この記事をまとめると
レクサスとタッグを組んで「エアレース世界選手権」に室屋義秀選手が参戦する



■レクサスは技術開発と実証を通じて室屋選手の勝利に向けたサポート



■初代ワールドチャンピオンを目指す室屋義秀選手にインタビューした



レクサスと室谷選手がタッグを組んでエアレース世界選手権に参戦

3年ぶりに復活が決まり、7月のグッドウッドでの開幕を控えている3次元モータースポーツ「エアレース世界選手権」。日本人として唯一参戦するエアレース・パイロットの室屋義秀選手は、自身が代表を務める「パスファインダー」と「レクサス」がタッグを結成したチーム「レクサス・パスファインダー・エア・レーシング」として、初代チャンピオンを目指す。



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チーム名が表しているように、レクサスは長年クルマ作りに携わってきたエンジニアたちを、テクニカルコーディネータとしてチームに派遣。

エアレースで必要とされる空力や冷却、人間工学分野といった技術開発と実証を通じて室屋選手の勝利に向けたサポートを行いつつ、航空技術で得た知見をクルマ作りに活かしていく狙いがある。



スゴ技披露中なのに「なんかまわってるなー」! レクサスが技術協力する日本人エアレースパイロット室屋選手を直撃した



だが、同じ乗り物とはいえ、航空機とクルマでは大きく技術が異なるのではないだろうか。これに対して室屋選手は、「安全基準などで違う部分はありますが、技術的には近しいものがあります。レクサスはクルマ作りで多くの技術を培っているので、航空機にフィードバックできることも多くあります」と語る。



クルマを知るレクサスのエンジニアが加入したことで、どのような変化が生まれたのだろうか?



「機密的なことが多いので、あまり多くは語れないんですけど……、なかでも大きかったのはエンジンカバーの改良です。レクサスのエンジニアたちが、空力の解析と製造を行ってくれたことで軽量化に成功しました。それだけではなく、Cd値も下げることができたんです。 Cd値が低いと速く飛ぶことができますからね。素材はカーボンファイバーを使っているのですが、レクサスには高性能な窯があります。そちらを使って焼いてもらったので、薄く軽量で素材自体も強いです。正直プライベーターチームでここまで手の込んだことはできないので、協力はありがたい限りです」



スゴ技披露中なのに「なんかまわってるなー」! レクサスが技術協力する日本人エアレースパイロット室屋選手を直撃した



一方レクサスでは室屋選手との技術交流を通して、航空機に用いられている空力技術をリヤウイングに応用した1台が2020年に登場した。それがLCの特別仕様車「AVIATION」である。



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一般的なリヤウイングは、ダウンフォースを生み出すことで優れた安定性を確保。これに対しAVIATIONに装着された専用リヤウイングは、車両側面の空気の流れを制御することで素早いヨーレスポンスとなめらかな車両姿勢に変化する味付けがなされている。



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「AVIATIONのリヤウイングは、ウイングレッドから着想を得ています。ウイングレッドは航空機では欠かせないパーツで、翼で発生する渦を制御する役割を担っています。そこでレクサス側のエンジニアが、ウイングレッドを使って渦をほんの少しだけ発生させたら、パラシュートのように安定するのではないかといった逆転の発想で誕生させたのが、AVIATIONです。航空機側の知見や発想が、より良いクルマ作りにも反映できると考えています」



SUPER GT第2戦富士スピードウェイでフライトパフォーマンス

レクサスとタッグを結成したことで、いろいろなタイプのクルマに試乗する機会が増えたという室屋選手。普段は空中を駆け抜ける室屋選手が求めるクルマとは、どのようなものなのだろうか。



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「レクサスのエンジニアからクルマに対する評価の仕方を教えてもらっているうちに、今まで何も知らないで運転していたことがわかりました。クルマってすごい! なんか新しい世界観を感じましたね。わたしはクルマに対しては素人なので、フィードバックはあるような、ないような……。でもエアレース・パイロットの発想として解答させてもらうなら、クルマも航空機のようにダウンフォースを出さないで飛ばしたらおもしろいんじゃないかな(笑)。それこそ高速道路では100km/h近いスピードが出ているわけだから、飛ぶ力は十分にあるし、燃費も良くならないのかなって!」



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5月3~4日に開催されたSUPER GT第2戦富士スピードウェイでは、フライトパフォーマンスを披露した室屋選手。

バーティカルターンをはじめとする凄ワザを披露し、多くのファンを魅了させた。一般人では想像もつかないが、パフォーマンス中にはどのようなことを考えているのだろうか? 単刀直入に聞いてみた。



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「なんかまわってるなーと思うくらいかな(笑)。でも、決して今日の夜ご飯は何だろうとか、関係ないことは考えていなくて結構集中はしています。空気が体に張り付く感じや3次元における自分の居場所の確認。集中しながらもリラックスをしている感じですかね。レーシングドライバーが、タイヤがすべり出す直前がわかるイメージと似ていると思います。高度や速度、エネルギー量を把握しながら、3秒先を想像して飛んでいます」



まもなく開幕するエアレース世界選手権。3年ぶりのレースに向けて、意気込みと抱負を語ってもらった。



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「準備は順調に進んでいます。他チームの状況はわからないですが、十分に勝てる体制だと踏んでいます。今年は2019年と同じ4戦と短期決戦なので、1戦も落とせません。

2019年は4戦中3勝しましたが、1戦をノーポイントで終えたことが響いて、チャンピオンを逃してしまいました。全勝する必要はないかもしれませんが、コンスタントにポイントを獲得することが大事だと思います。もちろん目指すはワールドチャンピオンです」



今年は日本ラウンドがカレンダーに組み込まれていないので、室屋選手の勇姿を生で見届けられないのが残念ではあるが、2017年のチャンピオンとして健闘を祈りたいところだ。また、室屋選手とレクサスエンジニアの化学反応によって、今後どのような商品が誕生するのだろうか? 期待が高まるばかりである。



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