この記事をまとめると
■空力はクルマの燃費(電費)や操縦安定性に大きく影響を及ぼす



■1960年代以降、モータースポーツの分野で空力性能を重視したマシンが続々と登場した



■現代の自動車開発において空力は必要不可欠な要素となっている



1960年代から研究されてきた空力

空力(くうりき)という言葉を、クルマの領域で聞くようになって久しい。空気の流れを理解し、それを利用して自動車のパフォーマンスを上げようということだ。

機械工学の分野では、流体力学に属する。つまり、空気を水のような流体として捉えるのだ。



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普段の生活で感じる、流体としての空気といえば「風」がある。屋外で風、または室内でエアコンや扇風機を通じて感じる風だ。



一方、クルマの場合、自車が動くことで、いわゆる「風を切る」ように走る。このとき、ボディやクルマの床面に空気の流れが生まれ、それがクルマの燃費(電費)や操縦安定性に影響を及ぼす。



こうした空力についていち早く着目したのが、最近ではモータースポーツと呼び、以前は自動車レースと称していた分野だ。



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スーパーGTの決勝レースの様子



そもそも、空力は飛行機やロケットなど空気中を高速移動する移動体では、基本設計で重要なファクターであった。それが、クルマの高性能化が進むなか、最高速度やコーナーリング速度が上がるにつれ、地上走行でも空力が重要になっていったというわけだ。



自動車レースで空力の研究が一気に進んだのは1960年代。エンジンを車体後部に搭載するようになり、当時「葉巻き型」と呼ばれたフォーミュラカーが登場すると、車体の前後にウイングを装着するようになった。



日本では、トヨタ、日産、タキレーシングが激突した、当時のCAM-AMやル・マン24時間等の耐久およびスプリントレースでも、大型リヤスポイラーを装着した最新マシンが導入されるようになる。



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トヨタ7の当時の写真



また、F1では1970年代後半から、「ウイングカー」と呼ばれるマシンのサイドポットで強力なダウンフォースを発生させ、コーナーでマシンの動きを安定させる手法が登場する。



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1970年代のロータスのF1マシン



こうした自動車レース、のちのモータースポーツで培われた空力技術が、量産開発へフィードバックされていく。



ボディのデザイン設計において、風洞実験を行ったり、または空気の流れをバーチャル空間で再現して解析するなどの方法が確立されていった。



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空気の流れをタブレット上でシミュレーションしている様子



また、エンジン内部の燃料についても、空気の流れの解析が重要視されるようになっていく。いまの自動車開発において、空力は必要不可欠な領域であることは間違いない。



ただし、クルマの細部に対する空力処理であり、またはボディ形状全体における空力への対応であるため、ユーザーから見ると最新の空力技術がどのようなものなのか、わかりにくいかもしれない。



1960年代や1980年代のように、大きなリヤウイングを装着するような、パッと見た目でわかりやすい空力パーツは見受けられない。衝突安全性や視認性などの観点が重視されているからだ。ファッションの観点での装飾品として、かつ空力効果も加味したボディパーツは存在するが、新車の製造工程でのライン装着やディーラーでのオプションパーツといった正規品では、目立つ空力デコレーションは目立たなくなった。



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ホンダアクセスの純正パーツを装着したシビックのフロントスタイリング



いずれにしても、空力は燃費(電費)、操縦安定性にしっかり効く重要なファクターであることは変わりなく、クルマにおける空力は進化し続けることは間違いない。

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