この記事をまとめると
■初代フィットにはセダンモデル「フィットアリア」が存在した



■ベース車同様に広いラゲッジ空間が自慢だった



■デザインに課題が残りそれほどヒットしなかった



フィットにはセダンモデルがあった

国産コンパクトカーの定番としてお馴染みのホンダ・フィット。現在はその4代目となっているが、2001年に華々しく登場し、国産コンパクトカーの花形となった初代フィットには、じつはセダンタイプの派生車が存在した。それが、2002年11月30日に発売された新型スモールセダン「フィットアリア」だった。



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アリアは当時、大好評のフィット、モビリオ、モビリオスパイクに続くHonda SMALL MAXシリーズの第4弾であり、ホンダの説明によると、コンセプトは「スモールセダンの常識を打ち破り、さまざまな生活シーンにおけるセダンの利用価値を飛躍的に高める先進スモールセダン」と説明されていた。



もちろん、初代フィット(4代目までも)の大きな特徴であるセンタータンクレイアウトを採用し、当時、ホンダ唯一の5ナンバーセダンにして、ハッチバックモデルのフィット譲りのゆとりの室内空間、セダンの常識を超えた圧倒的なユーティリティ、トランクスペースを備えていたのである。その成り立ちは、初代フィットベースの4代目シティとして東南アジア向けに開発されたタイ生産の逆輸入車、日本名アリアであった。



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ホンダ・フィットアリア



フィット同様、コンパクトなボディをもつセダンで、フィットと同じ最小回転半径もあり、狭い道の走行、狭いスペースの駐車はラクラク。フィット譲りの室内空間の圧巻の広さもそのまま引き継がれ、最大幅1400mm、奥行き1060mmのトランクスペースは500リットルもの大容量を備え(トランク自慢のセダン、トヨタ・プレミオ/アリオンでも462リットル)、そのままでも9インチのゴルフバッグ4個を積載可能。後席をフィット同様にダイブダウンすれば、トランクと室内がつながり、奥行き2000mmもの巨大な荷室空間が出現(助手席を倒せば2170リットル)。



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ホンダ・フィットアリアのラゲッジスペース



さらにフィット譲りの後席チップアップ機能を使えば、室内高1245mmの空間が生まれ、観葉植物などの背の高い荷物も余裕で積める、セダンとしてほかに例のない使い勝手のバリエーションの広さを実現していたのである。



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ホンダ・フィットアリアの後席チップアップのイメージ



やっぱり日本市場でセダンは刺さらなかった

パワーユニットは4気筒の1.3リッター(86馬力、12.1kg-m)と1.5リッター(90馬力、13.4kg-m)を用意し、ミッションはホンダマルチマチックS(CVT)を組み合わせる。駆動方式はFFのほか、デュアルポンプ式4WDも用意していた。



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ホンダ・フィットアリアのエンジン



足まわりは初代フィットの初期モデルのキビキビした走り、乗り心地の硬さを改め、スプリングレート、ダンパー減衰力などを専用に最適チューニングして乗り心地重視のセッティングに変更。1.5リッターモデルには7スピードモード(ステアシフト)を設定。7速オートシフトモード、7速マニュアルシフトモードと3つの走行モードが楽しめたのだ。

その走りはフィットの乗り心地をゆったりマイルドにした感じで、車内の静かさもまずまずだったと記憶する。



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ホンダ・フィットアリアのインパネ



当時の新車価格は1.3リッターエンジン搭載の1.3Aが119万8000円、1.5リッターエンジン搭載の1.5Wが139万8000円(FF)と、内容を考えたらかなりリーズナブルだった。



とはいえ、東南アジアでは当時もセダン信仰があり、一定の評価を得たようだが(それでも現地では高価だった)、日本国内での評判はイマイチ。スタイリッシュな初代フィットをベースとしながら、セダン化のためにフィットより全高を40mm低め、全長を480mm伸ばし、車幅を15mm広くし、ホイールベース2450mmはフィットと同じというプロポーションは、いささかずんぐりしていて、フィットのエクステリアデザインの完成度とは別物だったのである。



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ホンダ・フィットアリア



筆者の知り合いの女性WEB敏腕編集者が、ボクに相談なく「アリア買っちゃった」と話したときは、心のなかで「マジかっ」と思ったものだが、要は不人気車で、当時の同種のライバルだったトヨタ・プラッツ(ヴィッツベースのコンパクトセダン)よりずいぶん安く買えたのが、アリアにしちゃった理由だったそう。



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トヨタ・プラッツ



最初からコンパクトセダンを開発、デザインしていれば、アリアのようなカタチにはならなかったと思えるが、既存のコンパクトハッチバック車をベースにセダン化すると、ボディサイズの制約もあり、やはり無理すぎる……やっちまった……ということになる証明でもあったかも知れない。



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フィットアリアのエンブレム



3代目までのフィットや歴代オデッセイ、ステップワゴン、ストリーム、N-BOX、ヴェゼル、現行シビックなどのデザインはかなり優れているのにねぇ。

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