レーシングカーではウイング以上に重要な役割をもつ
今のクルマのボディ下面には、「アンダーカバー」という樹脂製のカバーがついている。
昔はフロントアンダーカバー(エンジンアンダーカバー・ラジエターアンダーカバー)しかなかったが、最近のクルマにはセンターフロアカバーや、リヤディフューザーまでついていて、リフトで車体を挙げてみてみると、フロア下はほとんどカバーで覆われ、フラットな形状になっている。
これらのアンダーカバーはなんのためにあるのか?
もともとは、エンジンルーム内に異物が入るのを防ぎ、効率よく熱を逃がすのが目的で用意されたパーツだが、最近では、床下面の空気の流れを整えることで、空気抵抗を低減し、燃費向上や静粛性を向上させることにも重きを置かれている。
レーシングカーでは、このボディ下面の空力処理は、前後の大きなウイング以上に重要で、グランドエフェクト効果によって、どれだけダウンフォースを得ることができるかが、空力エンジニアの腕の見せ所になっているほど。
量産車でも、ボディ下面をただフラットにするだけでなく、これらのアンダーカバーには気流が後方に流れやすいように縦方向に溝が設けられていることが多い。

またフロントエンドはボディ下面に空気が流れやすいように処理されて、リヤアンダーフロアをヒップアップすることで、レーシングカーほどではないにせよ、ダウンフォースを発生させ、走行時の安定性に寄与している(マフラーのサイレンサーが路面に対して傾斜がついていたり、サイレンサーの表面の凹凸を覆うのも空気の流れをよくするため)。

空気抵抗に関しては、これらのアンダーカバーのあるなしでは、Cd値でざっと0.05ぐらいの差があり、ボディ下面の最適化はCd値低減の効果が大きいこともわかっている。
このようにアンダーカバーには、意外に重要な役割がある。したがって、縁石に乗り上げたり、落下物に接触したときなど、アンダーカバーが外れかかった際に『こんなカバーなんて不要なのでは?』と思って廃棄したりしないように注意して欲しい。

整備性も悪くなり、重量的にもマイナスになるアンダーカバーを、わざわざメーカーが取り付けるのには、それだけの理由があるからなのだ。
一応、アンダーカバーがなくても車検はとおると言われているが、それほど高価なものではないので、アンダーカバーを傷めてしまった場合は、きちんと修理した方が、走安性、燃費、静粛性でメリットがあると覚えておこう。