この記事をまとめると
■乗用車の日野のコンマースを振り返る■コンテッサが生まれる前年の1960年に登場している
■キャブオーバーのバンでありながらFFレイアウトを採用していた
キャブオーバーのバンでありながらFFを採用
日野デュトロZ EVは、小型トラックとしては珍しいFF方式を採用しているが、じつは大昔にその先祖ともいえるクルマが存在した。それが日野コンマースである。
昔のクルマはプレス技術がいまほど高度ではなく、デザインもデザイナーが想像して手書きで仕上げていた時代。アナログなスタイリングは温かみがあってユニークなモノが多いが、コンマースも丸みのあるボディに丸型ヘッドライト、フロントグリルが与えられただけのシンプルなデザインで、なんとも愛くるしい動物のような印象を放つクルマだった。コンマースがユニークなのは、そのスタイリングだけではない。フロントドアは前ヒンジでモノコックボディを採用。サスペンションは四輪独立懸架と先進的な構造も採用されていた。
それに何より、前述のとおりキャブオーバーのバンでありながらFFだったのである。
当時はFRが一般的な時代。しかも後部に重量物を載せるバンとしては、現在でもFRが主流なのだから、変わっている。先にも述べたが、日野はコンマースやコンテッサが生まれる前の1950年代にルノー4CVという前輪駆動の乗用車をノックダウン生産しており、その縦置きFFのメカニズムを利用してキャブオーバーのバンを開発したのである。
しかし、現在のFF車の多くが採用する等速ジョイント(ドライブシャフトの角度が変わっても均一な回転数を保つ)は採用されておらず、耐久性や信頼性(振動が発生しやすい)で問題を抱えることになった。
ちなみにデュトロZ EVの前に、日野はコンセプトモデルとしてキャブオーバー型のFF式EVの試作車を開発している。これはeZ CARGOという名称が与えられ、ポンチョミニEVというコミュニティバスとともに、小型EV商用車プラットフォームを採用したモデルとして2013年の東京モーターショーに出品された。

つまり、デュトロZ EVのレイアウトは1959年(コンマースの特許出願)から発生し、FFのEVプラットフォームを2013年に復活させ、2021年にデュトロZ EVとして発表されて2022年には発売されるに至ったものなのである。
日野コンマースやeZ CARGO、ポンチョミニEVは日野の博物館、日野オートプラザに展示されているから、実車を見ることもできる。