今回の改正は「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」などが目的とされ、4月からの施行で、休暇取得の対象となる事由の追加や、残業免除等の対象となる子どもの年齢引き上げなどが行われてきた。
10月からの施行では何が変わるのか。
会社に求められる2つのポイント
焦点となる改正点は2つだ。ひとつは、子育て中でも柔軟に働ける「制度」を会社が用意すること。
たとえば始業時刻をずらしたり、月10日以上のテレワークを認めたり、ベビーシッターの費用を負担したりといった制度のうち、少なくとも2つ以上を整備することが義務付けられる。
対象となるのは、3歳から小学校就学前までの子どもを育てる労働者。会社が整備した制度のうち、ひとつを選んで利用できる。
もうひとつは、会社が育児中の労働者一人ひとりの意向を“個別に”確かめ、働き方に反映させる仕組みだ。
会社には、労働者本人または配偶者の妊娠・出産の申し出があった時と、子どもが3歳になるまでの適切な時期に、勤務時間帯や業務量、労働条件について希望を聞き取り、配慮することが求められる。
仕事と子育てを両立しやすい環境づくりを、「制度の整備」と「個々の状況に応じた配慮」の両面から会社に求める改正となっている。
働く親が頼る“保育現場”の実態
しかし、施行により「働く親」たちへの負担軽減が期待される一方で、慢性的な人手不足が叫ばれる保育現場からは別の課題も指摘されている。保育研究プロジェクト「子ねくとラボ」(運営:株式会社明日香)が保育士・幼稚園教諭・保育教諭146名を対象に実施した意識調査の結果、保育士の約3割が現在の職場での育児休業取得について不安を抱えていることが分かった。
「あなたは、現在の職場で育児休業を取得したいと思いますか」という問いに対し、回答は以下の通り。
- 積極的に取得したい:41.2%
- できれば取得したい:28.7%
- 取得したいが、現実的に取得が困難である:9.1%
- あまり取得したいと思わない:5.6%
- 全く取得したいと思わない:4.9%
- すでに取得したことがある:3.5%
- わからない/答えられない:7.0%
- 取得可能:69.2%
- 取得できるが困難:23.8%
- 取得不可能:3.5%
- わからない/答えられない:3.5%
調査を実施した「子ねくとラボ」は、「法改正により制度の改善が期待されていますが、保育現場では慢性的な人手不足が影響し、制度を活用することが実際には難しいという構造的な問題が浮き彫りになっています」と指摘する。
一般企業に限らず、保育施設で働く保育士にとっても、法改正の恩恵が十分に届くことが望まれる。制度が形だけで終わらないために、実際に活用できる環境づくりが今後の課題と言えそうだ。