20世紀初頭にはすでに鉛バッテリーが使われていた

鉛は、人間が古くから使ってきた金属のひとつだ。紀元前6400年(いまから8000年以上前)ごろに、現在のトルコでビーズに使われていたり、紀元前3000~4000年の古代エジプトで装飾品や漁業の網の錘として使われたりしていたと伝えられる。



現在も、世界的に資源を手に入れることができ、その価格は安定している。

20世紀初頭に電気自動車(EV)が一時的に広がりを見せようとした際に使われたのも、鉛酸バッテリーだった。現在も鉛は、クルマ用のバッテリーとしてもっとも多く使われているという。また使用後の鉛も、ほぼすべてがリサイクルされている。



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鉛酸バッテリー(一般的には鉛バッテリーと呼ばれている)は、そのように100年以上の歴史のなかで安定的な供給と信頼耐久性、そしてリサイクルというように、人間が使い慣れ、使い尽くせるバッテリーなのである。



これに対し、携帯電話やEVで必要不可欠となっているリチウムイオンバッテリーは、ノーベル賞を受賞した吉野 彰氏が実用化の道を拓き、1991年にソニーが商品化した新しいバッテリーで、性能は高いが、価格も高い。



これだけ「リチウムイオン電池」が出回っているのになぜ? クルマが100年前からある「鉛バッテリー」を使うワケ



完全にリチウムイオンに置き換えることは不可能だ

今日スマートフォンは多くの人が所持するが、価格は安くなく、通信料金を含めた経済性で普及をはかっている。クルマの電動化においても、EVもプラグインハイブリッド車(PHEV)も、同等車格のエンジン車に比べ割高な状況で、それが普及の足かせになっている。手ごろな価格で購入できるエンジン車に、リチウムイオンバッテリーを使うと、車両価格の上昇につながってしまう。



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また、リチウムイオンバッテリーのリサイクルについてはまだ技術的にも事業的にも確立されていない面があり、それでも、EVやPHEVでの使用後にはスマートフォン以上の大量の使用済みバッテリーが出回ることになるため、再利用の道が検討され、一部で事業化されている。



高性能なリチウムイオンバッテリーは、EVで使用したあともなお性能の60~70%は残っており、クルマの利用に適さないだけなので、定置型として活用の場を広げる取り組みが始まっている。たとえば、太陽光発電や風力発電の安定化のため一時的に電力を蓄えておく設備として、あるいは、電動フォークリフトなど小型車両の動力として、また災害の際などにスマートフォンなどを充電できる電源機器としてなど、用途は幅広い。



リチウム資源は限度があり、世界13億台といわれるクルマすべてをEV化するだけの量はないとされている。

そこから、クルマを所有から共同利用に転換していく考えも生まれる。



鉛も、金属資源として限度はあるが、リサイクルによる再資源化の取り組みが確立しているし、価格や信頼性などさまざまな理由で、エンジン車の12Vバッテリーとしては旧来の鉛酸バッテリーを使うのが理にかなっているのである。



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