この記事をまとめると
■霊柩車について詳しく解説



■霊柩車は道路運送車両法では特種用途自動車に分類されている



■現在は宮型が減って洋型が主流となっている



現在はリムジン型の霊柩車が主流

人間が、最後に必ずお世話になると思われる車両が霊柩車だ。ご遺体を輸送するための専用車両でたいへん崇高なイメージをもつが、道路運送法の分類では貨物自動車の扱いになる。とはいうものの、一般の荷物と同様に扱えるわけではないので、道路運送車両法では「特種用途自動車」に分類されている。

ゆえにご遺体は貨物の扱いになるのだが、ご遺族が同乗することも多いので、運転者は二種免許をもっている場合がほとんどだという。



人生最後にお世話になる「霊柩車」! ド派手な宮型が減少して洋...の画像はこちら >>



昔は葬儀場から墓地(あるいは火葬場)まで、僧侶、親戚など関係者が葬列を組み徒歩で移動していた。その際に、棺を輿、手押し車、駕籠、牛車、馬車などに乗せ、宗教などのしきたりに従ってそのまわりを飾り付けていたのである。



大正に入ってから、棺の移送手段として自動車(トラック)が使用されるようになっていく。当初は荷台に棺を収めた輿を乗せていたが、次第に屋形風の架装がされるようになって、宮型霊柩車につながったとされている。



人生最後にお世話になる「霊柩車」! ド派手な宮型が減少して洋型に軽バンにミニバンにマイクロバスまで多様化していた
霊柩車のイメージ



宮型霊柩車は高度成長期からバブル経済期ごろまでは霊柩車の主流であったが、
・街なかの走行には住民の忌避感が強い
・車両価格やメンテナンスコストが高く、葬儀の低価格化が進むなかで事業者の経営を圧迫した
などといった理由から、徐々にその姿が見られなくなってきた。



これに代わって主流となったのが洋型(リムジン型)である。外見はシンプルであるものの、クラウン、レクサス、センチュリー、アルファードなどといった、高級車をベースにして改造されているために、十分にラグジュアリー感が醸し出されている。もっとも、葬送儀礼は風習が重んじられることが多いために、一部地域では根強く宮型霊柩車が利用されている。そのため、今後も一定の需要は残るのであろう。



軽バンタイプなども増えている

霊柩車を製造、販売している事業者は、先述のとおりベース車両を改造して完成車にする。いわば、架装事業者でもあるわけだ。

動力部分や運転操作部分(運転席)はそのままにし、屋根からトランク部分を分解して寝台部分の骨組みや外装を取り付ける。車両の全長を伸ばす際には、中央部分を切断、延長することもあるのだ。かなり大がかりな改造になることが多いのである。



一般に、霊柩車は葬儀場から火葬施設にご遺体を運ぶ車両である。儀式の一環なので、相応に豪華さを演出しているわけだ。これに対して、葬儀事業者の間では、死亡場所、警察、病院などから葬儀場、自宅といったところにご遺体を運ぶクルマを、搬送車、寝台車と呼んでわけているのである。しかし、法律上は基本的に霊柩車と扱いが同じとされる。



人生最後にお世話になる「霊柩車」! ド派手な宮型が減少して洋型に軽バンにミニバンにマイクロバスまで多様化していた
霊柩車のイメージ



近年、葬儀が簡素化して参列者が減少傾向にある。家族葬であれば、数人程度の場合も少なくない。また、ご遺族がいないために行政などが火葬を行う福祉葬も増えている。このような場合、必ずしもラグジュアリー感の強い霊柩車が必要になるわけではない。そこで、運転手を含めて3人が乗車可能なセレナ、ノアといったバン型のものや、ハイゼット(2名乗車)といった軽バンタイプなどの霊柩車が増えてきているという。



北海道などでは大きな葬儀を行なっても霊柩車を仕立てず、マイクロバスに棺を収めて参列者とともに火葬場に向かうといった風習のあるところがある。この場合、シビリアンなどをベースにして後部に棺を納められるように改造した車両が用いられる。家族葬規模であれば、ハイエースコミューターなどをベースに、棺とともに8名が乗れるように改造されているものもある。



人生最後にお世話になる「霊柩車」! ド派手な宮型が減少して洋型に軽バンにミニバンにマイクロバスまで多様化していた
霊柩車のイメージ



本来、我が国において葬儀は「冠婚葬祭」のひとつであり、大きく盛大な儀式が行われてきた。核家族化、長寿化、ひとり暮らしといった家族形態の変化やコロナ禍によって人の集まる儀式が変化したことによって、葬儀の形態は大きく変わってきている。それに伴い、人生最後の移動を担う霊柩車の有り様にも変化の波が押し寄せているのであろう。

編集部おすすめ