この記事をまとめると
■日産は「Vモーショングリル」を「デジタルVモーション」に進化させた■デジタル表現の採用は日産が掲げるデザインフィロソフィとの親和性を高めるためだ
■デザインイメージの統一を進めている日産だがそのスタイルについて語られる機会が少ない
日産が推している新しいグリル「デジタルVモーション」
今年3月に北米で発表された日産の新型キックスがカッコいいと話題ですが、とりわけデジタルVモーション全開の顔付きが見所です。この新しいグリルは国内モデルにも次々に採用され、いまや日産デザインの目玉となっていますが、その狙いはどこにあるのでしょうか。そこで、今回はあらためてデジタルVモーションを検証してみたいと思います。
Vモーショングリルの進化型として登場?
そもそもVモーショングリルは、2010年前後に4代目のマーチやジュークから始まった日産の統一グリル。当初は既存のグリルにV字パーツを無理矢理取り付けたものでしたが、近年ではボディを構成する重要な要素になっていました。
デジタルVモーションはその進化版として登場し、日本市場ではセレナ、デイズ、ルークス、ノートなどに次々採用され、すっかり日産の新しい「顔」として認識されています。では、この新しいグリルの特徴はどこにあるのでしょうか?
ひとつはV字表現そのものの進化。従来はV字型のメッキパーツなどによる直接的な表現でしたが、これを細い横型のメッキやLEDランプに分解することで、ブラック部分と交互の見え方が「0と1」というデジタルな表現としたワケです。これで一見して先進的に見えるから不思議なものです。
もうひとつの特徴は、同様に横長のヘッドライトとシームレスに融合させることで、フロントビュー全体をワイドに見せる効果です。セレナやノートもそうですが、先述の新型キックスが非常にわかりやすい好例といえるでしょう。
さらに、ノートやノートオーラでは、ヘッドライトに止まらず、ボディパネルとの境界もシームレスにする造形が見られます。これはレクサスの「スピンドルボディ」と似た表現で、最近の流行でもあります。今後は、さらにこの表情が進化するかもしれません。
デジタルVモーションは日産のデザインフィロソフィに沿った表現
では、なぜVモーションはデジタルに進化したのでしょう? おそらく、最近の日産が掲げるデザインフィロソフィ「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」との親和性強化が理由ではないかと……。
「間」や「粋」など、日本の伝統美特有の美しさや力強さを表現するこのフィロソフィは、繊細なラインやムダな要素を廃したシンプルな面など、現行の日産各車に強く反映されています。
なるほど、その効果は明快に表れているようですが、チョット視点を変えると、別の点で気になることもあったりします。そもそもの話になってしまいますが、クルマのスタイリングにおいて、グリルなど部分の話ばかりが語られることは決して望ましいことではないという件です。
つまり、各モデルのイメージ統一が進む日産車について、そのスタイル自体が語られる機会が案外少ないのです。なかには「サクラはよくまとまっている」とか「アリアはプロポーションがいい」なんて個別の話は聞きますが、トータルの話が聞かれない。
日産といえば、S13型シルビアや初代プリメーラなどを輩出した1990年前後や、3代目マーチ、2代目キューブなどの2000年初頭のデザインが秀逸でしたが、たとえばそうした時期と比べていまはどうなのか? グリルだけでない、そういう話が前面に出てくることを期待したいですね。

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