までに現在の本社施設は、エットーレが1856年に近隣のドリスアイムの地に建設したゲストハウスがそのまま使用されている。隣接する本社工場はアトリエと呼ばれ、ここから世界最高級の工業製品たるブガッティ車が世界にデリバリーされていくのだ。すなわち現在のブガッティはフランス車ということになる。



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ブガッティの本社ゲストハウス



だが、ブガッティの周囲にはこれからもさまざまな動きが待ち構えている。そのもっとも大きな話題はクロアチアのザグレブに本社がある、リマックとの合弁会社設立が決定したこと。この合弁会社ではリマックが55%、ポルシェが45%の株式を保有する条件となっている。ブガッティによれば、今後もブガッティ車の生産はモルサイムで継続されるとのこと。

また、長期的にはリマックとの共同開発によるニューモデルの誕生も否定されてはいない。



常にさまざまな話題を提供してくれるブガッティ。彼らからの次なるフランス発の話題は、はたしてどのようなものなのだろうか。

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