“家を借りられない”高齢者ら救済へ 10月1日施行「改正住宅セーフティネット法」孤独死・残置物処理の不安解消で“入居の壁”打開
単身世帯の増加や持ち家率の低下が進むに伴い、高齢者・障害者や低額所得者などが賃貸住宅への入居を断られる問題も深刻化している。
10月1日から施行される「改正住宅セーフティネット法」は、住宅の確保が困難な人々が安心して生活を送るための基盤となる住まいを確保できるよう、賃貸住宅に円滑に入居できるための環境の整備を推進することを目的としている。
以下では、新制度の概要を紹介しよう。

入居後も支援が続く「居住サポート住宅」が創設

「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」は昨年5月末に改正され、国は高齢者・障害者や低額所得者などの「住宅確保要配慮者」(以下「要配慮者」)を支援するため、「居住サポート住宅」や家賃保証に関する新制度を創設した。
居住サポート住宅(法律上の正式名称は「居住安定援助賃貸住宅」)は、都道府県に指定された「居住支援法人」と大家が連携し、入居者をサポートするもの。
具体的にはICT(情報通信技術)を活用した安否確認や訪問等による見守りが行われ、要配慮者の生活や心身の状況が不安定になったときには、個別の必要・状況に応じた福祉サービスにつなぐなどの対応がなされる。
たとえば低額所得者のケースでは家計把握や就労支援の他、生活保護の利用をサポートされる場合もある。高齢者や障害者の場合にはホームヘルプやデイサービスなどの介護サポート、ひとり親のケースでは子どもの学習支援・生活指導の他、母子・父子自立支援員による相談や助言も受けられる。
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居住サポート住宅制度の仕組み(国土交通省「住まいや住まい方にお困りの方へ」)

また、一人暮らしの高齢者には「もし自分が亡くなったら荷物はどうなるのか」との不安を抱いている人も多い。
改正法では、残置物の処理等を居住支援法人等に委任する仕組みも創設される。指定した家財等を事前に決めた送付先(家族等)に送り、それ以外の残置物の廃棄や換価などを法人に委任できる。家族や大家に過度な負担がかからなくなるため、自分が亡くなった後の不安も軽減できるだろう。

「家賃」に関する新制度で大家も安心して貸せるように

改正住宅セーフティネット法では、要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者(認定保証業者)を国土交通大臣が認定する制度も創設される。
認定保証業者は、原則として、居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を断らない。また、要配慮者の家賃債務保証の契約条件として、緊急連絡先も親族に限らず法人などを指定できるようになった。

さらに、入居者が生活保護を受給している場合は、住宅扶助費(家賃)を自治体が大家に直接支払うこと(代理納付)が原則化されるように。
これにより、大家の側は安心して住宅を貸せるようになり、要配慮者が家賃滞納を理由に入居を断られるリスクが減る。
加えて、借主が亡くなるまで契約が続き、死亡と同時に終了する「終身建物賃貸借」契約の認可手続きも簡素化される。借主は解約手続きに関して家族の負担を軽減しやすくなるだけでなく、簡素化により貸主(大家)も手続きをしやすくなるため、 制度の利用が広がることが期待される。
今回の改正は、要配慮者が賃貸住宅への入居を断られるケースを減らすだけでなく、安心して暮らし続けられる環境を整えることを目的とするものだ。
自分自身や家族が要配慮者やそれに近い状況である人は、住まい探しの選択肢のひとつとして、地域の居住支援協議会や居住支援法人に相談しながら、住宅セーフティネット法の活用を検討してみよう。


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