コネクテッドカーであることの証明?
スマホでクルマをコントロールする時代が到来した。車外からエンジンをかけたり、空調を操作したり、燃料残量や電池残量を把握したり。そんなことを聞いても、ユーザーはけっして驚かなくなった。
だから、スマホをクルマのカギとして使う、いわゆるデジタルキーが採用される量産車が登場しても「これも時代の流れなので当然のこと」。そんなふうに感じるのだと思う。
アップルのiPhoneを、クルマのデジタルキーとして世界初採用したのはBMWで2020年6月にその内容を公開した。また、ほぼ同じ頃に欧州市場で、日本市場を先行して発売が始まったホンダ「Honda e」でもデジタルキーが採用されている。
つまり、自動車部品メーカーがデジタルキー対応の量産体制が整ってきて、これに対応して自動車メーカーが車載システムを設計し、それと同時にアップルやアンドロイドフォンの基盤を考えるグーグル(親会社はアルファベット)との“すり合わせ”を行うケースが増えてきたということだ。
こうした、車外との通信によりクルマのさまざまなサービスができるクルマを、コネクテッドカーと呼ぶことが多い。いわゆる「クルマのスマホ化」だ。自動車業界全体として、コネクテッドカーへのシフトが進む中で、スマホのデジタルキーとしての活用は今後、日本車でも徐々に広がる可能性が高い。
とはいえ、現時点(2021年2月上旬)では、日系メーカー各社がこぞってスマホのデジタルキーの採用に動いている、という雰囲気でもないように感じる。なぜだろうか?
サイバーセキュリティへの対策は?
スマホのデジタルキー化で、多くのユーザーが危惧するのは、サイバーセキュリティに対するリスクだろう。2010年代中盤には、アメリカのハッカーがプリウスやジープチェロキーの車内システムを乗っ取り、外部からまるでラジコンのようにコントロールする様子が、世界的なハッカーの祭典で披露されたことを覚えている人も多いだろう。
この場合のハッキングは、車載インフォテインメントと呼ばれる、インフォメーションとエンターテインメントを融合させた新規導入システムの脆弱性をつく手法だった。
この大事件を契機に、コネクテッドカーに対するサイバーセキュリティ対策は大きく進んだとはいえ「結局、ハッキングやサイバーセキュリティへの対応は、ハッカーとメーカーの“いたちごっこ”」と指摘する業界関係者がほとんどだ。そのため、スマホのデジタルキーについても、ハッキングが絶対に発生しないと言い切れる自動車エンジニアはいないはずだ。
それでも、デジタルキーが量産されるようになったのは、仮にスマホの形状が今後変化していっても、スマホが個人の情報端末として定着することが明らかだと思うエンジニアやメーカー経営者が多いからだと思う。その上で、サイバーセキュリティ対策は日進月歩で改善されることになる。現状で、デジタルキー対応車種が少ないのは、端的にコストだと思う。
また、筆者の知る限り、一部の自動車メーカーでは研究開発は当然行っているものの「ユーザーが現時点で、本当にそこまで望んでいるのだろうか?」と、デジタルキー採用に対して慎重な姿勢を示す場合もある。はてさて、いまから10年先の2020年代、デジタルキーは軽自動車の標準装備になっているのだろうか?

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