この記事をまとめると
■22世紀のショーファーカーの新しい姿として新型センチュリーがデビュー■新型がデビューしても従来からのセダンタイプも併売が続けられる
■「フォーマルなのはセダン」という考えを今後の10年で新型センチュリーが塗り替えるかもしれない
新型センチュリーが戦わなければならないのは他のSUVではない
トヨタが新型センチュリーを発表した。開発者は「SUVのセンチュリーを作ろうとしたのではなく、ショーファーカーとしての理想的なパッケージを追求した結果として、SUV的なフォルムになった」といった説明をしているが、それでもセンチュリーSUVといった表現で呼ばれることも多い。
いくら新型センチュリーが「次の100年を見据えた新しいショーファーカーのカタチ」と主張しても、従来モデルがセンチュリーセダンとして併売される限り、セダンとSUVの2タイプをラインアップするという風に見られてしまうのは仕方がない。
そして、新型センチュリーのスタイリングから、ライバルはベントレー・ベンテイガやロールスロイス・カリナンといった超プレミアムブランドのSUVモデルと思われがちだ。メルセデス・マイバッハGLSも比較対象となるかもしれない。

しかし、新型センチュリーにとって本当のライバルといえるのは「TPO」や「マナー」、「ドレスコード」に「プロトコール」などの社会的な認識であると筆者は思う。
シチュエーションに合わせた服装をまとうドレスコードが存在していることは知っている方も多いだろう。服装でいえばカジュアルやセミフォーマル、フォーマルといったものだ。たとえば、結婚式であれば参列する人はセミフォーマルでいいが、媒酌人や仲人となるとフォーマルが求められることもある。
フォーマルにふさわしいショーファーカーを目指す新型センチュリー
同様に、シチュエーションによっては、VIPが乗り付ける車種についてもセミフォーマルとフォーマルのようなドレスコード的な選択が求められるケースもある。

たしかに高級ミニバンがショーファーカーとして世間的には認められつつあるが、すべてのシーンにおいてミニバンで問題ないかといえば、ミニバンはセミフォーマル的な位置づけということで、まだまだフォーマルが求められるときにはセダンであるべきといえるケースもあるだろう。
たとえば、葬儀のようなシーンを考えると、男性が弔問するのであれば略礼服(ブラックスーツに黒ネクタイ)で問題ないわけだが、これが喪主を務めるとなると、男性の場合は正礼服(モーニング)が求められる。
モーニング姿の喪主にふさわしいのは、やはりセダンであって、ミニバンというのはドレスコード的には認められないと判断する人もまだまだ少なくはないだろう。そうした判断基準からすると、新型センチュリーのスタイリングというのは、従来型のフォーマルとしては認めがたいという見方もできる。
だからこそ、新型センチュリーが登場した後も、セダンのセンチュリーが継続販売されるといえる。

それこそが、新型センチュリーが新世代ショーファーカーとして認められるかどうかのポイントであり、新型センチュリーが真の意味でセンチュリーの伝統を継承するための大きなハードルになるといえる。
もっとも、ほんの10年ほど前まではミニバンをショーファーカーに使うことが一般的ではなく、VIPが乗っているというイメージもなかった。しかし、いまではミニバンはショーファーカーのひとつとして認められている。

フォーマルな場にふさわしいショーファーカーとして新型センチュリーのような2BOXスタイルが認められるようになる日は意外に早く来るかもしれない。そうなれば、センチュリーセダンは役割を終え、新型センチュリーに完全にバトンを渡すことができるはずだ。