この記事をまとめると
■ドリフト走行はモータースポーツジャンルの一種となっている■趣味でドリフト走行を楽しむ人も多い
■この記事ではゼロから挑戦する場合の手順や費用を解説している
一般人の趣味レベルでもドリフトには挑戦できる!
その昔、1990年の後期頃に始まった「ドリフト」は、今やモータースポーツの1ジャンルとして世界的に認知されるまでになりました。今の50~60代の人たちのなかには、夜に湾岸地域の工場地帯に出掛けてシルビアやハチロクがケツを流しては振り返しているのを喜々として観に行っていたという人もいるでしょう。
そんなドリフトの始まりは、峠の走り屋のいちスタイルとしてでした。
そこから発展した「D1選手権」は、クルマ遊びに夢中になった人たちの“お祭り”ですが、その迫力や華麗なマシンコントロールに魅力を感じた人のなかには、広い駐車場などでこっそりケツを流してみたりしてみた経験のある人もいるでしょう。スポーツ系の車種に乗っている人の中には「サーキットに行ってみようかな」、と思った人もいるかも知れません。では実際にドリフトにトライしてみたいと思ったとき、どんなカスタムをしたら良いのか? その費用はいかほどなのか? 気になるその辺の条件をちょっと見てみましょう。
どんな車種がドリフトに向いているのか?
まずはどんなクルマで挑戦するのか、という話から。ズバリもっとも適したクルマは“軽量なFR車”です。車種で言うと「AE86」や「ロードスター」、もっと古いクルマだと「KP61スターレット」などが代表的なところです。

軽量さが良いのは、ヘボいタイヤでも楽しく走れる点と、操作が失敗したときのリカバリーが容易なところ。FRが良いのは、スライドが長く維持できる点です。FF車でもドリフトは出来なくはありませんが、コーナー後半までスライドさせるのはかなり難しいです。現行車で言うと「トヨタGR86」でしょうか。

続いては“ハイパワーなFR車”です。中心になるのは2リッタークラスのターボ車です。シルビア系(S13、14、15、180SX)や、スカイライン、RX-7、マークII 3兄弟などが主な車種ですね。車体は重くなりますが、エンジンの馬力があるので、豪快なドリフトが魅力です。速い速度で白煙モクモクの走りはハイパワー車でないと実現できません。

あとは、ちょっと特殊系になりますが、ハコスカやTE27などの旧車でドリフトを楽しむ人も少ないながらいますし、FRの変わり種として軽トラやハイエースなどの貨物系でギャラリーを湧かせる人たちもいます。ただそれらのクルマはドリフトに向いた車両とは言えないので、よほどこだわりを持っているのでなければオススメしません。
それと、クルマの特性の話ではないのですが、もし長く続けるなら外装パーツが調達できるという点も重要です。夢中になってくると、コースアウトしたり追走(並んで走ること)したくなったりするので、ぶつけて壊す確率が高くなります。バンパーやフェンダーなどの外装部品が中古で安く入手できる車種はお財布に優しいので長く続けられるというワケです。

ドリフト「しやすい」クルマへの基本的なカスタムと費用
車種が決まったら走りの準備をしましょう。まずはタイヤです。純正のタイヤは安全マージンが高めの設定なので、ドリフトを楽しむにはグリップが高すぎる場合が多いんです。

タイヤとホイールの標準的な費用は、タイヤ代が1本7千円×4=2万8千円。ホイールは中古で4本2万円くらいで入手できるので、合計で5~6万円といったところでしょう。
基本的に“お試し”程度ならタイヤの変更である程度のドリフトチャレンジはおこなえると思いますが、それでドリフトに目覚めてしまった場合は、もう少し車体のカスタムをすることで、操作がより楽しくなります。
まず車体の動きを固めることです。ロールやピッチングなどの挙動も抑えられるので、操作への反応が良くなり、自分の思い通りに動かせられるようになります。換えるパーツは前後のダンパーで、いわゆる“車高調”というやつです。正確には「車高調整式ダンパー」と言い、その名のとおり車高を調整できる機能が付いています。

この機能を使って車高を下げてやることで、車体の挙動が抑えられるのです。
車高調の導入費用ですが、今はだいぶリーズナブルな物が出ているので、下は1台分10万円台前半から、上は数十万円まであります。
続いて操作系のパーツに目を向けていきましょう。まずはステアリング。ノーマルでも出来ないことはありませんが、エアバッグ付きのモッコリしたものだと、素早い操作のときに指が当たったりしてよろしくありません。細身のスポーティなタイプに交換することで、それがかなり解消されます。直径や太さの他、ドリフト用にグリップ部が手前にオフセットされた物もあるので好みに合わせて選びましょう。価格はステアリングボスとセットで3万円くらい見ておけば選択肢は多いと思います。

次はサイドブレーキです。ケツを振るきっかけにサイドブレーキでリヤタイヤだけロックさせるのは普通に使われる方法です。そのときにいちいちボタンを押して解除していては煩わしいことこの上ないので、普段はフリー状態で固定したいときだけ操作するように出来る「スピンターンノブ」というパーツがあります。

あと室内でいうと、「4点式シートベルト」があるといいでしょう。車体を左右に振り返したり、ブレーキの直後にアクセル全開したりするので、室内もぐわんぐわんしています。身体をある程度固定してくれるベルトがあると、操作に集中できるのでオススメです。あとは単純にクルマをぶつけたときに守ってくれるのも安心です。価格は、数千円の安い品もあるようですが、命を守る部品と考えるとメジャーなメーカーのものが良いと思いますので、1万円後半くらいは見ておいたほうが良いと思います。

本気になってきたらシートも“フルバケットタイプ”に交換した方が良いと思いますが、価格が数万円~となりますので、初めのうちは純正シートで頑張ってみても良いのではないかと思います。
あと、車体のカスタムとは別に必要な装備として、ヘルメットとグローブはサーキット走行には欠かせません。価格はヘルメットが2万円~、グローブが5千円~という感じです。

サーキット走行の際には、ある程度の工具もあったほうが良いでしょう。ボックスレンチのセットや、フロアジャッキ、作業用のグローブなどなど。

費用面をまとめてみると、お試しのタイヤのセットだけなら5~6万円+ヘルメット&グローブの2万5千円で約8万円ほど。そこからハマってしまった場合は足まわりや操作系の装備など用意するのでイッキに増えて30万円くらいになります。
サーキットの走行費用ってどれくらい?
最後に簡単にサーキットの走行費用を紹介しておきます。もっともお手軽なのは、ショップやオーナーズクラブなどが催している“走行会”に参加することです。費用は1万5千円くらいからあるようですが、場所や参加人数によってまちまちです。走行会の良いところは、初心者でもいろいろ教えてくれる人がいるので心強いのと、ぶつけてしまったときにも助けてもらえる可能性が高い点です。
