この記事をまとめると
■ポルシェは新型マカンのパワートレインを使用した電動ボートを発表した■ボートを作るのはポルシェと関係のあるオーストリアの老舗メーカーの「フラウシャー」
■エンジンボートよりも安定性や旋回性が向上している
ポルシェが作った電動ボート「eBoat」
スーパーカーのブランドや、その他のラグジュアリーブランドが軒並みゴージャスなボートをリリースしていることご承知のとおりです。ぶっちゃけ、ブランドネームをかさに着て「高けりゃ自慢しやすいでしょ」という金満臭がプンプンするものばかりです。むろん、性能の良さも売りにしていなくもないのですが、時世にフィットしているとは到底思えません。
そこへいくと、ポルシェが作った電動ボートはサステナビリティを第一義と声高に訴えていたりして、なかなか目ざといプロダクトかと。しかも、パートナーがオーストリアの老舗ボートメーカーとくれば、ちょっと興味もわいてきます。
ポルシェは親会社のフォルクスワーゲンと足並みをそろえて、ラインアップのEV化を推進しています。たとえば、2024年にマカンが欧州で販売停止になったのは、セキュリティ対応という課題もさることながら、代わりに発表された新型EVマカンがあるからこそ。
実際、マカンのEVシステムは次世代レベルのパフォーマンスだと噂されており、フォルクスワーゲンとの共作というよりポルシェが先導して開発を進めているといったほうが正しいようです。

で、このEVマカンのシステムが優秀らしく、ポルシェ首脳陣はプロモートの一環として「eBoat(電動ボート)」プロジェクトにゴーサインを出したのです。これには次世代マカンの開発責任者のイェルク・ケルナーも加わることになり、モーターやバッテリーだけでなく、周辺機器やソフトウェアまでマカンからの流用が許されたとのこと。
ですが、ポルシェにクルマは作れてもボートに関する知見はありません。そこで、船舶メーカーをパートナーに据えたのですが、これがポルシェ一族とゆかりのある「フラウシャー」でした。100年近く、オーストリアの地でボートを作り続けてきた老舗ブランドで、じつはポルシェ家とピエヒ家のためにボートを作ったこともたびたびあったとのこと。

さすがに電動ボートは初めての挑戦でしたが、ポルシェとのコラボレーションは実験に終わることなく、しっかりと商品化されています。
商品化にあたってeBoatはフラウシャーの既存モデルがベースに選ばれました。
ポルシェの限定車よりも希少なポルシェのボート
前述のとおり、eBoatに搭載された電動システムはEVマカン用に開発されたもの。ですが、当然ながらポン付けというわけにはいかず「水上では車輪の速度を測定できなかったり、パーキングブレーキがなかったりするため、解決すべき課題がたくさんありました。たとえば、マカンはパーキングブレーキが作動しているときだけ充電されます。まず、これらの信号やその他の欠落している信号を生成する必要がありました」とケルナー氏。

とはいえ、バッテリーや周辺機材を船底に配置できたことで、eBoatはこれまでのエンジン付きボートとはまったく違った安定性を得ることに成功しています。たとえば、フル加速をする際、従来のボートはノーズ(舳先)を上げて、船尾のバランスで航行するのが普通でしたが、eBoatは船底の重量物によってノーズアップすることなく、滑らかに水面をトレースしてくれるそうです。

また、この重量バランスは旋回性能にも好影響を与えたようで、ケルナー氏によれば「旋回中のトルクコントロールを何度も修正するほど、eBoatはよく走ってくれたのです」とのこと。
さらに、無音で加速していく感覚は新鮮で「湖の周辺にいる人々にも不快な思いはさせません」と、環境寄与の面でも優等生ぶりを発揮しているのです。

なお、発表されているスペックは、出力が400kW程度、総容量100kWhのリチウムイオンバッテリー搭載、時速40キロで1時間程度の航行可能といった程度。新型EVマカンの電動システムを流用とあって、eBoatのシステムについて詳細は述べられていません。
どうせ高い買い物をするなら、このeBoatのように環境とかサステナビリティといった付加価値っぽいオマケがついてくるほうが、より知的な自慢ができそうですよね。なるほど、顧客のことを知り尽くしているポルシェらしい取り組みです。