この記事をまとめると
■クルマのドアロックは防犯だけでなく「安全装備」としての役割も果たしている■タクシーでは出庫後にすべてのドアの施錠確認を行うほど交通トラブルへの対策を講じている
■日本でも今後はドアロックを「防犯装備」と意識して使用したほうがよさそうだ
ドアロックは安全と防犯のふたつの役目を担っている
クルマに乗るときにまず行うのは「ドアの開錠」、つまりドアロックの解除となるだろう。リアルなカギからスマートキーとなっても、ドアロックを解除して車内に乗り込むということには変わりはない。「カギ」というからには、世間一般の認識どおりクルマのドアロックも「防犯装備」のひとつといえるのだが、日本の車両についての「とびら(ドア)」に関する技術基準の法令をみると、「ドアロックは、ドアの偶発的な開放を防止できるように設計されていなければならない」とされているので、防犯だけではなく「安全装備」という認識もあるようだ。
かつて昭和のころのホンダ車には、ドア内側のドアロックノブの近くに「ロックしましょう」というステッカーが貼ってあった(いまでは復刻版のステッカーが広く販売されている)。前出の法令のような意味もあり貼られていたようだが、確か当時、「ドアロックは安全装備か防犯装備なのか」といった論議があった。さすがに都市部は異なるが、当時は地方のいわゆる「田舎」などと呼ばれていた地域では、ドアロックして駐車するという習慣はあまりなかったと記憶している。
令和となると、さすがに世界的に治安のいいことで知られる日本でも、車両盗難が日常化しているし、ドアロックは防犯装備としての存在感が圧倒的に目立っている。単純に車両盗難だけではなく、さまざまな犯罪に対しての防犯効果も高いのである。
たとえばあるタクシー会社では、出庫に際してすべてのドアの施錠確認をしていると聞いたことがある。
これは何もタクシーに限ったことではない。多様化する社会では何が原因で他人とトラブルになるかわからない。煽り運転を繰り返され、最終的にクルマを停止させられ相手方がドアを開けて車外に引き出そうとしてくるようなこともあるので、防犯のためにもドアロックは心がけたほうがいいだろう。
日本でもドアロックは防犯装備という認識を持っていたい
1980年代末に初めてアメリカを訪れたとき、当時はリモコンキーも普及していなかった。日本車は「インロック(とじ込み/車内にカギがあるままドアロックしてしまうこと)」を防ぐために、ドアハンドルをドアが開くように持ちながら閉めないとカギを使わずにロックすることができなかったが、アメリカ車はロックしてドアをそのまま閉めると施錠してしまうことに驚いた。
アメリカ車というかアメリカで販売されている日本車も含めて特徴的なのは、ワンアクションでは運転席のみしか解錠しないこと。これは、カージャックなどの犯罪は、クルマへの乗降時に遭う確率が高いことがある。たとえばひとりしかいないのに、全部のドアが一斉に解錠してしまうと、助手席や後席に犯罪者が乗り込んできてしまうので、それを防ぐ意味がある。
そのため、セカンドアクションで全部のドアが解錠されるようになっている。とくに夜間では、犯罪者は遠くから駐車場の様子を見ており、乗降時に隙あらば強盗などの犯罪を行うのである。
また、日本車では採用の少ない車速感応型ドアロックもアメリカ車では採用が当たり前となっている。これも、何ごともなくクルマを発進させてドアロックをしないまま走り続けると、信号待ちなどのときに犯罪者がドアを開けようとしてくることがある。それを防ぐためにも、確実にドアロックさせるための装備といえよう。
アメリカでは助手席側にも集中ドアロックの操作スイッチがあるのも特徴。これもドライバーがクルマを離れたときに、助手席に残された同乗者がドアの施錠ができるようにという配慮と考えられる。
※写真は北米仕様のダッジ・ネオン
ここ数年、日本も急速に治安が悪くなってきている。煽り運転をはじめ交通トラブルもなかなか減らない状況が続いており、運転中に犯罪に遭うケースも増えているように感じている。
日本でも、ドアロックを「防犯装備」として強く意識し、アメリカのようなドアロックシステムに統一しても良いのではないかと筆者は考えている(ただし、事故などでドアロックが解除できないといったことに備え、車内にガラスを割るハンマーなどの標準装備が必要かもしれない)。