万博“駆け込み需要”爆増で「延長して」の声も…予定通り「閉幕」せざるを得ない“法的障壁”
13日、大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会=大阪市此花区夢洲)が半年間の開催期間を終え、閉幕する。
開幕前はネガティブ報道が吹き荒れたが、開幕すると大きなトラブルもなく入場者数も順調に推移。
会期後半、とくに8月以降は駆け込みもあり、記録的な盛況ぶりを見せ、想定の2820万人を突破。黒字着地も確実なフィナーレとなった。

盛況の裏で多数発生した‟死に券”

大成功の裏で、思わぬ余波を受けた人も発生した。チケットがありながらも来場がかなわなかった人たちだ。人気が想定以上だったのか、少々複雑な予約制の弊害もあったのか…。購入したのに使われていないチケットは、報道によれば100万枚前後あったともいわれる。
万博会場近郊の大阪在住の50代会社員のAさんは「前回(大阪万博=1970年)も行った両親を連れていく予定で4枚購入していたが、夏の暑さを回避して、日程調整しようとしたら空きがなく諦めました。会場が近いのでいつでも行けると考えていたのが甘かった…」とぼやいた。
Aさんのような「諦め組」は数十万人単位でいたとみられ、ネット上では「未使用なのだから払い戻ししてほしい」という声や会期延長を望む声が相次いだ。
大阪府の吉村洋文知事はこうした声に呼応し、X(旧ツイッター)に、「(延長を求める声は)うれしいが、国際条約で決まっており難しい。申し訳ない」と投稿(9月24日)している。
払い戻しについて、万博協会は「協会の責めに帰すべき事由による中止やその他協会が認める場合」をその条件としており、今回のようなケースは難しい状況だった。

万博の会期延長が難しい理由

民間のイベントなら、人気を受け、融通を利かせて延長とすることもあり得たかもしれない。だが、国際博覧会の万博には簡単には会期を延長できない、国際的な法的制約が立ちはだかっている。

まずは吉村知事が理由に挙げた国際条約による期間制限だ。 大阪・関西万博が該当する「登録博」の会期は、「国際博覧会条約」によって「6週間以上6か月以内」と厳格に定められている。
日本政府はこの条約に則り、今回の大阪・関西万博の会期を「4月13日~10月13日」として登録申請書を博覧会国際事務局(BIE)に提出。承認を受けている。
もし会期を変更する場合、BIEへの申請が必須となり、条約に反する会期変更を行った場合には登録を解除されるリスクもある。
登録取り消しとなれば、日本政府が法令で設けている優遇措置(例えば、参加国が展示品を持ち込む際の関税の免除や、スタッフのビザ(査証)発給手数料の免除など)が法的根拠を失うことになる。
これらの国際条約に基づく制約と、それに伴う法的ペナルティのリスク等があるため、吉村知事がコメントしたように、会期延長は極めて困難なのが実情だ。

万博跡地はどうなる?

チケットを購入し、行きたいのに行けなかった人は気の毒だが、実は今回の大阪・関西万博は、閉幕後のパビリオン再利用を設計段階から見据えた「サーキュラデザイン」の取り組みが導入されている。跡地でほんのりと開催時の余韻や雰囲気を楽しむことは可能だ。

一部が残される予定の大屋根リング(弁護士JPニュース編集部)

再利用されるのは、今回の万博の象徴といえる大屋根リングの一部(北東約200m)、オランダ館、大阪ヘルスケアパビリオンなどだ。
また、「7時間待ち」もあるほど人気を博した万博イタリア館の主要作品の一部は、10月25日から大阪市立美術館で開催される特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」展(~2026年1月12日)で公開される。万博会場30分圏内の立地で、万博本番は諦めた人も行く価値は十分あるだろう。
なお、閉幕後の夢洲(ゆめしま)の開発についてはすでに計画案が発表されており、4つの区画に分けて利用される予定。

跡地のメインとなるエリアは南側に位置し、エンターテインメント施設が導入される方針となっている。具体的には、サーキットや世界クラスのウォーターパークなどが検討されている。

会場横では跡地開発も進められていた(弁護士JPニュース編集部)

その他の区画では、大阪ヘルスケアパビリオンの一部を活用するエリアや、IR(カジノを含む統合型リゾート)と連携するためのホテルを導入するエリアが設けられる。
大阪府と市は、万博跡地が「新しいものが生まれるビジネスの拠点となるようなエリアになってほしい」というビジョンを掲げており、成り行きが注目される。

過去の万博跡地の活用事例

ちなみに、過去の万博跡地は、その多くが大規模な公園や複合施設として再整備され、観光拠点として活用されている。
たとえば、50年前の1970年の大阪万博会場跡地は万博記念公園として整備され、一部に「EXPOCITY」が建設。日本最大級の大型複合施設として有効活用されている。
1975年の沖縄国際海洋博覧会の跡地は海洋博公園として整備され、「美ら海水族館(2002年開館)」を核に、ビーチ、植物園、郷土村などを備えた大規模観光拠点として、人気を博している。
2005年の日本国際博覧会(愛知万博、愛・地球博)の跡地は、愛・地球博記念公園(モリコロパーク)として整備。迎賓館は「愛・地球博記念館」に、一部エリアは「ジブリパーク」として再利用されている。

「気持ち悪い」が「かわいい」に激変したミャクミャク(弁護士JPニュース編集部)

「いまさら万博なんて」といった声も含め、開催前はネガティブな意見が目立った大阪・関西万博。そんななか、最も下馬評を覆したといえば、やはり、「ミャクミャク」になるのだろうか…。

誕生当初の「気持ち悪い」オンパレードの評価が、気が付けば、推計で1日5億円を超える(アジア太平洋研究所および関西観光本部の共同調査より)などすさまじい人気でグッズ売り上げをけん引した。
外野のネガティブな声の多くはなんの根拠もなく、気にする必要はない。そんな真理を逆説的に証明した万博でもあった。


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