この記事をまとめると
■スポーツカーのなかにはリヤシートをもつモデルが存在する■スポーツカーの車内はもともと狭いためリヤシートは荷物置きとして役立つ
■シートとしてはあくまで緊急用であり乗員の快適性には目をつぶる必要がある
邪道かアリか? リヤシートをもつスポーツカー
スポーツカーに後席、4シーターは邪道だろう……そんな意見をもつ人もいるはずだ。2シーターと4シーターの選択ができたS130日産フェアレディZは、まさにスポーツカーに対する想いをかけた選択を迫られた1台。本気のZファンなら迷うことなく、スタイリング的にもよりカッコよく、バランスの取れた2シーターを選んだはずだ。
しかし、ポルシェ911に代表されるように、スポーツカーでも後席がある4シーターのみで勝負しているクルマは依然として存在する。かつては北米の自動車保険料の関係で、2シーターより後席のある4シーターが優遇されていたこともあるが、いまではそうでもない。
それでも一部のスポーツカーが4シーターにこだわるのは、大人が座れなくても子どもなら座れる、荷物置きとして便利、2シーターより家族を説得しやすい!? などの理由があるからだろう。
とくに移動する際、2シーターのスポーツカーでは、荷物は狭いトランクにしまうしかなく、コートや大きめのバッグなどクルマから降りてすぐに手にしたい荷物の収納に難がある。宿泊を伴うドライブ旅行ともなれば、なおさら荷物の置き場に悩むことになる。軽スポーツのホンダS660など、2名乗車状態ではトートバッグでさえ車内に置くところはなかったのである。

とはいえ、スポーツカーの後席は、荷物を置くには便利だが人が乗るには極狭であることがほとんどだ。それはシートサイズを見ても明らかだし、そもそも乗降が大変。アクロバティックな姿勢を強要されるのである。たとえ無理して座れたとしても、頭部の真上がリヤウインドウで狭いというだけではなく、夏は頭が暑くてたまらなくなることもありがちだ。
そんな4シーターのスポーツカーの例を挙げると、古くはレクサスSC、そしてトヨタ86、ホンダCR-Zなどがあるが、それらのヒットの理由のひとつとして、後席による実用性があったことは間違いないだろう。

実際、そういった4シーターモデルは、スポーツカー好きの小さな子どもをもつファミリーにも愛されたはずだ。レクサスSCを試乗したときの当時のメモを引っ張り出せば、身長172cmの筆者がリヤシートに座ると、体育座りを強要されるだけでなく、頭頂部がリヤガラスに接触する狭さだった、とある。

ポルシェ911などと違い、後席を倒してフラットなラゲッジスペースとして使うこともできず、まさにあるだけ、主力市場の北米における保険料対策のように思えたのも本当だ。
シートとしての快適性はほぼ皆無だが実用性が光る
そのほか、輸入車ではポルシェ911を筆頭に、ロータス・エヴォーラ、アウディTT、プジョーRCZなどが4シーターのスポーツカーとして存在した。

かつて初代アウディTT、プジョーRCZ、レクサスSCを試乗のために借り出して自宅に停めていたら、近所の小学生兄弟が「カッコいい、乗ってみたい」というので、親御さんの許可を得て後席に乗せたのだが、小学校低学年の弟くんはどちらの後席にも無理なく座れたものの、比較的長身の小学校高学年のお兄ちゃんのほうだとけっこうキツキツに座っていたと記憶する。
つまり、4シーターのスポーツカーの後席は、無理なく座らせるには小学校低学年まで、あるいは身長150cmぐらいまでの人を座らせるのに適しているということ。それでも乗降性が厳しいだけでなく、体と足元の自由はきかず、前方の見通しにも期待できないため、閉じ込められた着座感になるはずだ。

そもそも4シータースポーツカーのリヤシートは緊急用シートとして存在するわけで、着座感、乗り心地、エンジンノイズやロードノイズを含む静粛性、快適性など考えられているはずもなく、座れたとしても長時間の着座は御免なシートなのだ。
ただし、ポルシェ911であれば、後席にひとり乗車という条件なら、大人でもドライブに出かけられないでもない。長年作り続けているだけに、スポーツカーの後席としては意外なほど実用的でもある。知り合いの911乗りは、家族3人でドライブに出かける機会もあるというが、911に乗りかえてからというもの、宿泊を伴うドライブ旅行ではミニマムな荷物で出かけることを心がけているそうだ。

最後になるが、4シーターのスポーツカーに後席部分の実用性を期待するなら、荷物置きとしての使い勝手を重視するといい。