この記事をまとめると
■タクシー運転手は午前中に出勤し翌日未明に帰社する隔日乗務が一般的だ■タクシーのシートや冷暖房は車種によって性能が異なる
■20時間勤務からの日中に睡眠を取るという勤務体系は人間の身体にはよくないとされている
タクシードライバーの労働環境は身体との戦い
都市部を中心に、タクシー運転士は隔日乗務となっていることが多い。午前中に車庫を出て、帰庫するのは翌日未明以降という仕組みが隔日乗務とされ(途中休憩あり)、これが一般的な乗務シフトとなる。また、乗務日を「出番」と呼ぶ勤務体系もある。
基本的にはこのパッケージで乗務スケジュール(交番表)が組まれるので、平日、そして土曜や日曜日は関係なくなるのだが、傾向としては週末の木曜日や金曜日はタクシー需要が月曜日や火曜日よりも増える傾向にある。ベテラン運転士になると、土曜や日曜日の乗務を避け、さらに金曜日に乗務するようなシフトを会社側に要求することもあるとも聞いている。
とにかく、休憩があるにしても、車庫を出たら20時間ほどは連続して乗務するのだから、身体にいいわけはない。タクシー運転士にありがちな持病のひとつは腰痛である。セダン系のY31系日産セドリックやトヨタ・クラウンコンフォート、トヨタ・クラウンセダンから、法人タクシーはトヨタJPNタクシーへの車両入れ換えが都市部ほど進んでいる。先日乗り合わせたJPNタクシーを運転するタクシー運転士によると、「以前はクラウン・コンフォートに乗っていましたが、いまはシート自体がよくなっただけではなく。シートポジションが高めになったのでずいぶん運転がラクになりました」と話してくれた。

セダン系タクシーがメインのころは、とくに「スタンダード」などと呼ばれる廉価グレードだと、全面ビニールレザーシート(JPNタクシーの運転席は抗菌仕様合成皮革+ファブリック)ということもあり、正式名はわからないものの、玉が数珠のように連なったシートカバーのようなものをシートにかけて、とくに夏では通気性を向上させるのは必須であった。
さらに座布団や腰痛対策の補助クッションなど、運転士個々でさまざまなアイテムを使用していた。

そのほかにも、成人病の類を患っている人も多い。長時間クルマを運転しているので、その振動でお腹がすくのだが、基本的に歩くといったような運動は勤務中少ない。長時間乗務ということで食べる機会も多くなってしまうのがその理由のようである。
乗りっぱなしが故の悩みも
さらに、今年も猛暑が日本列島を襲っているが、この時期ならではといえるのが「冷房」の影響だ。前出の乗り合わせた運転士によると、「ひどい暑さのなかで乗っていただくので冷房は強めにしております(お客が乗車後はその乗客の要望に合わせる)。長時間冷房のきいた車内で運転しますので、腕が冷えすぎてしびれるような痛さに見舞われます。もちろん身体は冷え切ってしまうので、乗務を終えて家に帰ったときには熱くしたお風呂に入り身体を温めています。お客さんからは『この暑いなか1日冷房のなかにいていいね』といわれることもありますが、かなり身体にはこたえます。冬になると1日暖房のきいた車内にいますので、睡魔との闘いになります」と語ってくれた。

とはいうものの、JPNタクシーになってからはその性能向上でずいぶん負担は軽減したとも語ってくれた。
この時期、クラウン・コンフォートのタクシーに乗ると、異口同音に運転士からは「エアコンが効かなくて地獄だ」みたいな愚痴を聞くことが多くなる。あくまで運転士の話になるのだが、コンフォート系のエアコンは昔かたぎともいえるタイプで、走っていないと涼しい風は出てこないとのこと。いまどきはボディカラーが黒の車両も多いので、駅前などで客待ちしているときは冷房もなかなか効かず、黒のボディカラーで熱吸収も良いので、「地獄と化す」というのである。
一方で、クラウンセダンやJPNタクシーはオートエアコンでもあるので、コンフォートのような「地獄」はないとのこと。また、JPNタクシーでは後席、つまり客席へ向けたサーキュレーター(上級グレードのみ)もあるので、暑がりの乗客でも直に涼しい風を浴びることもできるので満足感が高くなっている。

ただし、走りの面ではクラウン系を評価する声も聞かれる。パワー面というよりはJPNタクシーはセダン系より全高が高くなったので、とくに高速道路走行時には風にあおられやすくなっており、セダン系ほど速く走ることができなくなったとのことであった。

自動ブレーキといった安全運転支援デバイスもJPNタクシーでは装着され、ハード面での乗務支援体制はかなりレベルアップしてきた。しかし、基本的に20時間連続乗務し、昼間に寝るというのは人間の身体によくないのは明らか。新型コロナウイルス感染拡大がひどかったころ、タクシー乗務がなかなかできなかったが、再び乗務できるようになって乗り始めると、あらゆる面で「勘を戻す」ことに苦労したとの話も聞いたことがある。
接客や運転技術だけではなく、特殊ともいえる就労環境に身体を適応させるのも、プロドライバーの必要条件のひとつとなっているといっていいだろう。