この記事をまとめると
◼︎三菱はかつてミラージュというコンパクトカーを展開していた◼︎初代モデルは1978年の誕生でそこから6代続いた
◼︎革新的な技術なども取り入れた三菱の看板車種であった
ミラージュの歴史を振り返る
今では主にレンタカーでしかお目にかかれない国産コンパクトカーが三菱ミラージュではないだろうか。しかし、ミラージュの歴史は古く、かつてはユーミンのCMソングとともに、大人気の国産コンパクトカーだったのだ。
初代ミラージュのデビューは1978年3月。

エクステリアデザインは安定感ある台形が基本で、空気抵抗低減のためのスラントノーズ、フラッシュサーフェスボディを採用。3ドアのジャンボドアとガラス面積の大きさも特徴だった。すでに説明したように、三菱自動車初のFF車ということで、FR用1.2リッター、1.4リッターエンジンを横置き配置するため、逆転ギヤを用い、それを副変速機として使用したことで、パワー/エコノミーレンジの切り替えが可能なスーパーシフト(2段×4段)が誕生したといわれている。サスは新開発の4輪独立懸架が採用されている。

3ドアハッチバックでスタートしたミラージュはその後、1978年に4ドアハッチバックを、1979年には1.6リッターエンジン、3速フルオートマチックミッションを追加。1982年には4ドアサルーンのミラージュⅡ、1.4リッターターボエンジン、低負荷時に2気筒の吸排気バルブを休止させるオリオンMDエンジン(10-15モード燃費20.0km/L)を用意するなど、イケイケな展開でもあったのだ。
2代目となるミラージュは、東京ディズニーランドが開園した1983年の10月にフルモデルチェンジ。「元気なカジュアルビークル」をテーマに、先進的デザインを一段と強め、高性能、低燃費エンジンのワイドバリエイション化が計られ、新機構、新装備も満載。3ドアハッチバック、5ドアハッチバック、4ドアセダンのラインアップを用意。エンジンは1.3リッター、1.5リッター、そして1.6リッターターボの布陣。

しかも、エンジンは高性能な1.6リッターターボ、1.8リッターディーゼル、1.5リッターMDエンジンを揃えたほか、液晶式電子メーター、クラス初の周波数デジタル表示同調AM/FMラジオ、これまたクラス初のオートシートヒーターなどの先進装備を採用。
2代目の大きなトピックとしては、1986年登場のミラージュNOWの3ドアがあり、当時のポルシェデザインの社長、F.A.ポルシェ氏が特別にデザインしたステアリングホイールとアルミホイールを採用。大きな話題となったのである。
日本のコンパクトカー市場において存在感をアピール
歴代ミラージュのなかで、デザイン的に特別感があったのが、1987年に登場した3代目だろう。3ドアハッチバックのみがリリースされ、女性を意識したファビオを始め、スイフト、サイボーグ、XYVYX(ザイビクス)というバリエイションを一気に展開。とくに1.6リッターDOHCターボエンジン搭載のサイボーグ、リヤサイドウインドウをパネル化した2シーターのXYVYXは異色の存在だった。

さらにオープンエアー感覚が楽しめるスーパートップ、昼と夜で文字の色などが変化するカメレオン機構メーター、スタビライザー特性とショックアブソーバーの減衰力特性が同時に切り替えられるデュアルモードサスペンション、ダブルアクションリヤシートなど、斬新な技術、装備の採用が目覚ましく、ミラージュがまさにイケイケの時代だった。エンジンは1.3リッター、1.5リッター、1.6リッター、1.6リッターターボを揃え、ボディサイズは全長3950×全幅1670×全高1380mmであった。

ところで、三菱自動車といえばユーミン(松任谷由実)を連想するユーミンファンも少なくないはず。このころは毎年2月に苗場プリンスホテルのブリザデウムで行われる「SURF&SNOW in naeba」のコンサートのスポンサーであった時代でもあり、SWEET DREAMS、霧雨で見えない、ダイヤモンドダストが消えぬまに、リフレインが叫んでる、WANDERES、満月のフォーチュンといった名曲が、ミラージュのCMソングに使われ、そのコラボレーションでミラージュの人気をさらに高めた時代でもあったのだ。

1991年登場の4代目ミラージュは、新時代のベーシックカーを開発テーマとし、さらに個性的に進化。

1995年にフルモデルチェンジされた5代目(1995-2000)は、ランサーとともに次世代ベーシックカーとして開発され、3ドアハッチバックとともにあった4ドアセダンは実質的にランサーと同一モデルとなった。また、ボディのコンパクト化も5代目ならではで、3ドアは全長3870×全幅1680×全高1365mmと、全長の短さが際立つものであった(先代比-170mm)。パワーユニットは新開発の1.5リッターDOHCエンジン、低燃費型の1.5リッターMVVに加え、V6ガソリンエンジンは1.6リッターから1.8リッターに排気量UP。

V6モデルは小さな高級車が狙いだったようだ。さらにスポーツカーのFTOからINVECS-IIスポーツモード4速ATを受け継いだことも目玉だった。安全性能、安全装備の充実もこの5代目で一層加速させている。ただし、2000年に国内仕様はいったん、製造、販売終了となる。
2012年に約10年ぶりに復活した日本仕様最後の6代目は三菱自動車のタイの現地法人で生産。

日本仕様は3気筒1リッターエンジン+CVT(INVECS-III)の仕様で、空気抵抗はCD値0.27を達成。最小回転半径4.4mの小まわり性も自慢だった。さらにアイドリングストップ機能のAS&Gを採用し、JC08モード燃費27.2km/Lを誇った。さまざまなコストダウンもあって、車両本体価格99.8万円~というリーズナブルさも売りのひとつ。
ただ、この時代にはトヨタからはiQ、パッソ、ヴィッツ、アクア、イスト、日産はマーチ、ノート、ホンダ・フィット、マツダ・デミオ、スズキ・スイフトといったライバルが数多く存在し、目立つ販売実績は残せなかったのも事実で、2023年3月に日本仕様の輸入、販売を終了させている。現在、三菱自動車の国内向けコンパクトカーは、スズキ・ソリオのOEM車となるデリカD:2のみのラインアップとなっているのが寂しい限りだ……。