この記事をまとめると
■自動車教習所の指導要領にハンドルの持ち方に関する明確な規定はない



■正しい運転姿勢で各運転装置を操作するためハンドルの持ち方は10時10分から8時20分の間とすることが多い



■ステアリング形状や機能からハンドルの持ち位置を考えると9時15分あたりを基準にするのがベストだ



ハンドルの持ち方に決まりはない

クルマのハンドルの持ち方には、さまざまな意見があるため、どれが正解なのか悩む方も多いでしょう。では、運転免許を取得する際に通うことが多い自動車教習所では、どのように教えているのでしょうか。今回は、教習指導員の資格を保有し、教習所での指導経験もある筆者が、ハンドルの持ち方について解説します。



厳密な規定がないハンドルの持ち方

まず結論から言ってしまうと、教習所の指導要領にハンドルの持ち方に関する明確な規定はありません。



警察庁が公開している「指定自動車教習所の教習の標準」によると、普通自動車の教習では、基本操作及び基本走行(第1段階)の最初に運転装置の操作方法について教習します。



具体的には、教習項目「1.車の乗り降りと運転姿勢」と「2.自動車の機構と運転装置の取り扱い」のなかで、ハンドルの持ち方や操作方法について指導します。



かつて「10時10分」と言われたハンドルの持ち方が今は「9時...の画像はこちら >>



項目1と項目2の具体的な指導内容は次のとおりです。



【項目1.車の乗り降りと運転姿勢】



・目標:安全を意識した乗り降りや正しい運転姿勢がとれる



・内容
(1)車の乗り方、降り方
(2)運転姿勢のとり方、座席とミラーの合わせ方
(3)シートベルトのつけ方、はずし方



【項目2.自動車の機構と運転装置の取り扱い】



・目標:運転装置の機能や自動車の走行の原理を理解するとともに、各装置の正しい取扱いができる



・内容
(1)自動車の各装置の仕組み・働きと走行の原理
(2)ハンドルのまわし方
(3)各ペダルの踏み方、戻し方
(4)チェンジレバーの動かし方
(5)ハンドブレーキの使い方
(6)エンジンのかけ方、止め方
(7)その他の装置の名称、取り扱い方



このような指導要領となっているため、ハンドルを持つ位置について、明確に規定されていないといえるでしょう。



ただし、正しい運転姿勢を取ったうえで、各運転装置を操作しなければならないということから、12時の位置や6時の位置を持ったり、ハンドルの内側を持ったりすることはないと言えます。



かつて「10時10分」と言われたハンドルの持ち方が今は「9時15分」に変わった? 元教習所教官が握る位置について解説する!
正しいハンドルの持ち方



多機能ステアリングの採用で持ち位置が変わった?

教習所ではハンドルの持ち方についてどのように教えているのか?

教習所のハンドルの持ち方をひと言でまとめるのであれば、「外側を持つ」という指導になります。そのため、9時15分の位置で持つよう指導されたり、10時10分の位置を持つよう教えられたりするのです。



また、ハンドルをまわす練習をするときは、内側を持って(内掛けをして)まわさないよう指導します。



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内掛けハンドルのイメージ



さらに、ハンドルを持つ位置によって、さまざまな危険性があることについても指導することもあります。



例えば、ハンドルの上側(12時の位置)を持つとエアバッグが作動したときに自分の手で顔面を強打してしまう可能性があることや、ハンドルの下側(6時の位置)を持つと手が足に引っかかってまわしたいときにまわせなくなる可能性があるなどです。



このように、さまざまな危険性や万が一のときのことを伝えると、自然とハンドルを持つ位置が9時15分の近辺となり、10時10分から8時20分の間でハンドルを持つ位置を調整するようになります。



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ハンドルを保持しているイメージ



ステアリングの形状からも9時15分を基準にするのがベスト!

ここまで、教習所における運転指導という側面からハンドルを持つ位置について解説してきました。では、ステアリングの形状から考えたとき、どの位置を持つのがベストなのでしょうか。



クルマのステアリングには、円形、楕円、D型、多角形型など、さまざまなタイプがあります。車種やグレードなどによってステアリングの形状や素材が変わることがありますが、どのステアリングにも共通していることは、持つ部分がグリップしやすくなっているということです。



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レクサスRZのハンドルまわり



高級感をセールスポイントとしているクルマのステアリングでは、10時10分から8時20分までの部分が本革でその他がウッドになっていることがあります。スポーツタイプのクルマやスポーティな演出がされているクルマのステアリングは、10時10分から8時20分までの部分がディンプル加工になっている場合が多いです。



また、多くのクルマに採用されているステアリングスイッチも9時15分近辺に集中しています。パドルシフトがついているクルマを見ると、ステアリング連動タイプの場合は9時15分、固定式の場合は10時10分から8時20分あたりまでレバーが伸びているタイプが多いです。



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ハンドルの持ち方に規定はないが機能を考えると最適ポジションが見えてくる



このようにステアリング形状から見ても、持つ位置は9時15分が基準となっていて、10時10分から8時20分までの間で調整しながら持つようになっているといえるでしょう。

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