この記事をまとめると
■海外オークションでは1億円超で落札されるメルセデス・ベンツ300SL■日本では力道山・石原裕次郎・夏木陽介が乗っていた
■発売当時の価格は当時のドル円換算で245万円
昭和のスーパースターのガルウイングといえば300SL
ダイムラー・ベンツ(当時)のプロトタイプレーシングカーとして開発され、1954年2月のニューヨーク国際オートショーで市販バージョンが発表されたメルセデス・ベンツ300SL。言わずと知れた世界的な超絶名車であり、2020年10月に開催されたRMサザビーズのオークションでは、1955年式300SLが149万5500USドル、日本円にして約1億5800万円で落札されたというド級の存在である。
筆者などよりよっぽどクルマに詳しいWEB CARTOP読者各位に今さら説明する必要はないと思うが、いちおう言っておくと、W198型300SLのフロントミッドに搭載された3リッター直6SOHCエンジンは、市販車としては世界初のガソリン直噴方式。

有名なガルウイング式のドアは、全体の軽量化のために独特なスペースフレーム構造を採用し、なおかつ全高がきわめて低かったため、通常の左右開きドアを使用することができなかったがゆえに採用されたという経緯を持つ。

そんな、当時としては宇宙船レベルの存在であったメルセデス・ベンツ300SLを所有していた日本人として有名なのは、プロレスラーの力道山氏と俳優の石原裕次郎氏、そして同じく俳優にしてラリードライバーの夏木陽介氏。ちなみに力道山氏はガルウイングのクーペだけでなく、ロードスターにも乗っており、石原裕次郎氏の300SLはクーペだったがなぜかロードスターの縦長ヘッドライトがインストールされた個体だった。日本で初めて300SLガルウイングを所有したのは夏木陽介氏だったと言われている。

そして「300SLに乗っていた有名人を探せ」というミッションを与えられたのが筆者である。
そんなことを言われても、当時筆者は生まれてすらいなかったので知る由もないわけだが、今ササッと調べた限りでは、その3人以外にはいらっしゃらなかったようだ。
ちなみに力道山氏はアメリカ巡業のおみやげとして300SLを買って帰り、それを見た石原裕次郎氏が「僕もそれ欲しい! 譲ってください!」とリキさんに頼んだが断られ、代わりにリキさんは、日本に1台だけあったヤナセ物の300SLを裕ちゃんのために手配してあげた……ということらしい。
なお石原裕次郎さんが乗っていた300SLは北海道小樽市の「石原裕次郎記念館」に2017年まで保管され、夏木陽介さんが乗っていた個体も石川県の「日本自動車博物館」で保管されている。だが力道山氏の300SLは、話によれば10年に一度ぐらいのペースで「売り物」として市場に出てくるらしい。今この瞬間、リキさんのSLがどこにあるのかは不明だが……。

1ドル=360円で計算すると当時の価格は245万円の超破格!?
まぁそんなことよりも「当時の大スターというのはすげえな!」というのが、コタツの上で300SLについていろいろ調べてみた筆者の率直な感想である。

1954年における初代300SLの新車時価格は6820ドルだったとのこと。現在のドル円レートで計算すれば約75万円にすぎないわけだが、当然ながら当時のドル円は360円(それでも245万円)の固定相場で、なおかつ67年前と今では物価水準がまるで違う。
今コタツで調べたところによれば、1954年頃の物価はおおむね下記のとおりであった。
・大卒初任給|8700円(現在は22万6000円=25.8倍)
・銭湯の料金|40円(現在は480円=32倍)
・週刊誌|25円(現在は440円=17.6倍)
・映画館の一般料金|130円(現在は1900円=14.6倍)
こうして見てみると、2021年における日本の物価は1950年代の15倍から30倍ぐらいになっている。まぁ間を取って「20倍ぐらいである」とするならば、力道山や石原裕次郎が初代300SLを購入した際の"価格感"は、おおむね下記のとおりだったのだろう。
新車価格6820ドル×360円×20倍=約4900万円
4900万円かぁ。さすがは超大物プロレスラーであり、超大物俳優だよなぁ……と思ったわけだが、よくよく考えてみれば2021年の今、4900万円程度の車であれば、ビッグスターじゃない人でも普通に買っているのではないだろうか?

いやもちろん筆者はそんなモノは絶対に買えないが、港区あたりを半日もブラブラしていれば、オプション込みで4000万円ぐらいはするだろうフェラーリやランボルギーニを10台ぐらいは見かけることになる。
……ううむ。これは、「1950年代と比べて日本はずいぶん豊かになりましたね」ということか、もしくは「筆者が行った物価換算に何らかの重大なミスがある」ということなのだろう。
以上、きわめてとりとめのない話で大変申し訳ないのですが。