
雇い止めや雇用不安を引き起こす「会計年度任用職員」制度
2020年に地方公務員法が改正され、臨時職員や嘱託職員と呼ばれる非正規職員に代わる「会計年度任用職員」の運用が始まった。従来、非正規職員の採用や待遇は地方自治体ごとに独自に定められており、条例で定められていない運用も多々あった。
会計年度任用職員は、通常、会計年度(4月1日から翌年3月31日)に合わせて1年間の任期で雇用される(職種によっては1年より短い任期の場合もある)。また、初回の雇用は公募採用となるが、勤務実績などが認められた場合には、公募なしに再採用されて、次の1年間も勤務することができる。
しかし、この制度は「会計年度ごとに契約を更新する」という仕組みを基本とするため、毎年度末に大量離職を生じさせている他、現職の職員にとっても「次回の更新では雇い止めされるのではないか」との雇用不安を生じさせる要因となっている。
再就職支援がほぼ実施されていない現状
労働施策総合推進法27条と関連省令により、地方自治体で30人以上の離職者が発生する場合、その1か月以上前に、自治体の首長は職業安定に関する機関に通知する義務を負っている(知事は都道府県労働局、市町村長はハローワークに通知)。総務省は「結果として複数回の任用が繰り返された後に、再度の任用を行わないこととする場合には、事前に十分な説明を行う、他に応募可能な求人を紹介する等配慮をすることが望ましいこと」との通知を出している(「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」)。
会見では、「なくそう!官製ワーキングプア」集会実行委員会が首都圏106自治体に行った、2024年度末の「大量離職通知書提出」などに関する情報公開請求の結果を、「はむねっと」共同代表の渡辺百合子氏が代表して報告。
情報公開請求の結果、首都圏で2024年度末に大量離職通知書を提出していた自治体の総数は76。前年が50であったため、1.5倍の増加となる。しかし、うち35の自治体では、「1か月以上前」の期限が守られていなかった。
また、通知が3月に入ってからでは再就職を支援するための措置は難しく、現に実施されていないことが明らかになった。さらに、そもそも再就職支援が不要であると誤認している自治体もあるという。
しかも、4自治体は、離職者数が30人以上であるにもかかわらず通知書を提出していなかった。
加えて、多くの自治体では、会計年度任用職員制度の公募や選考・採用について、各課ごとに対応を任せており、性別・職種別の把握もないなど杜撰(ずさん)な取り扱いが続いている。離職者数についても、約4割にあたる38%の自治体では人事担当部署による集約が行われていなかった。
非正規が正規に仕事を教えて現場を支える「矛盾」
9月23日(祝・火)に「なくそう!官製ワーキングプア集会」が開催される(「はむねっと」ホームページから転載)
「はむねっと」の共同代表である瀬山紀子氏は、今年5月から6月にかけて実施したアンケートの結果について報告した。
アンケートの対象者は、国の機関や自治体で現職で働いている非正規職員、および2023年4月から今年3月の間に在職していた元・非正規職員。有効回答は480件で、回答者の94%が女性であった。
アンケートの結果、退職者のうち47%が仕事を継続する意思があったにもかかわらず不本意な雇い止めにあったことの他、23%の回答者はパワハラやセクハラが原因で自ら辞めていたことが明らかになった。なお、前述の情報公開請求の結果によると、13の自治体はハラスメント相談窓口の周知を行っていない問題がある。
また、現在の職場に6年以上勤続している回答者は42%であり、さらにその半分は11年以上勤続している。そして、会計年度任用職員には学校司書・図書館職員に保育士など、経験が不可欠な専門職も多く含まれている。このため、異動してくる正規職員に非正規職員が業務を教えることが常態化しているという。
自身も非正規職員として長年勤務してきた経験を持つ瀬山氏は、非正規職員は雇い止めに伴う大きな雇用不安を抱えていることを指摘したうえで、「こういった非正規職員が公務の現場を支えているというのは、本当に矛盾した状態だと思う」と語る。
アンケートの自由記述で、40代の一般事務職員は「毎年、毎年、継続して雇用されるのかが不安。民間ではある無期転換が可能となれば、安心して働けるのに、なぜ民間はできて公務では無期転換ができないのか理解できない」と回答していた。
また、30代の図書館職員は「慢性的に人手が足りず、主婦パート層に頼っているため、専門の司書が育たない。つねに指導者層が不足しているため、サービスの質が落ち続けている。意欲があっても待遇が悪く、続けられない人がほとんど。人材が固定化するためハラスメントも起きやすくなる」と回答。
瀬山氏は「非正規公務員は民間に比べても不安定であり、かつ、正規職員に比べて不合理ともいえる格差を経験する。現在でも、とても大きな問題として存在している。(民間と異なり)一企業ではなく、この国の、人を雇う姿勢に関わる問題だ」と語る。
9月23日(祝・火)には日本図書館協会研修室(東京都中央区)にて、実行委員会主催の「第17回 なくそう! 官製ワーキングプア集会 反貧困集会2025」が開催される予定だ。