安定性を高める制御が走る楽しさを妨げる
とくにレース仕様車でなくても、自分のクルマでサーキットを走ってみようという人が増えている。いわゆる、サーキットでのスポーツランで、主催はカーショップであったりカークラブであったりとさまざまだが、占有されたコースを指定された時間内、思いきり走りを楽しめる設定となっている。
さて、いつもその際どうしたほうがよいのか取り沙汰されるのが、2012年から新車装着が義務付けられている車両挙動安定装置(横滑り防止装置)やトラクションコントロールといった安全走行デバイスのオン/オフ問題である。
たしかに、これらのシステムは、一般公道走行での安全を確保する上では非常に有効なデバイスなのだが、サーキット走行という純粋にクルマを操る楽しさをストレスなく味わおうとする場面では、必ずしもあったほうがよいとは断言できない側面を持っている。
そもそもこれらの装置は、一般公道走行時の車両挙動を自動的に制御、安定化するシステムで、目的はアクシデントを未然に防ぐことにある。言い換えれば、これらはドライバーの操作ミス、運転技量の未熟さを補ってくれるシステムで、作動(オン)させている限り高い安定性をもたらしてくれるセーフティデバイスである。
しかし、サーキットのスポーツ走行では、皮肉にも高い安定性を生み出す動きが、走る楽しさを妨げる要因として作用してしまうのである。
ブレーキをかけてスピンモーメントを相殺して車両を安定させる
では、なぜ走りの楽しさをスポイルしてしまうのか、セフティデバイスの働きを考えてみることにしよう。
まず、車両挙動安定装置だ。この装置は、タイヤの空転を感知して車両が挙動を崩していると判断し、車体が回転(スピン)する方向とは反対方向のモーメントを発生させ、スピンモーメントを相殺することで車両の動きを安定させるシステムである。
スピンを防止することから横滑り防止装置とも呼ばれているが、一般の人が通常の走行では経験し得ない万が一のスピンという突発事態に対し、その発生を初期段階で検知し、車両を安定状態に保ってくれる予防安全装置である。
このシステムは、基本的にトラクションコントロールとABSの組み合わせによって構成され、とくにFR車(もちろんFF車でも有効)の動きを想定したもので、コーナーに対する旋回速度がオーバーし、リヤが振り出てスピンすることを防ぐために考え出された装置である。
たとえば右旋回の場合、オーバースピードなどでクルマに適正量を超す大きな時計回りのモーメントが発生すると、車両は時計まわりのスピン状態に陥ることになる。車両挙動安定装置は、時計まわりのスピンモーメントを検知し、コーナー外側前輪のブレーキを作動させて反時計まわりのモーメントを発生させ、これでスピンモーメントを相殺し、車両の挙動を安定化するシステムである。このため、ブレーキを4輪独立(少なくとも後2輪は独立)で制御する必要があり、ABSを構成する加圧ポンプの働きが不可欠となる。
同時に、スピンの収束には運動質量を下げることも必要で、走行速度を下げることが大きな条件となる。このため、駆動力を制御する目的でトラクションコントロールとの連動が必要となる。スピン方向にあると判定された車両では、ドライバーがアクセル踏んでもエンジンを反応させず、駆動力を絞って素早く速度を低下させることで、スピン状態の発生を抑える一連の制御が行われることになる。
さて、ここからが大切なのだが、実際には、明らかにスピン状態に陥ってから車両挙動安定装置が働くのでは、タイミングとしては明らかに遅すぎる。スピンを起こす前、車両が安定挙動を失いかけた瞬間、言い換えればスピン直前の状態でシステムが作動すれば、何事も起きず、安定した車両の動きが保たれることになる。現在、量産車に装備される車両挙動安定装置は、不安定な挙動を検知したら即座に対応するプログラムが組まれ、はた目には、車両速度を下げながら何事もなくコーナーを通過するように見えるはずだ。
