この記事をまとめると
■フェラーリ328GTSをベースにした「コンシソ」は「世界一醜いフェラーリ」といわれる



■とはいえ走るためのモディファイは決して奇をてらっただけのデザインワークではない



■ノーマル328から大幅に軽量化が施されたその走りはかなり軽快……なはず



フェラーリ328GTSがベースとは思えない醜さ

ピニンファリーナという希代のカロッツェリアから送り出されたフェラーリに飽き足らず、魔改造に等しいカスタムを施してしまうのは人間のサガかもしれません。懐かしいところではケーニッヒやザガート、ニューフェイスだとRevoZportやミーシャデザインなんて果敢な挑戦者には事欠きません。



そんな懲りない面々の中でも「もっとも醜いフェラーリ」という烙印を押されてしまったミヒャラク・コンシソ(Michalak CONCISO)は、確かに個性的ではあるのですが理に適ったフルカスタムであり、醜いという評価はちと厳しい気がします。



このゆるキャラがフェラーリってマジか! 「世界一醜いフェラー...の画像はこちら >>



ミヒャラク、聞き覚えのないデザイン・ファクトリーですが、彼らが1993年にコンシソをデビューさせた当時もほぼ無名に近い存在だったようです。しかし、ドイツ国内の小さなモーターショーに出品されたコンシソは、知名度とは反比例した反響を得ました。筆者も初見で感じたのですが、1989年の東京モーターショーに出品されたピニンファリーナの傑作「フェラーリ・ミトス」との類似性というか、一脈通じるスタイリングはかなり魅力的に映ったものです。



実際、有力なブローカーがすぐさま買い手を見つけ出したそうです。アメリカ人コレクターが手に入れたとのことですが、この辺りのディテールは明らかになってはいません。



コンシソは、フェラーリ328GTSをベースにしていますが、強いて共通項を探すとしたらオープンルーフを採用していることくらいでしょうか。それとても、GTSはデタッチャブルルーフが付属しますが、コンシソにはソフトトップはおろか屋根と呼べるものは一切用意されていません。そればかりか、ドアすらも省略されており、乗員は太いサイドシルを跨いで乗り込む仕様となっているのです。



このゆるキャラがフェラーリってマジか! 「世界一醜いフェラーリ」の称号を得た「コンシソ」とは
フェラーリ・コンシソのコクピット



あのミトスでさえ、言い訳程度のドアがあったのですから、ミヒャラクの割り切り、潔さはいまでも驚きを禁じ得ません。それもそのはず、ミヒャラクによればコンセプトは「スポーツカーはアスリートであるべき!」というストレートなもの。聞き覚えのあるようなモットーではありますが、多くのカスタムファクトリーが目指しても、なかなか実現することができなかったわけですから、有言実行という面だけでも評価に値するかと。



走るためのモディファイと考えればアリ!?

とはいえ、履きふるしたサンダルかのような平たいボディ、クルマに轢かれたカエルのようなフロントフェイス、それでいてミッドシップ特有のタイヤ配置など「個性的」「ユニーク」といったボキャブラリーではカバーしきれません。



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フェラーリ・コンシソのフロントエンドのサイドビュー



それゆえ、後に「もっとも醜い」なるレッテルが貼られてしまうのですが、これらはスポーツカーをアスリートのようにストイックに走らせるためのモディファイ。決して奇をてらっただけのデザインワークではないのです。



たとえば、328のウェストラインから上をきれいさっぱり省いたことで、低重心化を図ることができるでしょう。もともと、エンジンの搭載位置が低くはない328の動的ネガを潰せること間違いありません。また、ブサイクに見えるフロントセクションも、重心から遠い部分の軽量化を目指したものと思われ、これまた運動性、とりわけ回頭性を大幅に向上させてくれるはず。



このゆるキャラがフェラーリってマジか! 「世界一醜いフェラーリ」の称号を得た「コンシソ」とは
フェラーリ・コンシソのサイドビュー



そして、正確な寸法も不明なので推測しかできませんが、タイヤの位置もいくらか変わっていそうです。具体的には328よりもフロントのトレッドを狭くして、リヤは拡幅傾向ではないでしょうか。これは、ミッドシップパッケージの方向性としてより過激なものとなり「アスリート」としてサーキットを走るにはドンズバなセッティングにほかなりません。



このゆるキャラがフェラーリってマジか! 「世界一醜いフェラーリ」の称号を得た「コンシソ」とは
フェラーリ・コンシソのリヤスタイリング



さらに、コンシソのアドバンテージとして見逃せないのが、屋根やドアを省き、電装やアメニティ装備も厳選した結果、ノーマル328から30%もの軽量化を実現しているところでしょう。1273kgとされているノーマル車重が、ざっと見積もっても900kgを割るかもしれないのですから、どう考えても「痛快な乗り物」になっていることは間違いありません。



これまた推測でしかないのですが、メインのチューブラフレームは生かしつつもフロントとリヤのサブフレームは新造、または相当な軽量化がなされているのではないでしょうか。一口に300kgの軽量と言っても、ドアや屋根を外したくらいで賄いきれるものではないでしょう。

実際の走りは別にしても、ミヒャラクの底力やセンスを感じさせるのは、こんな細部にありそうです。



このゆるキャラがフェラーリってマジか! 「世界一醜いフェラーリ」の称号を得た「コンシソ」とは
フェラーリ・コンシソのチルトカウル



ともあれ、ここまでお読みになってもコンシソと328、どちらを選ぶかと聞いて前者と答える方は決して多くはいますまい。かくいう筆者だって、もちろん328を選びます。多少、運動性能が見劣りしたとしても328は文句なしに「カッコいい」のですから。

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