回転寿司チェーン大手「はま寿司」で働くクルー(パート・アルバイト従業員)らで組織する「回転寿司ユニオンはま寿司本部」の結成が19日、記者会見で発表された。
同ユニオン(合同労働組合)は結成直後の団体交渉において早くも成果を上げ、はま寿司側は組合の要求に基づき、始業時の15分単位賃金計算を、早ければ年度内にも「1分単位に改正する」と回答したという。

4都道県の学生アルバイトらが相次ぎ加入

回転寿司ユニオンは2022年にスシローで働く大学生アルバイトらが中心となって結成され、これまでスシロー中心の組織運営を続けてきた。
しかし、2025年6月以降、全国4都市(東京、埼玉、北海道、長野)のはま寿司で働く学生アルバイトやフリーターが相次いで加入。今年6月、回転寿司ユニオン内部に「回転寿司ユニオンはま寿司本部」が結成された。

15分単位の時給計算「原則として労働基準法に違反」

先述したように、はま寿司本部が最初に取り組んだのは、出勤時の15分単位賃金計算問題だった。
この制度では、たとえば17時出勤予定で16時50分に早出しても、給料が発生するのは17時からの計算となり、10分間の賃金が切り捨てられる。
さらに深刻なのは、17時1分に出勤し、1分遅刻しただけでも勤務時間が17時15分からの扱いとなり、14分間の賃金がカットされる仕組みになっている点だ。
回転寿司ユニオンの吉田帆駆斗(ほくと)書記長(あきんどスシロー出身、現在は専従)は「5分単位などでの時給計算は、回転寿司チェーン以外でも、多くの飲食店などで採用されています。ですが、昭和63年(1988年)3月14日基発第150号通達にもあるとおり、原則として労働時間は1分単位で算定することが求められているため、労働基準法24条(賃金全額払いの原則)に違反しています」と主張。
6月30日に組合が「要求書及び団体交渉申入書」を送付し、15分単位計算を1分単位に改めるとともに過去分の遡及(そきゅう)支払いを要求したところ、8月7日付で会社から受領した「回答書」には、組合の要求通り1分単位化の検討を示唆する内容が示されたという。
さらに、8月27日の第1回団体交渉では、会社側が今期中(本年度内)をめどに完全1分単位化すると明言。具体的な時期と過去分の精算については継続協議となっている。
「スシローとの交渉でも、同様の事例があり、過去の未払い賃金について、各労働基準監督署に申告を行ったところ、是正勧告が発せられました。
ですので、はま寿司との交渉でも、引き続き、過去分の賃金支払いを引き続き求めていきたいです。
ただ、こうして労働組合を結成し、労使が交渉できる状況をつくれましたので、極力外部の力を使わずに、労使間の話し合いによって問題が解決できればとも思っています」(吉田書記長)

「組合加入後、楽しくアルバイトができるようになった」

この日の会見には、埼玉県内のはま寿司でアルバイトをする大学1年生の組合員Mさん(19歳・匿名)も参加。現場の実情について次のように話した。

「趣味の音楽活動や配信活動のためにお金を必要としていて、シンプルに寿司が好きなのもあり、従業員であれば安い値段で寿司を食べられる制度があることから、はま寿司で働き始めました。
ただ、実際に働いてみると、未払い賃金の問題や、忙しい時間帯に人が居ないという問題を感じました。
自分は店内で一番忙しい天ぷらや揚げ物、シャリなどを担当するポジションを任されているのですが、本来は2~3人必要な業務を1人で担当しなければならないケースが多々あり、2人担当者がいればまだ何とかなるのですが、1人では本当に大変です」(Mさん)
こうした経緯からMさんは組合に加入。初の団体交渉では手ごたえも感じたとコメント。
「交渉をやってみて、自分の意思がしっかりと通り、会社側も快く悩みを聞いてくれたのですごくやりやすかったと感じます。
また、店長らにも、悩みが相談しやすくなり、以前よりも働く環境が良くなり、かつ、楽しくアルバイトができるようになりました。
ですが、まだまだ働く上での問題は残っています。私以外にも多くの人がはま寿司で働いていますので、その人たちの声を聞き、今後も会社や職場環境を良くするための活動を続けていきたいと思います」

「業界全体の労働条件向上に取り組んでいきたい」

回転寿司ユニオンでは現在、ホームページ等から、回転寿司店で働く労働者からの労働相談を受け付けている。
吉田書記長は、シフトが安定しないという相談や、忙しすぎるといった声のほかに、低価格で競争している業界であるが故に、人件費が軽視され、昇給が全くないといった相談が多く見受けられるとし、以下のように述べた。
「スシローやはま寿司だけでなく、各社の従業員を組織し、回転寿司業界全体の労働条件向上に取り組んでいきたい」(吉田書記長)
また、9月21日には回転寿司ユニオンはま寿司本部とはま寿司側による、第2回団体交渉が開催予定で、継続協議が行われる。
労働組合の立ち上げや団体交渉について、弁護士JPニュース編集部でははま寿司側にもコメントを求めたが、回答は得られていない(9月19日17時現在)


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