この記事をまとめると
■これまでのホンダ車はほとんどのモデルがFFであった■ホンダの根底には「マンマキシマム・メカニズムミニマム」の思想があってFFにこだわった
■EVの時代になって今後は自由なパッケージングで人を大切にする理想の追求をしていく
ホンダの根底にはいまも「MM思想」がある
ホンダ(本田技研工業)が、創業の2輪車から4輪車(自動車)へ事業を拡大する際、はじめに世に送り出したのは、T360やS360だった。T360は軽自動車のピックアップトラックで、エンジンはミッドシップに搭載されていた。
一方、乗用車のN360は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)の前輪駆動となり、登録車も、シビックに代表されるようにFFで、以後、スポーツカーのNSXやS2000以外、ホンダの乗用車はFFであることが決まりとなっているかのように拡大し普及してきた。
根底にあるのは、「マンマキシマム・メカニズムミニマム」の思想だろう。意味は、人が乗車する空間は最大に、走るための機構は最小に収めること。つまり、人間尊重のクルマ作りがホンダの根幹にある。その考えは、機構の配置を決めるパッケージングに留まらず、排出ガス規制への対応も世界で一番乗りとなるCVCCの開発に尽力し、エアバッグなど、安全装備もホンダは他の国産自動車メーカーに比べ早く実用化し、車載することに努めてきた。
クルマの運動性能や、造形の魅力などという商品性はもちろん重要だが、そのために運転する人や同乗する人の安全や快適性を二の次にすることはしない姿勢がホンダにある。そのうえで、FFでありながら、シビックなどのタイプRでは運転の喜びを築き上げてきた。
エンジン車の時代は、FFであることが人間尊重の最大の手法だったといえるかもしれないが、電気自動車(EV)になると、様子が変わった。ホンダeは後輪駆動である。バッテリーは床下に搭載し、モーターは後輪側に配置する。こうして、EV時代のマンマキシマム・メカニズムミニマムを実現し、人間尊重の思想を守るEVが誕生した。
基本的に変速機や排気管などを必要としないEVは、そもそもマンマキシマム・メカニズムミニマムを達成しやすいクルマといえる。それによって、たとえばホンダeは、前輪の操舵角度を増やすことが可能になり、3ナンバーの登録車であるにもかかわらず最小回転半径を軽自動車並みにし、運転しやすいクルマになった。これも、運転の操作性を高める人間尊重の性能といえる。
ホンダがFFにこだわったのは、人を大切にする理想の追求のためであり、EVの時代になればより自由なパッケージングでそれを具現化することができるようになるのではないか。

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