生成AIはネット上の記事なども収集し、ユーザーのリクエストに対応したアウトプットを創出する。その際、許諾を得ていないばかりか、有料記事まで“学習”するケースもあるという。そうしたことから3社は著作権の中の複製権や公衆送信権などを侵害し、不法行為にあたると主張している。
社会に生成AIが浸透しつつある中で、整備が行き届いているとはいえない生成AI事業者による“情報のタダ乗り問題”。新聞社のビジネスモデルも左右しかねない法廷闘争の争点や展望について、AIに関する法律に詳しい河瀬季(かわせ・とき)弁護士に聞いた。
機械学習のための著作物の利用は原則「許諾なし」でも可能だが…
今回の訴訟における「著作権侵害」の主張は、具体的にどのような権利の侵害を指していると考えられますか?Perplexityのサービス形態(記事の要約・提供)が、これらの権利侵害にどのように該当すると指摘されているのでしょうか。
河瀬弁護士:報道によれば、訴状で主張されているのは、「複製権」と「公衆送信権」の侵害です。Perplexityは、従来の検索エンジンと生成AIを組み合わせたサービスで、利用者が入力した質問に応じて関連情報をインターネット上から収集し、それを要約した回答を提供するというものです。
新聞社側は、Perplexityが回答を生成する過程で各社のサーバーから記事を無断で複製し、自社サーバーに保存した行為が複製権侵害、また、その複製記事を基に、実質的に同一または類似する内容を利用者に送信したことが、公衆送信権侵害に該当すると主張しているものと考えられます。
インターネット上の記事を生成AIの学習データとして利用することは、法的にどのような位置づけになるのでしょうか?
河瀬弁護士:日本の著作権法30条の4および47条の5では、「情報解析」、すなわちAIの機械学習のために著作物を学習データとして利用する場合には、原則として著作権者の許諾なく利用できると定められています。これはAIの利活用を促進する趣旨から設けられた規定ですが、この場合でも「著作権者の利益を不当に害する場合」には例外として許諾が必要とされています。今回の訴訟で特に重要と考えられるのが、この「著作権者の利益を不当に害する場合」に該当するかどうかという点です。
新聞社側の「利用停止」の主張はどの程度認められるのか
新聞社側が生成AIによるコンテンツ利用を停止するよう主張することは、現在の法制度や著作権の観点から、どの程度認められる可能性があるでしょう。
河瀬弁護士:「著作権者の利益を不当に害する場合」に該当するかどうかという点に関して、本件では、各社が記事の無断利用を防ぐため、自社サイトに「robots.txt」という技術的措置を施し、クローラーに対してコンテンツの利用拒否の意思を明示していたという事情が重要になってくるものと思われます。文化庁が2024年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方」によれば、ウェブ上のデータベースを含む著作物について、販売またはその予定が推認される場合に、AI学習のために技術的措置を回避して著作物を収集・複製する行為は、「著作権者の利益を不当に害する場合」に該当しうる旨が示されています。
裁判所が必ずしも文化庁と同じ考え方を採用するとは限りませんが、この考え方を踏まえれば、新聞社側の請求が認められる可能性は十分あるといえるでしょう。
海外のケースではどうなのでしょうか。
河瀬弁護士:国際的な動向と比較すると、現在、米国を中心に「各種メディアvs.生成AI企業」の訴訟が多数係属している段階ですが、たとえば、米国の著作権法には著作物の公正な利用は著作権を侵害しないという一般条項(フェアユース)が存在するため、生成AI企業はこのフェアユースを根拠にさまざまな事情を挙げて反論できます。他方で、日本の著作権法では、著作権者の許諾なく著作物を利用できる場合条文上に限定列挙されているものに限られるため、生成AI企業が反論に用いることができるのは、主に先述した著作権法30条の4と47条の5に限られます。
この意味では、日本では生成AI企業が抗弁として主張できる事由が限られるため一見不利なようにも思われます。
しかし、その適用範囲が不明確である現状においては、このような法制度・法体系の違いが必ずしも本件の結論を左右するものとは言えないでしょう。
いずれにしても、生成AIに関する裁判例の蓄積が待たれるなか、本件訴訟は今後の判断基準を形成するうえで、分水領となる重要な裁判であると考えています。
今回の訴訟は、現実的にどのような形で決着する可能性が高いでしょうか?裁判所の判断、和解の可能性、あるいは海外の類似判例などを踏まえた予測をお願いします。
河瀬弁護士:本件訴訟が提起された経緯等を踏まえると、新聞社側が和解に応じる可能性は低いのではないかと考えています。他方、海外では、記事利用の対価を支払うことを条件に和解を提案したり、新たにライセンス契約を締結したりして提携するといった形で決着するケースも見られます。
本件でもこうした解決は現実的にありうるところですが、今後のことも鑑みると、やはり裁判所の判断が示されることを期待しています。
望ましい法的・技術的・ビジネス的な仕組みとは
データ発信元(メディア)と生成AIサービス提供者の間で、報道コンテンツの適切な利用を巡る問題を解決するために、どのような法的・技術的・ビジネス的な仕組みが望ましいと考えられますか?
