この記事をまとめると
■販売現場では12月より2024事業年度末決算セールに向けて動いている



■納期が不安定なので早めに行動するディーラーが多い



■最近は決算期の値引きをあまり期待できないので欲しいときに買うのがベストだ



いまも受注を受けてからすぐ納車とはいかない

本稿執筆時点は年明け(2024年から2025年へ)まで1カ月を切ったばかりなのだが、近所のスーパーへ行けば、それよりかなり以前より松飾りや鏡餅などが店頭に並び、テレビでは「おせち料理」のテレビショッピングがガンガン流れている。以前はクリスマスが終わってから、本格的なお正月向けの販売促進活動が行われていたが、いまどきは連日真夏日を記録するような初秋からおせち料理のテレビショッピングが始まっている。長い酷暑が終わり、秋もなく冬になってしまう今どきではこうなっても仕方ないのかなぁ……などと考えている。



新車販売の世界でもすでに、今後新規で商談が入ったとしても多くのケースでは2024暦年締め(2024年1月から12月)での新車販売実績としてカウントされることはない。つまり、年内に契約が成立したとしても多くのケースでは納車は2025年以降となってしまうのである。2024年内に納車可能として契約を取るケースもないとはいえないが、それはあくまでも「可能性」であって、確約されるケースはほとんどない。



最悪なのは年内、つまり2024年式として新規登録や届け出が間に合ったとしても、物理的な納車は2025年になってからとなり、新車販売の世界では「それやっちゃダメ(1年落ちのクルマを年明けに納車されることになる)」のひとつとされている。



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販売現場ではすでに2024事業年度末決算セール(2025年2月と3月)を主眼に動き出している。新車の需給体制が数年前より改善しているとはいえ、納車に要する期間は3~4カ月を見るのが一般的で、2~3カ月は軽自動車ですら早めという扱いだ。生産体制だけではなく、「働き方改革」により、工場からの完成車輸送や、ディーラーについてからの最終検査や用品の取り付け(工場からの出荷時に装着されるケースもある)に、以前より時間を要することになったことも影響しているのである。



ボーナスセールなんて過去のもの! 値引きもほとんど変化なし! いま新車販売は「お買い得時期」が存在しない状況だった
自動車工場の生産ライン



事業年度末決算セールは2月と3月がメインとなっているが、納車にかかる期間は3~4カ月は見たほうがいいと前述しているとおり、2月に仮に契約が成立したとしても、2024事業年度内に新規登録(軽自動車は届け出)及び納車が間に合うかはかなり厳しくなってしまう。



コロナ禍前より納車までに時間のかかるケースが多発しており、多くのディーラーでは年明け早々の「初売りセール」を軸にして1月を事業年度末決算セールの「天王山(メイン受注月)」と位置づけ、積極的な受注活動を展開するディーラーも目立っていた。



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初売りのチラシ



バブル経済のころは、ディーラーが豊富に在庫車を抱え、メーカーからの完成車出荷もスピード感があった。「作ったぶんだけすぐ売れる」、そんな古き良き時代であり、「24時間働けますか」ともされた時代だからこそ、3月上旬に商談して契約しても3月中に納車が間に合うのが当たり前であったのである。働き方改革のなか、受注生産方式を基本として貫けば、さらに納車までに時間を要することにもなるかもしれない。



各期間の決算セールもいまでは旨味なし

事業年度末決算セールのように、新車がよく売れる「増販期」というのは年度末のほかに、「夏商戦(6・7月)」、事業年度締め半期決算セール(8月お盆休み明けから9月)、秋商戦(10・11月)、年末商戦(12月)などがある。



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決算セールのチラシ



夏商戦と秋商戦はかつてボーナス商戦と呼ばれていたが、世のなかで非正規雇用など働き方の多様化もあり、労働者でボーナスをもらえる層が限定的となったこともあり表現として使うのを避け、今では増販期としての盛り上がりに欠けている。ちなみに年末商戦は、欧米ブランドメーカーの決算月が12月となっていることもあり、輸入車系がより熱心な販売促進活動を展開してくる傾向が高い。



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フィアットのディーラー内観



現状では国内販売シェアトップのトヨタの新車需給状況がまだ不安定な部分もあり、販売現場では増販期を見据えての計画的な販売促進活動がなかなか思うようにできないことが、新車販売全体に大きな影響を与えている。



値引き条件や下取り査定額の動きも含め、トヨタ系ディーラー以外のメーカー系ディーラーでは、「トヨタさんはどうなんですか?」と、国内販売トップとなるトヨタの動きをある意味ベンチマークとして動いている。現状、トヨタ車は納期がなかなか読めない状況が続いているので、増販期に合わせた値引きアップなどの購入特典が用意されることはほぼないものと聞いている。こうなると、トヨタの動きに合わせるような動きを見せる他メーカー系ディーラーでも購入条件は伸び悩み傾向になりがちとなる。



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ホンダディーラーの外観



トヨタ車の納期が不安定だからとして、トヨタ車を検討していたお客を値引き条件などで囲い込もうとすれば、トヨタ車より値引き額を多くして販売することにもなるので、結果的に再販価値の低下を招くことにも繋がる。残価設定ローンの利用の多い今どきの新車販売では、再販価値が低めというだけで敬遠するお客も少なくない。



そもそも日本でも人件費の上昇傾向が続くことになるだろうし、諸物価高騰は続いていくので、新車価格もそれを踏まえて値上げがいろいろな形で続くだろうが、値上げでコスト上昇分をすべて吸収できているわけでもないので、値引き余力の減少傾向も続くことになるだろう。



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自動車工場の生産ライン



ホンダあたりは今でも、増販期になるとテレビコマーシャルを積極的にオンエアしたりしているので、それでも期待はできるが、現状では増販期にあえて新車購入のタイミングを合わせるメリットは少なく、その意味では「欲しくなったときが買い時」が令和の新車の買い方といっていいかもしれない。

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