この記事をまとめると
■トヨタ MR2にはMRスパイダーなるオープンモデルがあった■簡易的な幌しか装備しておらずオープンで走るのが前提だった
■92台ほど生産された貴重なモデルだ
MR2にオープンモデルが存在
トヨタのオープンスポーツカーといえば、1999年10月に発売されたミッドシップオープンスポーツのMR-Sを思い浮かべる人も少なくないはずだが(それなりのマニア、現在では中高年のスポーツカーファンに限られるだろうが)、じつはその前に、製造台数たった92台といわれる、今では幻といえるオープンモデルが存在したのである。
そのベースとなったのは、こちらならけっこうメジャーであろう、1984年に登場し、1999年まで製造された2人乗りミッドシップスポーツの2代目トヨタMR2(SW20型)である。その15年の歴史のなかで、1996年2月、3回目のマイナーチェンジ時に投入されたのが、フルオープンのMRスパイダーだ。
MR2にもクーペとTバールーフが用意されていたものの、やはりTバールーフとは違う、フルオープンモデルを望むユーザーのために誕生した、かつて存在したトヨタの完全子会社であり、特装車、レーシング部門を担当するトヨタテクノクラフトがオープン化した特装車、スペシャルモデルだった。
ボディサイズは全長4170×全幅1695×全高1245mm(5ナンバー)。車重1230~1260kg。グレードは2リッターのMTとAT、2リッターのSパッケージのMTとATの2タイプの計4モデルだ。
ただし、幌は折り畳んでシートバック後方に収納する簡易的な着脱式で、あくまでフルオープンで走ることを前提とした。実際、「幌を閉めていても一部雨水が侵入することがある」との注意書きが添えられたほどの純オープンモデルだったのである。
基本はオープンで走ることが前提!
すでにMR2にはセミオープンモデルともいえるTバールーフがあったわけだが、TRDによるフルオープン化に対処し、ボディ剛性を高めるとともに、ミッドシップに搭載される2リッター直4DOHC、NAのパワーユニットは165馬力から5速MTでは高回転仕様の180馬力まで引き上げられ、4速ATは常用回転域のドライバビリティを重視した170馬力仕様となるのが特徴だ。
もっとも、トヨタテクノクラフト製ではあるものの、3S-GE型NAエンジンは小変更にとどまり、足まわりもまた改良レベルで、基本的にはノーマルだったとされる。つまり、スポーツカーというより、オープンエアを楽しみつくすことが目的のオープンカーだった。ただし、新開発されたスポーツABSがオプション設定され、TRD製のマフラー、ストラットタワーバー、アルミホイールもオプションとして用意されていたという。
スポーツカーデザインの特徴としては、リトラクタブルヘッドライト、リヤサイドダクト、フェアリング化された左右に膨らみを持つエンジンフード、太いテールパイプ、専用本革巻ステアリング、スープラを思わせる書体の「MR Spider」のリヤエンブレムなどがある。インテリアに関しては基本的に2代目MR2を踏襲している。
ちなみに脱着式の簡易幌はすでに説明したように、シートバックとリヤバルクヘッドの間に収納するという特殊な収納方法が採用されていて、収納はかなり面倒(2人がかり!?)。リヤウインドウ(スクリーン)はアクリル製だった。それぐらい、基本、幌は収納したままで、オープンで走り、使うことを前提とした筋金入りのオープンモデルだったことになる。
製造台数92台と言われるなかには試作車も含まれていたというから、かなりの少数生産だったということだ。なお、当時の価格はMTが307万円、ATが316.3万円(グレードによる)。
そんな幻のMRスパイダーだが、2024年9月中旬に中古車情報サイトのカーセンサーで検索してみると、ありました、1台。デビュー年である1996年式のAT→MT換装、走行距離8.1万キロ、修復歴ありで”価格応談”とのこと。やはり、超希少なクルマ、オープンカーだったということだ。
そしてMRスパイダーは1999年発売(日本国内)のトヨタのライトウエイトオープンスポーツカー、MR-S(~2007年)に引き継がれることになる。

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