一般のドライバーには、ほぼ対処不可能なスピンに対し、発生の初期段階で検知、スピンを未然に防いでくれる機能は非常にありがたいのだが、サーキットのスポーツランでこの機能が作動してしまうと、アクセルオン(パワーオン)による車両挙動のコントロールができず、また連動するトラクションコントロールがアクセルオンの操作を2~3秒受け付けない「待ち」の状態(ドライバーにアクセル操作が過度だったことを認識させるための無反応時間、車両挙動安定装置の設定によってこれより長短の場合もあり、この状態を俗に「お仕置きモード」と呼ぶことがある)とすることで、操作のリニアリティが奪われ、ストレスを感じる楽しくない走りとなってしまう。
ちなみにトラクションコントロールは、タイヤのグリップ状態からエンジン出力を制御するシステムで、タイヤの空転(駆動力オーバーの状態)を検知すると過大なエンジン出力(駆動力)をカット。発進加速時のホイールスピンなどがこれに該当し、コーナー立ち上がり時のアクセルオンによるホイールスピン対しても同様に機能する。トラクションコントロールは、駆動輪に常にグリップ限界内の駆動力を伝えるようにしたシステムである。
「お仕置きモード」がなければサーキット走行を楽しめる
よく考えれば、こうした働きはサーキット走行でも有効なのだが、実際には、その「効き方」が問題なのである。量産車に装備される車両挙動安定装置は、ドライバーにアクセル操作が不適切だったことを警告するため、再びエンジン反応するまでしばらく「待ち」の時間が設けられ、ほんのわずかな滑りに対しても挙動が不安定に陥ると判断してシステムを作動させる設定となっている。
しかし、グリップが回復すると同時にエンジンが反応し、ある程度滑り出したところでシステムが機能する設定とすれば、車両挙動安定装置やトラクションコントロールが機能しても、逆に速く走らせるためのデバイスとしてレース車両に向くシステムとすることもできる。
実際、車両挙動安定装置の先駆けとなったメルセデス・ベンツ(ESP)は、その開発をサーキットレースに求め、豪雨の中では不利なFRのCクラス(クラス1ツーリングカー規定下、1990年代中期DTM)を4輪駆動のアルファロメオ155と同等のスピードで走らせ、関係者を驚かせたことがあった。
こうした設定は、速いサイクルで制御を行うレーシングABSもまったく同じだが、システムの「利き方」をどう設定するかで、フィードバックされる動きも正反対のものにすることができる。
しかし、ここで問題とするのは、市販車に装備され不特定多数のドライバーを対象とした車両挙動安定装置でありトラクションコントロールであるため、要求される要素は1点のみ、安全性の確保に尽きるのである。
車両挙動安定装置、トラクションコントロールは、安全の見地から一般公道だけを走る車両にとっては不可欠な装置と言えるのだが、それでもオン/オフの切り替えポジションがあるのは、雪道など低μ路での発進、走行がスムースに行えることに対処したためだ。
わずかな滑りでもシステムが作動すると発進、走行ができなくなることを考慮し、逆にこうした走行条件は絶対速度が低いことから、システムが作動しなくても安全性の確保に大きな問題はなく、任意でシステムのオン/オフを選べるようにした結果である。
それにしても、こうした安全デバイスを考える上で忘れてはならないことは、システムの有無にかかわらず、いかなる高性能車もタイヤのグリップ限界を超えて走ることはできない、という厳然たる事実である。
サーキット走行はもちろんだが、一般公道で車両挙動安定装置があるからと、たとえば設計速度100km/hのコーナーに150km/hで進入すれば、アクシデントに直結することは疑いようもない。いかに優秀な安全デバイスであっても、タイヤのグリップ限界を大きく超えたところでの機能は保証されないということだ。
むしろ、サーキットでこれらのシステムをオフにするのは、限界領域は自身の運転技量でコントロールするものとも解釈でき、テクニックの上達を心がけつつ走りの楽しさを堪能するとよいのだろう。

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