河瀬弁護士:法的または技術的な観点では、robots.txtなどの技術的措置に法的効力を持たせられるような制度・仕組みが整備されることが望ましいです。そのためには、ステークホルダー間で適切かつ十分な情報が提供されることが必要不可欠であり(たとえば、robots.txt でのアクセス制限において必要となるクローラーの名称等の情報が事業者から権利者に対して適切に提供されないと、robots.txtを設定しても回避されるおそれがある)、企業の自主的な努力に委ねるのではなく、国主導の制度設計が必要だと考えています。
また、ビジネス面では、米国で進むように、AI企業とライセンス契約を締結することで、学習データ提供者に対価を還元できるような仕組みが構築されることが望ましいでしょう。
業界によっては日本音楽著作権協会(JASRAC)のような著作権管理団体を新たに設立し、ライセンス交渉や利用料の分配を一元的に行う仕組みも選択肢としてはありえるかもしれません。
いずれにしても、本件訴訟の帰結次第では、今後の法制度の在り方や技術的仕組み、ビジネスモデル等に少なからぬ影響が及ぶだろうと考えています。
生成AIの一般ユーザーへの浸透が進む中で、今回の訴訟は今後の生成AIサービスの利用料や提供形態にどのような影響を与える可能性がありますか?
河瀬弁護士:今回の訴訟は、一般ユーザーに直接的な法的責任を及ぼすものではありませんが、AIサービスの利用料や提供形態には少なからず影響を与えると考えられます。もしAI企業がメディアなど権利者に対してライセンス料を支払う枠組みが広がれば、一般ユーザーの利用料が値上げされたり、一部サービスが有料化されたりする可能性はあります。
ただし、それにより信頼性の高い記事データを正式に利用できるようになれば、AIの回答精度や透明性が向上したり、メディアとAI企業が提携したりすることなどで新たなサービスが生まれる可能性があるなど、ユーザーにとっても悪いことばかりではないでしょう。
■河瀬季(かわせ・とき)
モノリス法律事務所 代表弁護士。ITエンジニア、IT企業経営を経て、東京大学大学院法学政治学研究科を修了、弁護士資格を取得。東証プライム上場企業からベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士を務める他、YouTuber、VTuberなど多くの動画クリエイターらをクライアントに持つ。著書にNHK土曜ドラマ「デジタル・タトゥー」の原案となった『デジタル・タトゥー』(自由国民社)、『ITエンジニアのやさしい法律Q&A』(技術評論社)など。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)
![[コロンブス] キレイな状態をキープ 長時間撥水 アメダス 防水・防汚スプレー420mL](https://m.media-amazon.com/images/I/31RInZEF7ZL._SL500_.jpg)







![名探偵コナン 106 絵コンテカードセット付き特装版 ([特装版コミック])](https://m.media-amazon.com/images/I/01MKUOLsA5L._SL500_.gif)