この記事をまとめると
■ブレーキローターに使われる鉄は錆びやすい性質を持つ■この鉄は世の中に存在する鉄製品のなかでもかなり錆びやすい部類。
■あまりにも長期間放置されていたりしなければ、そのまま走っても問題はない
ブレーキローターはなぜ速攻で錆びるのか?
秋は台風の季節でもあり、秋の長雨といわれ、この時期、雨の日も少なくない。そしてひと雨降ったあと、ふとブレーキローターを見てみると、たった一晩で表面が錆びていることが……。
どうしてブレーキローターはあれほど錆びやすいのか。同じ鉄でも、ブレーキローターほど錆びやすい鉄は他にはないような気がするが?
ブレーキローターが錆びやすいのは無塗装というのもあるが、そもそも成分が違うため。一般的な鉄製ローターは、砂型鋳造で作られるいわゆる「ねずみ鋳鉄」製。鉄にも製法によっていろいろな種類があるが、この鋳鉄ローターの主原料は、炭素の含有率が高く融点が比較的低い鋳物用の「銑鉄」。

この「銑鉄」は、ほとんどが中国製で、ブレーキローターに使う「銑鉄」は、スクラップ(屑鉄)を電気炉で溶かして製鋼したものも多い。
強度と靭性(粘り強さ)、加工性に優れた、“一流”の鉄=「鋼」は、炭素含有量2.0%(重量)以下となっているが、この「銑鉄」は通常炭素 3~4%の“粗製”の鉄だ(基本的に炭素量が多いと硬くなるが、その反面、粘り強さが弱くなる)。
コストを度外視すればカーボンという選択肢も
こうした「銑鉄」を使うのには理由があって、ブレーキパッドに挟まれて、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、放熱する役割があるブレーキローターの素材としては、「銑鉄」が一番適しているからだ。「銑鉄」の場合、組織の中に黒鉛が棒状に細かく分布していて、この黒鉛がパッドと接したときにある種の潤滑剤と働き、ローターの素材として具合がいいということで重宝されてきたというわけだ。
もちろんローターは消耗品でもあるので、価格の安さも長所だが、耐腐食性は鉄製品の中でもかなり低い……。

そのため、濡れるとすぐに錆びてしまうが、ローターの表面が錆びたとしても、近所をひと回りして、ブレーキを何回か踏めば、すぐに錆は消えてしまうので、よっぽど長期間放置しておかない限り、ブレーキローターの錆を気にする必要がない。
当然のことながら、錆を防止するために、ブレーキの表面に潤滑スプレーなどを噴霧するのは厳禁だ。
ポルシェなどが採用する、カーボンセラミックブレーキにすれば、ローターの錆ともおさらばできるが、カーボンセラミックブレーキは1台分で100万円コース!

鋳鉄ディスクより約50%も軽く、熱にも圧倒的に強いが、コストを考えると一般に普及するとは考えづらく、今後もブレーキローターの主役は鋳鉄ローターになるだろう。